おすすめ映画
































































禁じられた遊び



JEUX INTERDITS
1952年 フランス映画 87分 白黒

監督 ルネ・クレマン

出演 ブリジット・フォセー ジョルジュ・プージュリー
シュザンヌ・クールタル ジャック・マラン


第2次大戦下のフランス。機銃掃射で両親を失った5歳の少女ポーレットは、さまよい歩いているうちに少年ミシェルと出逢い、彼の家で暮らすようになる。やがて二人は死んだ子犬のお墓を作ったことから、次々にお墓作りに精を出すようになる・・・。と言っても、カルトな危ない映画ではなく、痛烈な反戦映画です。

この映画を初めて見たのは小学校3年生の時でした。映画にはまるきっかけを作った作品です。まず一番に思い出すのはナルシソ・イエペスの魂をえぐるような痛切なギターの調べ。ほら、聞こえてきたでしょう。もう涙が・・・。

最初の機銃掃射の場面から度肝を抜きます。今の派手で生々しい戦争アクションを見慣れていると、画面も白黒だし地味なシーンでしょうが、派手な血しぶきはなくても静かに淡々と、でも大きなショックを持って死を描くことは出来るのです。生き残ったポーレットが小さすぎて、親の死を理解出来ないところがまた悲しいのでした。

そして出逢った少年ミシェル。すっかり彼女の小さな保護者になって、無理解な家族からも彼女を守ろうと必死になる様は心から応援してしまいます。

二人がせっせとお墓を作る様は見ていて切なくなります。親の死さえ理解出来なかったポーレットですから、小動物の死を理解しているわけではないのですが、土に葬って十字架を立てるその行為を神聖な遊びとして受け止めています。でも大人から見ればそれは誰もが顔をしかめる禁じられた遊び。でも、本当の禁じられた遊びは戦争そのものなのですよね。

主役のポーレットちゃんを演じたブリジット・フォセーはその後「さらば友よ」で、成長した姿を見せ、それから順調に女優業を続けています。きれいなたなびく金髪は昔のままで、「レジスタンス」「クインテット」またテレビドラマの「プロバンスの秘密」にも主演してフランスを代表する女優の1人となりました。ミシェル役のジョルジュ・プージュリーは、「死刑台のエレベーター」でやはり成長した姿を見せましたが、その後は声優活動などをしていたようです。惜しくも昨年亡くなりました。まだまだ若いのにね。

駅の雑踏の中のあのラスト・・・。言いたくて言えないあのラストは映画史上に残る名ラストシーンの一つであることを断言します。ポーレットに幸あれ、と祈るしかない最後。

戦争映画は数々ありますが、その国が戦争でどういった立場にいたかで、やはり映画のカラーも変わってくるように思います。常に戦勝国であるアメリカの、その強さをアピールする映画。対照的に負けたイタリアの復興途上のやりきれない暗さ。戦勝国でありながら国土を軍靴で踏みにじられて、それでも誇りを失わないフランスの作った戦争映画は、庶民を描きながらも文学の薫り高く哲学性も高く、だけど哀切で涙腺を思いっきり刺激するこの映画が最高峰でしょう。

☆すっかり中年女性になったブリジット・フォセーを見るたびに「ポーレットちゃん」と呟いてしまう私・・・。






(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved