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俺たちは天使じゃない



WE'RE NO ANGELS

1955年アメリカ映画 パラマウント
カラー 106分

監督 マイケル・カーティス
出演 ハンフリー・ボガート ピーター・ユスティノフ
 アルド・レイ ジョーン・ベネット
   レオ・G・キャロル ベイジル・ラスボーン
 グロリア・タルボット


1885年、悪魔島。刑務所から脱走した3人組は、ある雑貨店に物資を調達するために入り込む。ところがその店の営業は火の車。店の持ち主である従兄の存在に怯え、苦しい経営に溜息をつきながらもうらやましいくらい仲の良い主人夫婦。18歳の一人娘は、親戚の息子に恋をしている。そんな事情をこっそり聞いてしまった彼らは、店に居座り段々主人一家に力を貸していく。時はクリスマス。一家に素晴らしい料理とクリスマスツリーをプレゼントして大満足の彼らの前に、従兄のアンドレと甥のポールが現れる・・・。


悪魔島は刑務所のある島で、島には普通の人も勿論暮らし囚人たちもそこで働く、という危ないようなのどかなような不思議な島。「パピヨン」で描かれた島ですね。そこの刑務所を脱走したジョセフ、ジュール、アルベールの3人組は、パリに渡るための衣服その他を調達するために雑貨店に侵入します。そこの物を盗んで夜には一家を殺して脱走・・・と計画していた彼らですが、何とも人の良い主人と美人の妻、片思いに悩む年頃の娘の姿にほだされて、気がつくとそれぞれの特技を駆使してせっせと主人一家に協力していたというわけです。ジョセフは店の経営状態を帳簿で確認し、客に必要のない高い物を売りつけ、ジュールは鍵のない店の金庫を開け、アルベールは娘の恋の相談にのります。さらにクリスマスディナーに招待された彼らは、食料その他をどこからか調達。七面鳥はジョセフの後をついてくるし(?)、クリスマスツリーもどこからか湧いてきます。一家は花で飾られた素晴らしい庭で3人組の唄うクリスマスキャロルを聴きながら素晴らしいクリスマスディナーを満喫するのでした。とにかく底抜けに人の良い幸せそうな主人一家を見て、3人組の心はとてもほのぼのとしてくるのです。しかし、そこに店の持ち主であるお金のことしか頭にない従兄のアンドレが現れたのでした・・・。

囚人たちが善意の人々に触れてその心をほぐしていく・・・という典型的人情喜劇です。詐欺ならお手のもの、帳簿改ざんも人に物を売りつけるのも天才的という詐欺師ハンフリー・ボガートと、金庫破りの天才ピーター・ユスティノフ、女性キラー(?)のアルド・レイの、とぼけた囚人トリオが何とも楽しいお話を次々に披露してくれます。雑貨店の主人一家はもう底抜けのお人好し。レオ・G・キャロルは確かに店に閑古鳥が鳴くのも仕方ないか、と思えるほど商売向けの人ではないし、一見しっかり者なんだけれどやっぱりどこかちょっとずれている美人妻ジョーン・ベネットもちょっと笑えます。そんな彼らが一緒に迎えるクリスマス。庭に飾られた花に飾りにクリスマスツリー。ライトアップされた美しさには思わずホロッ。囚人だろうが何だろうが、クリスマス精神だけは身についてしまっているというところが面白いですね。

この映画の中での悪者は、店のオーナーである従兄のアンドレにつきるでしょう。悪者とは言っても極悪非道というわけではなく、まあ金の亡者であり鼻持ちならない奴という程度ではあるんですが、こんな善意の人々の中に入ってしまっては、悪者No.1なのも仕方ない。それでも、そこまでしていいのか?とちょっと悩んでしまうところがこの話のネックなのですが、まあそれはそれ。

ボギーは、格好良いヒーロー役が多いけれど、その実こういうコメディものが結構似合うと思います。よれた囚人服も良く似合う(笑)。この頃は俄然悪役が多かったピーター・ユスティノフも、とぼけた演技が巧い。善意の夫婦、レオ・G・キャロルも結構悪役が多かったし、今も美しいジョーン・ベネットも「花嫁の父」以降は母親役が多いけれど、30年代、40年代を代表する悪女女優だったというのも面白いです。

ボギーがきついジャケットを無理矢理客に売りつけるシーンなど、無理があるとは知りつつ人の心を微妙に捉えていて笑えます。ほのぼのとしていて、かなりとぼけていて笑えてジーンとくる、結構好きな映画の一つです。

☆この映画で大事な役を受け持つアドルフですが、とにかく姿を見せないのが最高の美点!






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