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フェイギン
・・・「父さんは宝物」 |
アルバートが育てることになった子牛に彼がつけた名前はフェイギンと言う。アルバート曰く「フェイギンが好きなんだ」。
フェイギンとはチャールズ・ディケンズの「オリバー・トゥイスト」の登場人物だ。孤児オリバーと他の少年達を集めてスリとして働かせる親玉。つまり悪い奴。ただちょっと憎めないところもあるけれど。
考えてみればアルバートも孤児だ。スリや悪いことを生業として生きてきた。オリバーの場合はフェイギンに操られて悪事をするしかなかったが、アルバートは自らの意志で悪いことを行ってきた。勿論それは生きるためにその道しかなかったからだが。オリバーと共通する過去を持つアルバートが初めて自分の物となった子牛にフェイギンと名付けるのがスパイスが利いていて面白い。
オリバー・トゥイストにとってフェイギンは悪いボスだったが、とにもかくにもオリバーが餓死するのを防ぐ盾ではあった。汚いところではあってもフェイギンはオリバーに住処と食料を提供してくれた。オリバーはフェイギンのところで働いていたのが縁で(といっても悪い仕事ばかり)、結果として幸福な暮らしを手に入れた。新しい家族を見つけたのだ。
アルバートも前の暮らしから今の暮らしへの橋渡しとしてこの子牛に夢を託したのかもしれない。そして結果としてこのフェイギンはアルバートに新しい家族をもたらしてくれた。
孤児アルバートと孤児オリバーは共にフェイギンとの出会いを通して、結果的に「家族」を見つけたのだった。
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