|
|
アタックNo.1
浦野 千賀子
|
思えば私のバレーボール好きは小さな頃から、知らず知らずの間に形成されていったのかもしれません。この作品はその大きな一翼を担ったに違いありません。
原作は昭和43年から週刊マーガレットに連載されました。さすがにリアルタイムでは読んでいません(笑)。後年読みましたが、やっぱりアニメの印象が強すぎましたね。原作では努君は高校に行って、自殺しようとした人を助けて亡くなったり、実は努君には双子の兄弟がいたり、とか微妙な違いがありました。
アニメの方は昭和44年から放映開始。「♪苦しくったって〜悲しくったって〜コートの中では平気なの」の主題歌と共に大ヒットしました。スポ根アニメという言葉はこれと「巨人の星」で出来たのではないかしら。
ストーリーはほとんどの方がご存じだと思います。天才バレーボーラー鮎原こずえが猛練習を重ねて、日本一、そして世界一を目指して上り詰めていく話です。で、天の邪鬼な私は勿論ヒロインこずえちゃんより、みどりちゃんが好きでした。脇役と言うよりは準主役と言うべき彼女、最初はこずえのライバルとして登場して火花を散らし、やがて無二の親友として日本一、そして共に世界を目指していく人です。バレーはチームプレーですからね。どんなにこずえが天才プレーヤーだとしても、1人でバレー部を優勝に導くことは出来ません。6人全員が力があることが必要だけれど、特にみどりというもう1人傑出したプレーヤーが存在していたことは大きかったでしょう。
恩師の本郷先生、全日本ジュニアの監督であるサングラスにお髭の猪熊先生など、スポ根これでもかタイプのバレーコーチのオンパレードも今思えば楽しい(笑)。倒れても倒れてもボールをぶつけるスパルタ特訓は、やはり東洋の魔女、鬼の大松の影響だったのでしょうか。
スポ根お約束の魔球も忘れてはなりません。「木の葉落とし」「竜巻落とし」「ダブルアタック」「消えるアタック」「三位一体の攻撃」「シェレーニナのV字トス」など。バレーボールではなく、何故かバドミントンで「木の葉落とし」や「ダブルアタック」の練習をしたものです(笑)。あの頃、きっと公園ではあちらこちらで「アタック!」のかけ声があったのでは(笑)。こずえとみどりが大学生の合宿で身につけた「木の葉落とし」というサーブは、10何年前ブラジル男子のライズマンという選手が考案した「星への旅」という天井サーブの原型、という噂もありました。これは冗談ではありません。ちょっとひねれば使える技もあったのですね。
こずえとみどりが全日本ジュニアに選ばれて、ジュニアの世界選手権に出る話もあって、外国の選手がみんな日本語でしゃべっていたのもおかしかったですね。あの頃はやっぱり強い筆頭が旧ソ連で、あと東欧、強くはなかったけれどアメリカ。キューバはいなかったですよね、確か。でもあの時代に、学校のバレー部物語だけに甘んじているのではなくて、既にジュニアにして世界を目指していたっていうのは、大きな構想だったんでしょうね。
高校に入って、スター選手なのにお約束の後輩いじめをされて、それでも「コートの中では平気な」2人でした。それにしてもキャプテンを除けば、先輩後輩の序列がない部で、運動部らしからぬ違和感がありましたが。
こずえのBF努君が自動車事故で瀕死の重体、でもこずえは試合を続ける・・・というのは一番のクライマックスでした。勝負に対するすさまじい執念。そしてみどりが言うんですよね。「一刻も早く勝ちましょう、こずえを病院へやるために」って。これは感動的な友情でした。あの頃何かのテレビ番組の特集で、このシーンを例にあげて女の友情を取り上げていたように思います。大事な人の一大事に駆け付けられないというのは、実際にスポーツ選手は避けては通れない話です。“あの”松平氏も試合ゆえに(監督時代)ご子息の最期に立ち会えなかったそう。
日本のバレーボールが登り調子だった時代。これからミュンヘン、モントリオールと男女バレーのオリンピック金メダルが続くちょっと前の時代。黄金期だからこそ有り得たバレー賛歌でした。今の日本バレーの現状を考えると淋しいですね。
後年バレーのフォーメーションを知るに当たって生じた疑問が一つあります。こずえはエースポジションでしょう。ではみどりは?前衛で並ぶところを見ると、エース対角ではありません。とするとセンタープレーヤー?でもクイックやおとりに飛ぶというより、やっぱり役割はエースですよね。ということは、こずえかみどりのどちらかはセッター対角、つまり今で言うスーパーエースだったのでしょうか。だとすると、このマンガはアメリカ黄金期を作ったダグ・ビイル監督より10何年も前に、セッター対角に力のあるエースを置くというスーパーエース構想を打ち出した画期的な作品ということになります。どうか、どなたかこの疑問に答えてやって下さい。
マンガ論かバレー論かわからなくなってきてすみません。ついでですから、私が80年代半ばに歌っていた替え歌を記念に・・・。アメリカ男子チームの試合を見ながらテレビの前で歌っていたのは私です。
♪苦しくったって〜悲しくったって〜チームの仲間がいるんだもん
6人が揃えば心が弾むわ レシーブ、トス、スパイク、コンビバレーで優勝
涙と汗で3冠勝ち取って、金メダル持って帰りましょう〜
USA、USA、No1〜USA、USA、No1〜
すっかり私情に走ってすみませんでした・・・。
☆努君、どうしてあの年でトラックの運転が出来たの?
マーガレットコミックス、文庫(共に絶版)、
アース出版局より「漫画名作館」として刊行
|
|
(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved
|
|