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男と女



UN HOMME ET UNE FEMME


1966年フランス映画 104分

監督  クロード・ルルーシュ

出演  アヌーク・エーメ ジャン=ルイ・トランティニャン
ピエール・バルー ヴァレリー・ラグランジェ


♪ダバダバダ〜の音楽があまりに有名な愛の名作です。
子供が同じ寄宿舎に通うことから知り合った中年の男女、アンヌとジャン。いつしか一緒に休みの日には子供の寄宿舎に面会に行くようになり、共に楽しい時を過ごすようになります。そして、二人の間にはほのかな愛が芽生えます。でも、二人には悲惨な過去がありました。アンヌは深く愛していたスタントマンの夫を撮影中の事故で亡くし、ジャンは自分の怪我が原因で妻が自殺してしまいます。二人は惹かれながらもその過去を振り切れません。共にかつての夫であり、妻であった人を深く愛していたからなおさらです。それでも逢う瀬をやめられない二人。哀しみを知り、人生を知り抜いた男女の揺れる愛の物語を、名匠クロード・ルルーシュが優れた映像で語る傑作です。


この映画を思い出すのにやっぱり一番に出てくるのはやっぱりあの「♪ダバダバダ〜ダバダバダ〜ダバダ〜ダバダバダ〜ダバダバダ〜」のフランシス・レイの名曲ですね。実におしゃれで素晴らしい。

そして主演二人の魅力も大きいでしょう。アヌーク・エーメは好きな女優さんです。あの知的な美貌。陰があって、どこか神秘的。過去を引きずるこの役は彼女にとっては、一世一代の当たり役の一つでしょう。愛の表現も静かで、手の動きや相手に捧げるまなざしで、その心を表現できるうまさを持った人です。「良い女」って彼女みたいな人のことを言うんだろうなと思います。男性から見てどうかしらないけれど、女性から見て「良い女」。

対するジャン=ルイ・トランティニャンもフランスを代表する俳優さんです。とびきりのハンサムというわけではないし、派手さもなくてむしろ地味な俳優さんなんですが、そこがこの映画のあまり多くを語らない寡黙なカーレーサーという役にぴったりでした。しつこくもなく、でもうちに秘める愛情の激しさ。

ジャンがモンテカルロラリーで優勝して、パーティを抜け出してアンヌのところにレースに出た車のまま夜通し走るところもしびれました。そこに被さるジャンの独白。アンヌを探してあちらこちらへ。そして、子供たちの寄宿舎のあるドービルの海岸で遊ぶアンヌたちを遂に見つけ、クラクションを鳴らして到着を告げ、走り寄るアヌーク・エーメを抱きしめてぐるぐる回るシーン。ここは、この映画の最高のシーンの一つであり、絶対忘れられないシーンです。そこに例の「♪ダバダバダ〜」が重なって、思わず胸がジーンと来ます。

二人が共に深い孤独を感じながらも、新しい愛に踏み切れない理由はわかりすぎるほどわかってしまいます。二人とも最愛の配偶者を亡くした理由があまりに悲惨すぎて、さよならを言う暇もなく、何も精算できないままその後の人生を送ってしまったのでしょう。
共に傷ついた同士だから、今度こそその傷を埋め合う愛を見つけたのに、でもやっぱり完全には踏み切れない。そんな二人のやるせなさと過去の幸せなシーンが、次から次へとフラッシュバックで出てきて、またカラーとモノクロの見事な融合にも目を見張ります。

そしてラストシーン。やっぱりカーレーサーだからか、走る宿命(?)のジャン。最後は見てのお楽しみです。

これはハリウッドでは作れない映画だと思います。フランス映画ならではのおしゃれ感覚と繊細なディテールを楽しむ映画です。

ちなみにその後20年後の「男と女」も作られました。


☆ジャン=ルイ・トランティニャンがアヌーク・エーメの元に走る道すがら、髭をそり始めるのは可愛いですね。片手運転は危ないから、現実には困るけれど、これも男心なのかな?






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