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祈りの鐘がひびくとも・・・



三原 順


突然ですが、短編の登場です。が、この作品は古くからのはみだしっ子ファンには馴染み深い作品かと思います。何故ならコミックスのはみだしっ子第3巻に収録されていたために、必然的に読むことになったからです。

少年サミーは両親から川向こうに渡っては絶対にいけないと釘を刺されていました。昔ある事件があったからなのですが、川向こうの女の子イベットに挑発されて遂にサミーは向こう岸に渡ってしまいます。孤独なイベットはいつも向こう岸からサミーのことを見ていて、友だちになりたかったのでした。でも彼女と仲違いして、道に迷ったサミーは教会に行き着きますがそこで目撃したのは魂を抜かれた犬。気を失ったサミーは俳優ジャンに助けられて家に戻り、家族に見たことを訴えますが勿論信じてもらえません。もう一度森へと出かけたサミーを、サミーの目撃談の謎を解明した兄のデビッドが追いかけます。そして二人はある会合を開いている教会に入り込んでしまうのですが・・・。

主役の兄弟デビッドとサミーは温かい家庭に恵まれていますが、それでも満たされぬ思いを抱えています。兄のデビッドは体が弱く、思うように走り回れない。弟のサミーは両親の関心が兄の方にばかり向いてしまうことに不満を持っている。洒落者の俳優ジャンは人に語れない辛い過去を抱えており、イベットは愛する父の想い出だけを胸に生きる孤独な少女。やはりここの登場人物も、なにかしら傷を抱えた人間です。まあ、何も抱えていない人の方が少ないとは思いますが。

果たして教会に集っていた人たちはどうだったのでしょう。この世のしがらみを一時でも忘れられる快楽を知ってしまった人たちと、自分の罪が許せずその快楽を自分に許さなかったジャンとは・・・。これ以上語るとネタバレになってしまいますので、後は読んでのお楽しみ。

イベットのお父さん、三原順マンガにはなかなかいない、貫禄があって格好良いお父さんです。結構気に入って、第3巻をぱらぱらめくるとついでに読んでしまった記憶があります。当時の少女マンガではまず扱わなかった題材を堂々と持ってきたことも注目に値します。

☆川の向こう岸?どこかで聞きましたね(笑)。でもこちらの作品の方が先みたいです。「われらはみだしっ子」と「動物園のオリの中」の間に発表された作品です。

白泉社コミックス「はみだしっ子第3巻」収録
白泉社文庫「三原順傑作選’70s」収録






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