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猿の惑星



PLANET OF THE APES


1968年アメリカ 20世紀フォックス カラー 113分

監督 フランクリン・J・シャフナー

出演 チャールトン・ヘストン キム・ハンター
ロディ・マクドウォール リンダ・ハリソン モーリス・エヴァンス


ぱおー。ティム・バートン監督によるリメイクもありますが、これはそのオリジナル。44年も前の映画です。公開当時は大ヒット、ものすごく話題になり、シリーズ化されて全5作も作られました。でも、この第一作がいちばん傑作だった。シリーズ化しなきゃよかったと思うくらい。

1972年にテイラーたち4人の宇宙飛行士が地球を飛び立つ。光速に近いスピードで飛行するため、船内時間に比べて地球の時間は恐ろしいスピードで過ぎていきます。テイラーたちは人工冬眠に入り、とある惑星に不時着。地球時間では2000年も過ぎています。

惑星は荒涼としており、3日以内に食糧を探さないと死んでしまいます。植物を求めてさまよう彼らはやっと小さな草を見つけ、さらに森を、そして湖を見つけます。喜んで水浴びをしていたら、服や装備がなくなっているではありませんか。誰かが奪っていったのです。それを追っていくと、現地の人間たちに遭遇。だがその人間たちは言葉もしゃべれず、原始的な生活をしているのです。すると急に彼らが逃げ出す。何者かが人間狩りをしている。彼らといっしょに逃げるテイラーたちが目撃したのは、なんと馬に乗って銃を持ち、まるで人間を動物のように狩る猿たち。テイラーは喉を撃たれ、猿につかまえられてしまいます。

檻に入れられ、ジーラという雌チンパンジーに研究されるテイラー。喉を撃たれて声が出ないため、コミュニケーションを図ることもできません。おまけに、ザイアスという偉いチンパンジーはどうもテイラーのことをよく思っていない様子。それでも筆談によって何とかジーラとその婚約者のコーネリアスとコミュニケーションをはじめるのですが、コーネリアスはそれをただの動物芸としか考えません。

逃げ出したのもつかの間、捕獲されるのですが、やっと喉が治ってテイラーは声を取り戻します。それで理解されると思いきや、彼はザイアスたちによって異端審問にかけられてしまいます。ザイアスは人間という種族を敵対視しており、危険な生物だから絶滅させるべきだと考えています。どうやら彼は何かを知っているようなのですが、それが何かはわかりません。

いろいろあった末に、テイラーは現地の物言わぬ女ノヴァとともに禁断地帯へ逃れます。それを見送るザイアスは、彼がそこで自分の運命を目撃するのだと言います。はたして禁断地帯の果てにテイラーが見たものとは・・・

全編が皮肉と黒い笑いに包まれ、異様な雰囲気の作品です。公開当時は猿の特殊メイクのすばらしさが話題になったようですが、今見るとそれよりもとんでもないブラックな味わいが特徴的に思えます。人間社会を裏返しにしたような猿社会の滑稽さ、抵抗するすべもなく、狩りの対象にされ、捕獲されたり殺戮されていく人間たち。そして、当時の冷戦構造を色濃く反映した衝撃のラスト。フランスの作家ピエール・ブールの原作にはない、思いっきり皮肉に満ちた終わり方でした。

脚本を担当したのはロッド・サーリング。往年の傑作SFドラマシリーズ「ミステリー・ゾーン」を作った人です。1968年に公開されたのですが、同じ年の「2001年宇宙の旅」とともにSF映画の流れを変え、大人の鑑賞にも堪えうる芸術にまで高めた功績は大きいでしょう。のちのSF映画にも大きな影響を与えています。リメイク版も観ましたが、いくらSFXやCGが発達しても、この黒い笑いと皮肉に満ちた雰囲気は真似のできないものではないでしょうか。

☆それまでのSF映画が、ほかの惑星に行ってもそこの宇宙人が英語を話し、それを平気で受け入れてしまう地球人というとんでもない荒唐無稽さを逆手に取ったところが、この映画のすばらしいところだと言われています。なるほど。そのあたりも、ロッド・サーリングの非凡さがよく出ていると思います。





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