おすすめ映画





















































































アラモ



THE ALAMO


1960年アメリカ映画
カラー  162分

監督 ジョン・ウェイン
出演 ジョン・ウェイン リチャード・ウィドマーク
ローレンス・ハーヴェイ リチャード・ブーン
フランキー・アバロン リンダ・クリスタル
チル・ウィルス ケン・カーティス
パトリック・ウェイン


1836年、メキシコ領であったテキサスで大統領サンタ・アナの圧政から逃れるための独立運動が起こっていた。独立を目指す一群は、トラビス大佐を隊長にしてアラモ砦に立てこもる。その中には、西部の英雄的存在、デイビー・クロケットやジム・ボウイもいた。壊れた教会をメインにしたアラモ砦に立てこもったアメリカ人は185人。対するメキシコ軍は7000人。やがて壮絶な戦いの火蓋が切って落とされた・・・。


アメリカ人にとって忘れられぬアラモ砦の事件を描く西部劇です。「リメンバーアラモ」は今でもアメリカ人にはポピュラーな言葉。それをタカ派と言われるジョン・ウェインが監督、主演したということで愛国主義的映画的な言い方もかなりされているのは事実です。どちらの側から描くかによって、全く見方は違ってきますが、共通するのは戦いは虚しく、悲劇を生むばかりだということ。落ち着いて見ていれば、メキシコ軍もそれなりに紳士的な態度で描かれていることに気づきました。

「デイビー、デイビー・クロケット♪」の歌でお馴染みの、フロンティアの英雄デイビー・クロケット。演じるのはジョン・ウェインです。ビーバーの帽子をかぶり鹿革の服を着た彼は、テネシー出身で熊と戦った武勇伝などで有名になり一時期下院議員も務めたという経歴の持ち主です。その彼が、テネシーの仲間たちをつれてやってきたアラモの砦で独立のために戦うアメリカ人の援軍を務めることになります。それに至るまでの過程では、ジョン・ウェインと言えばお約束の殴り合いのシーンあり。

ナイフの達人ジム・ボウイもやはり西部の英雄として有名な人です。演じるのはリチャード・ウィドマーク。隊長のトラビス大佐と何かと対立するちょっと皮肉屋でもあります。しかしながら、奥さんを亡くして涙に暮れる様子には思わずホロリ。実生活でも愛妻家で知られたウィドマークと重なります。私たちの父親世代に圧倒的な(?)人気を誇っているこのウィドマーク。この映画でやはり一番の儲け役であり、ジョン・ウェインを喰っているかも。

西部の荒くれ男とは一線を画す東部の紳士としか思えないトラビス大佐。シェークスピア俳優のローレンス・ハーヴェイが演じるだけに彼のキャラクターはうなずけます。規則規則で少々杓子定規な人。でも、剣士の如き剣裁きを披露します。

この3人を主役に、アラモ砦は185人対7000人という到底かなう筈のない戦いへと突入します。戦いが始まる前に、女子供を逃がすシーンでは切ない別れに胸を打たれます。それでも残る男性たち。デイビー・クロケットやジム・ボウイたちの援軍は、トラビス大佐に出ていって良いと言われ一旦去ろうとします。何かとトラビス大佐と対立していて戦闘が終わったら決闘を約束していたジム・ボウイが土壇場で馬を降りる・・・その男気。感動しつつも、何故に勝てる見込みのない死に向かって突き進むのか、男たちよ、と思わず嘆きたくもなるのです。デイビー・クロケットが言います。「共和国という言葉は聞いていて胸が熱くなる。それは自由を意味するものだから」。自由、この名の物を得るためにアメリカ人は、いや世界の人々は果たしてどれだけの血を流してきたことでしょうか。

ジム・ボウイはジェスロという名の黒人の侍従を連れています。ボウイはジェスロに、最後の戦いの前に自由にするという書類を与えて出ていくように告げます。初めて見た時には、実はこのシーンまでジェスロが奴隷の立場にあるということに気づきませんでした。このジェスロを演じた俳優さんは出番は少ないですが、凄く味があります。自由になるという書類を手にして、彼が自由な立場で選んだ決断。そこに主従関係を越えたつながりを感じてしまう私は甘いでしょうか。

「Green Leaves of Summer」のテーマ曲が大変有名になりました。ブラザーズフォーの歌でもヒットしました。女性と子供が馬車でアラモ砦を出ていく時にかかるのですが、何とも切なくて哀愁があって心を打たれます。

「リメンバー、アラモ」。当時の真の状況はわかりません。メキシコの圧政がどの程度のものであったのか。でも、アラモで散った人々はアメリカという新国家を築いた時の理想のままに最後まで戦ったのでしょう。そして、その人たちの中にアメリカ人はアメリカの心を見るのでしょうか。あまりに多くの屍を越えて築いた今の生活。それを守るために、人々の出来ることは何なのでしょうか。今、とても真剣に考えずにはいられません。


☆ジョン・ウェインが映画会社にこの企画を持ち込んだけれど、断られたという話です。それで遂に彼は自分で製作してしまったそう。撮影現場には呼ばれもしないのに、ジョン・フォード監督が現れて見守っていたそう。師匠ですものね、心配だったんでしょう。






(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved