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エバーラスティング 時をさまようタック


UCK EVERLASTING

2002年アメリカ映画 ウォルトディズニー
カラー 90分
 
監督 ジェイ・ラッセル
出演 アレクシス・ブレデル ジョナサン・ジャクソン
ウィリアム・ハート シシー・スペーシク
 スコット・ベアストー ベン・キングズレー
   エイミー・アーヴィング ヴィクター・ガーバー


財産家のフォスター家の一人娘ウィニーは、元来お転婆なのだが母の厳しい躾にしめつけられ、やや息が詰まるような日々を送っていた。ある時、自分の家の土地である森の中で泉の水を飲んでいた青年ジェシーと出会う。ジェシーは泉の存在をウィニーに知られたことで何故か狼狽し、彼女を自分の家に連れ去ってしまう。ジェシーの家、タック家には父親のアンガス、母親のメイ、兄のマイルズがいた。実はタック家は、泉の水を飲んだことで不老不死になった家族だった。いつしか、タック家の和やかな生活に馴染んでいくウィニー。しかし、ウィニーが誘拐されたと思いこんだフォスター家では捜索隊を出す大騒ぎ。さらに、泉の在処を探す謎の男も出現して・・・。


不老不死は、人間の究極の望みの一つと言えるかもしれません。これは、誰も知らない森の中にある泉の水を飲んだことにより不老不死になったタック家の4人家族(と馬)の時を超えた生活と、彼らに出会って生活の楽しさを見出すお金持ちの少女ウィニーの物語です。タック家が泉の水を飲んだのは19世紀の西部開拓の時代。新しい生活を求めて西部に赴こうとしたタック家一同(と馬)は、泉の水を飲み意気揚々と西への旅に出ます。しかし、段々自分たちの変調、いや寧ろ全然自分たちが変わらないことに気付くのです。病気もしない、怪我もしない、年を取らない、そして死なない。それは全て不思議な泉の水の作用でした。永遠の命と若さ(これは息子たちに言えることかな)を手に入れたタック一家はそれから長い年月を変わらぬままの姿で生き続けます。しかし、全然変わらない自分たちをやがて世間の目から隠す必要が生じてきて、故郷の家、あの泉の側でひっそりとした生活を送るようになっていくのです。時は既に20世紀。しかし、彼らの姿は西部に出掛けた時そのままでした。そんな、ある意味では変わりばえのしない生活の中に飛び込んできた少女ウィニー。お金持ちで世間知らずのお嬢さんだった彼女は、意外にもしっくりとタック一家の生活に馴染んで、次男のジェシーと恋に落ちてしまうのでした。しかしながら、ウィニーの家では彼女が誘拐されたものと勘違いして大捜索隊を出しますし、いかにも胡散臭げな謎の男も登場して、物語はややこしくなってくるのです。

この映画は日本未公開だそうですが、このキャストの豪華さを考えても大変勿体ない。ウィニーとジェシーを演じるアレクシス・ブレデルとジョナサン・ジャクソンのコンビは、弾けるような若さで青春の楽しさを体現します。タック家の両親役のウィリアム・ハートとシシー・スペーシクは貫禄の演技。特にシシー・スペーシクは、ちょっと疲れたようなそれでいて強く優しい農夫の妻という役所が良く似合います。ちょっと斜に構えた長男役には「ロンサム・ダブ」でスターになったスコット・ベアストウ。ウィニーの両親役には最近売れているビクター・ガーバーとエイミー・アーヴィング。70〜80年代、若い純情な娘役を得意どころとしたあの可憐な、スピルバーグが「マイ・ワイフ、マイ・ワイフ♪」と夢中になった(結局別れたけれど)あのエイミー・アーヴィングです。何だか懐かしさいっぱいで胸がキュンとなってしまうのです。その彼女は、躾に厳しく凛とした笑わない奥様役。しかし、自分の母親が死に瀕する場面の無言の動作には思わず涙してしまうのです。そして、忘れてはならない謎の男役にベン・キングズレー。曲者大物役者が揃っています。

そして、この映画はとにかく画面が美しいのです。自然に囲まれた森や川が舞台ということもあるでしょう。緑がとにかく画面に映えて、草原の緑、渇いた西部の風景さえも何故か美しい。そしてアーリーアメリカン調たっぷりのお屋敷風景や、白いドレス姿など、乙女心をくすぐる光景が次々と出てきます。

しかし、この映画のテーマは何と言っても不老不死。病気もしない。怪我もしない。殺されても死なない。年も取らない。死は勿論、病気や怪我による肉体的な痛みにも無縁なんて、何とも羨ましい話なのですが、それを永遠に続けるとなると・・・。長男のマイルズが語る自分の過去の話が、最もこのテーマを象徴していると思います。何とも切ない話です。

ネタバレになってしまうのでこれ以上書けないのが、何とも辛いのですが、とにかくジーンとくる話であり、ところどころ笑える話であり、素敵な話であり、時を超えた愛の物語です。絶対、泣けるのでティッシュは必須。未公開なんて勿体ない限りなのですが、ビデオ、DVD全盛時代の今なので入手が容易なのが嬉しいですね。ファンタジーが嫌いでなくて、アーリーアメリカンが好きで、ちょっと哲学的に人生を考えることが嫌いではなくて、感動する話が好きな方は見て損はないと思います。


☆殺されても死なない・・・つまり、だから・・・これ以上言えない。






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