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ポビーとディンガン
Pobby and Dingan

ベン・ライス
Ben Rice

アーティストハウス


オーストラリアのオパール鉱山のある町ライトニング・リッジに住む少年アシュモルは、一攫千金を狙ってオパールを掘り続ける父親と、優しい母親、そして妹のケリーアンと暮らしています。妹のケリーアンには目には見えない友だちポビーとディンガンがいて、いつも行動を共にしています。母親はもちろん、最近は父親さえもポビーとディンガンが実在するように振る舞うので、アシュモルは不満でたまりません。彼だけは、ポビーとディンガンは実在しない、とケリーアンに言い続けていました。そんなある日、ポビーとディンガンが行方不明になり、ケリーアンは心配のあまり病気になって寝込んでしまいます。日増しに悪くなっていく妹を見て、アシュモルはポビーとディンガンを見つける決意をし、町中の人に二人を見つけてくれるように頼むのでした。

開拓時代のアメリカで人々が金鉱探しに群がったように、現代のライトニング・リッジはオパールを探す人々が集う町です。見つかれば昨日までの暮らしにはさようなら。まさしく一攫千金の人生の勝負を賭けて人々が躍起になる町がこの話の舞台です。現実にポビーとディンガンを探していたアシュモルの父親は、人の採掘場を荒らしたと勘違いされて逮捕され、裁判にまでかけられるという、疑心暗鬼に満ちた生活です。よくあるアメリカの田舎町の、子供の頃からずっと住んでいて、町中の人の顔を知っているという世界とは根本的に異なります。そんな町に住む人々が、少年の求めに応じてポビーとディンガンを総出で探してくれるようになります。屈強な男達も、ちょっとエキセントリックな人々も、探すものは一時的とはいえオパールではなくポビーとディンガンになるのです。このファンタジックな展開が、快い感動を運んでくれます。

ポビーとディンガンはケリーアンにだけ見える友だちでしたが、やがて本当にそうなんだろうか、といつも否定的であった兄さえが思うようになる。町中の人々も多分そう思うようになる。悲しいお話でもあるのですが、すごく救いを感じる小品です。

☆町の人たち総出演のこういうお話って好きです。チェリーライプとヴァイオレット・クランブルってどういうお菓子?





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