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ブラザー・サン シスター・ムーン



BROTHER SUN, SISTER MOON


1972年イタリア・イギリス映画  121分

監督 フランコ・ゼフィレッリ

出演 グレアム・フォークナー ジュディ・バウカー
リー・ローソン アレック・ギネス
ヴァレンティナ・コルテーゼ ケネス・グレアム
イラ・フルステンベルク アドルフォ・チェリ


ぱおー。ボクはこの映画を見るたびに大泣きしてしまいます。恥ずかしいけどぱおぱお声を上げてぼろぼろ泣いてしまいます。これほど心が洗われる映画もめずらしいんじゃないんでしょうか。あ、ほら、書いてるうちにまた涙が出てきた。

監督は「ロミオとジュリエット」の名匠ゼフィレッリ。キリスト教のフランチェスコ会派の開祖、アッシジの聖フランチェスコの若い日を描く伝記映画であります。舞台は12世紀イタリア。フランチェスコは富豪の御曹司で、何不自由なく享楽の毎日を送っているのですが、十字軍に参戦し、身も心もぼろぼろになって帰ってきます。両親は彼を手厚く看病し、苦しみながらも徐々に回復していくのですが、心だけは深い傷を負ったまま癒されません。

ベッドから出られるようになって、彼の目はそれまで見ることができなかったものを見はじめます。家の屋根でさえずる小鳥。自然の恵み。神の愛のすばらしさ。そして、富豪の父に酷使されて劣悪な環境のなかで何の楽しみも人生の希望もなく生きている人々の悲惨。

家の窓から父が製造した高級な染め物を群衆に向かって放り投げたり、着ているものを公衆の面前で脱ぎ捨て、差し出して、すべてを神に帰する彼。そんな彼を、周囲は気が触れたとしか見ません。もちろん、父親は激怒しています。でも、そんな彼に共鳴する者たちもいました。世の中に疑問を持ち、神への愛を実現したいと思っている若者たちです。とくに、美しい娘キアラはそうでした。彼女は貧しい家の出身なのに、病のため虐げられて街から放逐されている人たちに「兄弟たち」と呼びかけてパンを配ったりしているのです。フランチェスコはまだ世の中の享楽にどっぷり浸かっていたころに彼女を興味半分で追いかけたりしていたのですが、今は彼女のしていることが理解できます。

彼のもとに若者たちが集まり、打ち捨てられた建物で教会をはじめます。ところが、既成のカトリック教会は彼らを認めようとしません。すべてを神に帰して私有財産を否定する彼らは、欲に目がくらんで私腹を肥やしている司教たちにとっては大変に目障りな存在なのです。司教たちはフランチェスコたちに、カトリック教会への反逆であると警告するのですが、神への愛に目覚めてしまった若者たちはもちろん素直に聞き入れたりしません。そして、とうとう悲劇が起こります。フランチェスコたちの教会が焼き討ちされてしまうのです。教会を守ろうとした若者たちのあいだに死者まで出てしまいます。

神への愛を実現したいだけなのに、どうして迫害されなければならないのか。フランチェスコたちは答えを見つけるために、教皇に会いに行こうとします。もちろん、とても無謀なことです。当のカトリック教会に迫害されたのです。それでもフランチェスコは旅立ち、苦難を乗り越えてとうとう教皇に会うことに成功します。司教たちはフランチェスコを危険視して遠ざけようとしたり、あるいはそんな若者の戯言に教皇が耳を貸すはずがないと言って楽観視するのですが・・・

というわけで、はっきり言って宗教映画であります。キリスト教なんかに全然関心がない人にとってはつまんない映画かもしれない。ボクもはじめて見たときは、もろ宗教映画だなあって思っただけでした。でも、大人になってから見ると、全然違うんですよ。フランチェスコと、彼のもとに集まる若者たちの何と純粋なことか。それを見ていると、自分がどんなに純粋さを失ってしまったかを見せつけられ、若かったころの自分を思い出さされて、ものすごく切ない気持ちになるのです。過ぎ去った若い日々は二度と戻ってこないけど、過去には確かに今よりも純粋に生きようとした自分が存在したのだと思い知らされるのです。

また、この映画の紹介で、フランチェスコ会派の創生期の若者たちをまるで当時のヒッピーたちのように描いていると書いてあったのを読んで、なるほどと思いました。ボクはフラワーチルドレンの世代ではないし、ヒッピーたちのことはよく知らないのですが。既成の社会体制に疑問を投げかけて、精神性を求めた点では共通しているのかもしれませんね。

☆主題歌はドノヴァンというフォークシンガー。全編にわたって、美しい歌を披露しています。この主題曲も一度は聴く価値があります。公開当時は日本でもけっこう話題になったのですが、なぜかサントラだけは発売されなかった。






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