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天使の園


庄司 陽子


苦労して自分を育ててくれた母が病気で倒れたために、マーゴットは全寮制の女子高校に入学します。そこにはハミルトン院長がいて、最初から厳しい態度でマーゴットに接します。同室なのは女優志望のリタという派手な少女で、マーゴットがドミニクという大人しい少女と会話を交わしただけで、マーゴットに激しい敵意を燃やします。そこは女同士の愛に身を焦がす禁断の地でもあったのでした。勉強でもテニスでも頭角を現し始めたマーゴットは、院長の家に呼ばれテニスの試合に出るように言われます。何とその時の院長は、学校ではひっつめている髪をおろして妖しいくらいの美しさを見せていました。
ある日、学校に転校生がやってきます。ジーン・ロックフォード。資産家の娘ですが、体が弱くて2年遅れて入学した彼女は、初日からこっそりたばこを吸っていたりしてマーゴットを驚かせますが、いつしか二人の気持ちは通じ合います。自分の体をいたわるどころか自暴自棄になって生きるジーンに、マーゴットは自分の不幸な生い立ちを話し、ジーンはそれまでの自分の生き方を変えることを誓うのですが・・・。


全寮制のお話というと、男子ものが圧倒的に有名ですが、これは女子全寮制高校の女の園の禁断の愛と純粋な友情を描いた作品です。

ヒロインのマーゴットは不幸な生い立ちにも負けずに、真面目で優等生です。でも、やはり自分の出生の秘密がトラウマとなっていて、人に心を開けない。それが友だちをつくることに彼女に二の足を踏ませています。

ジーン・ロックフォード。同級生より年上ということもあって大人びた彼女は、たばこもお酒もたしなむ豪傑で、模範生にはほど遠く世の中を斜めに見ている人ですが、そのすれ方は見ていて痛々しくとても素敵な人です。親を早く亡くした彼女は親戚に遺産を狙われていて、そんな環境に嫌気がさして自分の弱い体をいたわるどころかいじめて自分から死期に向かって突き進んでいるようなところがあります。それが、一生懸命に生きるマーゴットとその母を見て気持ちを変えるのです。
「あたしはこの場でお二人に誓うことができます。きょうからあたしはもっと自分を大切にします。きょうからあたしは誰のためでもない、自分の人生を歩んでいけます」
とジーンが片手を挙げて誓うところは涙を禁じ得ませんでした。

女ばかりの世間から離れた園。まるで「制服の処女」を思い起こされるような禁断の愛の世界。女って怖いです。

そんな中での、マーゴットとジーンの無償の友情。自分の存在意義に悩み、傷つきやすい青春の真っ直中で出逢った、何物にも左右されない強い友情の絆に大変な感動を覚えました。


☆学校ではひっつめた髪の厳しい教師。プライベートでは、ちょっと男っぽささえ感じさせる妖しい魅力を見せる院長。怖い・・・。


講談社コミックス「愛のあらし」に収録

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