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大いなる西部



THE BIG COUNTRY


1958年アメリカ映画  UA
カラー  166分

監督 ウィリアム・ワイラー

出演 グレゴリー・ペック ジーン・シモンズ
キャロル・ベイカー チャールトン・ヘストン
バール・アイヴス
チャールズ・ビックフォード チャック・コナーズ


東部から婚約者のパトリシア・テリルを訪ねて西部にやってきたジェームズ・マッケイは荒々しい西部には似合わない非暴力主義の紳士だった。テリル家の牧童頭のスティーブは、パトリシアの父テリル氏の片腕であり、パトリシアのことを愛していたこともあってマッケイに敵意を向ける。大きな牧場を経営するテリル家は、ヘネシー家と水利権争いでもめていた。パトリシアの友人である教師のジュリーがその水源となる地を持っていて、両家から売却を求められて狭間に立たされていた。マッケイも否応おうなくその争いに巻き込まれる事になっていく・・・。


オープニングでクルクル回る馬車の車輪のクローズアップ。そこにかぶさるあのジェローム・モロスの何とも勇壮で車輪の音との微妙なハーモニーを感じさせる意表をついたとさえ言えるテーマ曲。この音楽と共に西部劇史上に残る名作です。

場所はテキサス。西部の中の西部と言っても過言ではないこの土地に現れたのは、都会育ちで非暴力主義を貫くセンスの良い紳士。しかし、この土地では勇猛果敢さが男の象徴なのであって、どんなにパリッとしたスーツを着こなしていてもマッケイのような男性は、真の男性として相手にされません。テリル家と敵対するヘネシー家の息子たちは、パトリシアとマッケイの乗った馬車をからかいながら追いかけますが、マッケイはどんな罵詈雑言にもどこ吹く風。烈火のごとく怒るのはパトリシアの方で、まさしく西部の鉄火娘です。こんなに性格が違って、この2人はうまく行くのかしら?と疑問を投げかけつつそれでも2人の仲が当分続くところが不思議。パトリシアは、西部の男にはないマッケイの物事に動じない平和的なところを最初は愛したのかしら??それとも、女性を大切に扱ってくれる東部男性の紳士ぶりに王子様の姿を見たのでしょうか。

パトリシアの友人で女教師のジュリーは、争いの根源となっている水源を所有している女性でこの映画のキーパーソンの1人です。それまで、史劇女優No1のイメージのあったジーン・シモンズが扮していますが、この西部女性役が意外に合っているんですね。グレゴリー・ペックとの廃屋でのシーンは素敵でした。もともとが清潔で品の良い美しさを持った人ですから、教師という役柄も手伝って馬で駆け抜けていくところでも凛とした魅力があって素敵です。じゃじゃ馬娘のパトリシア役のキャロル・ベイカーとはまた全然違った魅力を放っています。

チャールトン・ヘストン・・・子供の頃から、この人はいつも主役のイメージがありました。だから、この映画を見て驚きました。クレジットが4番目!え!?グレゴリー・ペックが主役なのはわかるけれど、女優さん2人にも抜かれてしまっているのね。まあ、今では猿役にまでノンクレジットで出演しているチャールトン・ヘストンの若い頃の姿です。パトリシアを密かに愛している牧童頭のスティーブ。相変わらずの黙して語らずの男。

恋敵同士のペックとヘストンの延々と続く殴り合いシーンは、この映画の語りぐさになっています。人々が寝静まった夜中に、2人の大男が黙して語らずただひたすら殴りあうシーン。男っぽいけれど、今思うとどこか子供っぽくもある(笑)。本当に男って・・・。でも、私は好きですね、このシーン。

脇役がまた光っています。キャロル・ベイカーの父親のチャールズ・ビックフォード。西部劇の脇役では昔から欠かせない人でした。品の良さと悪役っぽさが同居している人。頑固な金持ちの牧場主役なんてまさしく彼らしい役でした。
そして、彼と相反するヘネシー家の長役のバール・アイヴス。彼はこの役でアカデミー助演男優賞を受賞しています。恰幅が良くて品性にはほど遠い人なんですが、男の流儀やルールにはこだわる人。その理由は、見てのお楽しみです。彼はカントリーシンガーとしても有名です。「大草原の小さな家」では「祈りの森」で盲目の老人に扮しやはり味のある演技を見せていました。

バール・アイヴスの不肖の息子役に扮していたチャック・コナーズも実はお気に入りの俳優の1人です。いかにも悪役然としたルックスの通り、悪役の多い人なんですが、でもお気に入り。この映画でもトラブルメイカーで、どうにも困ったちゃんNo1役で活躍しています。

「大いなる」というタイトルに実にぴったりでこの映画の出演者は大男揃い。グレゴリー・ペックとチャールトン・ヘストンは、私の母曰く殴り合いのシーンを見ながらどちらが大きいのか判断しようとしたがどうしてもわからなかったそうです。それもそうでしょう。2人とも189cm。同じ身長なんですね。バール・アイヴスは背はそれほどでもないかもしれないけれど、恰幅の良さはまさに「大いなる」。
チャールズ・ビックフォードも老人の割に大きいし、ダントツに大きいのがチャック・コナーズ。以前スポーツ選手だったという経歴もあって190cmを軽くクリアしています。「大きい俳優ばかりでいつも上を見上げていなくてはいけなかったら、首が疲れちゃったわ」とジーン・シモンズが撮影終了後に言ったとか。

ラストの峡谷での決闘シーンまで、一気に引っ張ります。本当に人間って愚かで、同じ事を繰り返して、それでもやはり生きていく動物なんですね。世代交代で少しずつは変わりながら・・・。

とにかく壮大な映画です。これほどのキャストが揃う映画もそうはありません。西部男の男気、正義感など、考えさせられる点も山盛りです。でも、こうして西部はどんどん発展していったのですよね。とにかく、オープニングのシーンとテーマ音楽だけでノックアウトされます。


☆この1年後に、ウィリアム・ワイラーとチャールトン・ヘストンは再び組んで「ベン・ハー」を撮ることになるのですね。






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