おすすめ本




































































青い自転車
La Bicyclette Bleue

レジーヌ・デフォルジュ
Regine Deforges

集英社


時は第2次世界大戦前夜。フランスはボルドー近郊のモンチヤックの広大な葡萄園の3人姉妹の次女レアは情熱的で美しい娘です。幼なじみのロランに恋していますが、ロランはレアから見れば全く冴えないカミーユとの結婚を発表。我慢できないレアはロランに愛を告白しますが受け入れられず、あろうことかそれを野性的でレアから見れば非紳士的なフランソワに聞かれて怒り心頭。成り行きでカミーユの兄と婚約しますが、第2次大戦が勃発。婚約した彼は戦死。ロランも戦場に。レアはカミーユと共にパリの大伯母の元に身を寄せますが、ナチスのパリ侵攻で命からがらの脱出口。何度もめぐり逢うフランソワとは意地を張り合い、いがみ合いながらも惹かれていき・・・。

さてここまででもう充分。どこかで聞いた話ですよね。そう、ヒロインのレアはベッドで「風と共に去りぬ」を読んでいるというおまけまでついています。でもパロディではありません。命からがら故郷に帰ったあたりから、趣が違ってきます。姉フランソワーズはドイツ軍将校と恋に落ち、レアはレジスタンス運動に身を投じる。運命の人フランソワも命を賭けた活動に従事していて、頼りなさそうなロランとカミーユさえも活動の差こそあれレジスタンスの闘士なのです。いかにフランスがナチの侵略に対して抵抗したか、の歴史でもあるのですが、国内でも親ナチ派との対立がすさまじくて、身の毛がよだつ光景が繰り広げられます。虐殺や拷問の場面はあまりに生々しくこれが映画だったら直視に耐えません。でも綿密な取材をした結果らしく、これが現実。言葉もありません。悲しいのはフランソワーズのように敵味方に関係なく、相手の人間性に惹かれてしまった人の行く末で、これも戦争の悲劇的局面です。平和な時代なら文句なしに幸せになれたものを。

レアは愛すべきヒロインとはほど遠い女性です。恵まれた美貌を手にした女ならではの女の武器は最大限に活用しましょう、精神にあふれた人です。熱烈な愛国者というわけでもなかったのに、何故かレジスタンスに巻き込まれてしまう。もう嫌!と思いながら、それでも頑張り通し、でも活動と共に身を滅ぼしたりは絶対しない、したたかで良い意味では強い女性です。

フランソワはバトラー船長そのままに、困ったときは必ず助けてくれる抱擁力あふれた男性で、おまけにハンサムとあれば女性の理想です。まあ出来すぎだけれど、こんな人もいてもいいか。ロランはアシュレイよりはずっと素敵(笑)。でも、ちょっと困った人。

 ストーリーはテンポも早く、ぐいぐい惹き付けるし、登場人物も魅力に満ちていて世界的ベストセラーになったというのもうなづけます。

話は激動の第2次大戦から、戦後へ、ナチの残党狩りをも繰り広げ、ついにはインドシナまで至る壮大なスケールで展開されます。現在第5巻まで出版されているのですが、その後続刊を聞きません。どうなったのでしょう。まあ、でも5巻までで一応の区切りにはなっていますが。

第2巻 アンリ・マルタン通り101番地 青い自転車(2) (青い自転車 2)
第3巻 悪魔は二度笑う 青い自転車(3) (青い自転車 3)
第4巻 闇のタンゴ 青い自転車(4) (青い自転車 4)
第5巻 絹の街 青い自転車(5) (青い自転車) (青い自転車 5)


☆舞台はフランスですからね。戦時中でも秘密のレストランがあったりして、食べ物の話題にも事欠きません。おいしそう。





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