おすすめ本































































花ざかりのローズ
Rose in Bloom

ルイザ・メイ・オルコット
Louisa May Alcott

角川文庫


前回ご紹介した「八人のいとこ」の続編です。
二年間のヨーロッパ留学を終えて、フェーブとアレック叔父と帰国したローズは、輝くばかりの美しい女性に成長していた。そして出迎えた従兄弟たちもまた、ある者たちは20代に入りそれぞれの道を歩み始めていた。別れていた二年の月日を埋めるべく、ローズと従兄弟たちとの親しい交流がまた始まる。しかし青年期に入った彼らは、前のような無邪気な日々を送っているわけにもいかなかった。一族のただ一人の娘ローズを巡って、従兄弟たち、そして叔父叔母の様々な思惑が乱れ飛ぶ。


今回は、すっかり大人になったローズと従兄弟たちのロマンスに重点を置いたお話です。年頃と言ってもローズは、他の娘たちとは違ってアレック叔父様の監視が行き届いていることもあって(行き届きすぎ?)、恋やロマンスにうつつを抜かす娘ではありません。恵まれた自分の環境を活かして、慈善事業のことを考えるような多分当時の感覚から言うと、ちょっと変わった娘であったでしょう。しかし、美しく優しいローズを青年たちが放っておくはずはありません。

プリンス・チャーリーはすっかりローズを自分の物にしようと心に決めます。一族きってのハンサムと一族のプリンセス、これはまさしく理想のカップルとばかりに。

一方、一族の一部では、総領であるアーチーとローズを結婚させるのが一番という意見がかなり強力です。実業界に進出してほぼ確実に成功した人生を収めるであろうアーチーとローズの結婚によってキャンベル一族の繁栄は今後も約束されたも同然ということでしょう。アーチーの母、ジェシー叔母様もまたそれを望みます。彼女の場合はローズを娘にしたいあまりなのですが。

そして、仲良しだったマック。相変わらず学究的なマックには、ロマンスの匂いがしないのですが、それでもローズとの絆は確かに深まりつつあるようです。

ローズの思いとは裏腹に様々な思惑が乱れ飛び、そこにあまりに美しく立派なレディになったフェーブも絡んで、複雑な恋模様と駆け引きが繰り広げられます。

そんな中、チャーリーが落馬して瀕死の重傷を負います。この章ではひどく感動して涙をポロポロ流したことが忘れられません。チャーリーの看病に当たっていた大親友のアーチーが、遂にローズの前で張りつめていた思いが崩れて泣き出すシーンがあります。それは女性の静かな悲しみとはまるで違ったものだったので、ローズがすっかり感動してしまった、という描写がありました。そしてローズは、アーチーを抱き寄せ優しく慰めます。こういう時は女の方が強くなるものなのだ、と。まだ、真の女性の強さを理解していなかったこの頃、人の命の瀬戸際でも冷静に強くなれるローズに畏怖を感じました。今は、そう女性の方が何だかんだ言っても強いのよね、と理解出来ますが。

西部では派手な撃ち合いが当たり前であり、アメリカの男性と言えば今でもタフでクールが合い言葉のような社会で、堂々と男性に悲しみに浸らせてあげる小説というのも、当時では珍しかったでしょうね。

さてさて、素敵な従兄弟たちに囲まれたローズ。全くうらやましい限りですが、誰と結ばれることになるのかは読んでのお楽しみです。


☆ちなみに名訳者の村岡花子さんと共同で名を連ねている訳者の佐川和子さんという人は、四人の女性の共同の名前だそうです。四人の名前をうまくくっつけてそういう名にしたのだとか。






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