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美女と野獣



LA BELLE ET LA BETE

1946年フランス映画
白黒 93分
 
監督 ジャン・コクトー
出演 ジャン・マレー ジョゼット・デイ
    マルセル・アンドレ ミラ・パレリ
   ミシェル・オークレール


船を失い没落した商人には3人の娘と1人の息子がいた。末の娘ベルは美しく心優しい。家の仕事を一人で引き受け小間使いのように働く日々だった。ある日旅に出た父親が森の中である屋敷に迷い込む。そこでベルに頼まれたバラの花を一輪摘む。その途端に屋敷の主の野獣が出てきて、大事なバラを摘んだことを怒る。そして娘のうちの誰かを身代わりに寄越せば命を助けてやる、と言う。家に帰った父からそれを聞いたベルは、父に内緒で家を出て野獣の屋敷へと向かう・・・。


お馴染みボーモン夫人のファンタジーを作家、詩人、監督と何でもござれのジャン・コクトーが映画化した作品です。美しいもの大好きなコクトーさんのこと、それはそれは美しい作品に仕上がっています。かつては羽振りが良かったのであろう商人には娘が3人います。姉二人はわがままの極地にあり、末娘ベルだけは心優しく、容姿もとても美しい可憐な花のような娘です。3人きょうだいの末っ子・・・うーん、永遠に語り継がれるパターンですね(笑)。そのベルが父の窮地を知って、身代わりに野獣さんの屋敷に出向くわけです。しかし、野獣さんはどういうわけかお金持ちで、ベルは豪華で綺麗なドレスを着せてもらい優雅な暮らしをさせて貰います。姉さんたちがこの事実を知ったら何と言うでしょう(爆)。しかし、お金なんかでは左右されないベルの心。「あなたは醜い」などとグサッと来ることをいきなり言ってしまうベルって、本当に心優しいのか!?という疑問については、容姿ではなく野獣さんの心を言ったのであろう、と解釈しておきましょう。

この野獣さんの屋敷というのがとても面白くて、ろうそく立てを持っているのが本物の手であったり、壁にかかっているのが本物の人間の顔であったり、一歩間違えばアダムスファミリー的なお屋敷であります。ベルが入ると、「あなたのものです」などと手鏡やベッドなどがしゃべりだすというおもてなし心も満点の家です。美しいベルに心奪われた野獣さんは、ベルに贈り物攻勢をかけますがなかなかベルは心を開いてくれません。そうこうするうちに、ベルは父親が病気であることを知り家に帰してくれるように懇願し、はたまたベルを愛する青年アヴナンが屋敷に忍び込んでひと騒動が起きる、というわけです。

ヒロインのジョゼット・デイはとても美しい人です。黄金の髪と豪華なドレスが映えていかにもお姫様的な人。兄弟役でミシェル・オークレールが出ているのも興味深いです。しかし、何と言ってもジャン・マレー。野獣とアヴナンの2役をこなすジャン・マレーはフランス映画界屈指の美男であることは有名ですね。少々角張った顔ではありますが、彫りの深い顔立ちと漂う気品はこれまた天性の王子様。但し、か弱い王子様などではなく自ら闘って勝ち取る強さと愛を請う繊細さを持ち合わせた人であります。耽美派コクトーに愛されて、コクトーと共に一時代を築いた人でありました。コクトーほど彼の美しさを活かした人はいないし、コクトーほど彼を知った人もいなかったのではないでしょうか。40年代から50年代、フランス映画界の貴公子と言えばジャン・マレーとジェラール・フィリップ。タイプの違う二人ではありますが、どちらも美しかった・・・。そして華の命はまた短くもありました。

この映画は実はジャン・コクトーとルネ・クレマンの共同監督作品でもあります。この作品でルイ・デリュック賞を受賞したコクトーは、さらに飛躍を遂げていくのであります。勿論自ら「恐るべき子供たち」を映画化してもおります。作家として自らの作品を映像化出来るとは何と幸せな方であったことでしょう。

ラストはとにかく夢のよう。野獣のメークや屋敷のインテリアなどCGを見慣れた方なら笑ってしまうかもしれませんが、ファンタジーだからこんな手作りが温かいとも言えるのではないでしょうか。映像技術はどんなに発達しても、これだけは作り出せないのが美男美女。彼らが奏でる永遠のファンタジーの世界を華麗な映像と胸躍る美しさの中で是非堪能して頂きたいものです。


☆アヴナンの身で考えればたまらない話であると、実は昔から思っておりました。






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