おすすめ映画


















































































白昼の決闘



DUEL IN THE SUN


1946年アメリカ映画
カラー 130分

監督 キング・ヴィダー
出演 ジェニファー・ジョーンズ ジョゼフ・コットン
グレゴリー・ペック ライオネル・バリモア
リリアン・ギッシュ ハーバート・マーシャル
ウォルター・ヒューストン
チャールズ・ビックフォード


1800年代後半のテキサス。大牧場を営むマキャンレスの家に、父親を亡くした遠縁の娘パールが引き取られてくる。パールの父とマキャンレスの妻ローラ・ベルはまたいとこで、パールの父はかつて愛したローラ・ベルにパールをレディとして教育してくれるように望んでいた。ネイティブの母と白人の父の間に生まれたパールは、愛に飢える情熱的な娘。マキャンレス家の2人の息子、真面目な弁護士の長男ジェシーと、野性的な次男のルートは、2人ともパールに惹かれて行く。保守的な当主のマキャンレスは、帝国とも言われる自分の領地を守ることに情熱を燃やす男。鉄道が通ることによって押し寄せてくる移民の波が我慢ならず鉄道建設を阻止しようとする。進歩的な考えを持つジェシーは、そんな父と対立する。一方父のお気に入りの弟のルートはパールにどんどん接近していく・・・。


「風と共に去りぬ」を製作した、ハリウッドで1、2を争う大プロデューサーのデビッド・O・セルズニックが西部劇の「風と共に去りぬ」を狙って作った超大作です。愛妻ジェニファー・ジョーンズが、情熱的なヒロインを熱演し、正直これはセルズニックによるジェニファーのための映画とも言えます。製作に何と2年を費やし、マキャンレスの大牧場やカウボーイの大集団、失踪する牛や馬。まさしくこれが西部劇だ!とばかりに、テクニカラーの世界で広くて強い西部を描いていきます。と同時に、老マキャンレスが象徴する古い西部と、鉄道が象徴する新しい時代の波との対決の物語でもあります。遙か地平線に沈み行く真っ赤な夕陽が、マキャンレス帝国の行き先を象徴するかのようで印象に残ります。

ジェニファー・ジョーンズは、「慕情」などのたおやかな淑女の印象が強いかもしれませんが、情熱的で奔放な女性を演じさせたらピカ一の実力派なんですね。今回も情熱のままに生きるパールを大熱演。じゃじゃ馬ながら愛を求める心が人一倍強いパールは、元々女性の少ない地にいる男性たちの目にはあまりにも新鮮だったでしょうね。

このパールを巡って確執を繰り広げる兄弟が、ジョゼフ・コットンとグレゴリー・ペック。真面目で誠実で進歩的、弁護士というお堅い職業を持つ長男のジェシー。最初出会った時から親切だったこのジェシーにパールは温かい愛情を感じて慕い続けます。一方の弟のルートは、西部で育ったやんちゃ息子そのまま。父親に甘やかされたこともあって欲しいものは何でも手に入れなければ気がすまない男性です。女性への態度もとても紳士的とは思えない・・・。あのグレゴリー・ペックが若い頃とはいえ、こんな役を演じていたわけです。彼にしては珍しい悪役として語り継がれています。しかし、このルートもただの悪役とはとても言い切れないんですね。確かに紳士で優等生の兄に比べてとんでもない男なんですが、どこか可愛い。後半どんどん堕ちていきますが、前半の芸を仕込んだ馬と遊んでいるところや、何とまあ、木の下でギターをつまびいて歌っている!(このシーンが何度も出てきます)ところなど、とても可愛いです。まあ、グレゴリー・ペック=真面目な紳士像を抱いている大抵の方はこの映画の彼を見たら仰天されること請け合いですが。ちなみにペック殿は勿論のこと、コットンさんも好きな私としては両者の間で心揺れるジェニファーの気持ちがわかってしまいます(笑)。

脇役もすごく豪華で、生きている映画史のオンパレードみたい。マキャンレス大老にはライオネル・バリモア。まあ何とも頑固爺さんが良くお似合いで、しかし人生の機微をも見せてくれるさすが演技派です。その妻でたおやかな淑女ローラ・ベル役のリリアン・ギッシュがまた何とも良いですね。サイレント映画の名花と言われた彼女もこの時50過ぎかな?でもまだまだ凄く可愛い。病気で長い髪を下ろして苦しんでいる様など、サイレント時代の彼女の持ち役だった薄幸の美少女を思いだしてしまうわけです。「散り行く花」とかね。それに、ジェニファーに恋するチャールズ・ビックフォード(後に今度は彼が「大いなる西部」で頑固な牧場主を演じるわけです)や、ちょっと信じて良いのかな?と思わせる伝道師のウォルター・ヒューストン(ジョン・ヒューストンのお父さん)などそうそうたる顔ぶれが揃っています。

西部劇はこういう風に作るんだ!という昔の西部劇の教科書のような作品でもあります。有名な岩場のラストシーンがひたすら心に残ります。あまりに壮絶なラストに声を失いました。初めてこの映画を見たときは吹き替えで、城達也の声が今も耳に響くようです。「パール、こっちに来い。もう少しだ、パール・・・」。涙・・・。


☆何故か好んでグレゴリーさんがつけているグリーンのカウボーイスカーフ、似合ってない(笑)。フリンジ付きの皮のジャケットは格好良いのにすぐ脱いでしまう・・・。






(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved