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野のユリ



LILIES OF THE FIELD

1963年アメリカ映画 UA
白黒 94分

監督 ラルフ・ネルソン
出演 シドニー・ポワティエ リリア・スカラ
        リサ・マン アイサ・クリノ パメラ・ブランチ


流れ者の青年ホーマー・スミスが荒野のど真ん中で出逢ったのは5人の修道女。彼女たちはドイツやオーストリア、ハンガリーなどから来た修道女で、英語はマザー・マリアをのぞいて話せない。ホーマーの出現を神からの授かり物と勘違いする修道女たち。一方のホーマーは、手間賃欲しさに雑用をする約束をする。いざ一緒に暮らしてみると、食事は粗食そのもの。修道女たちは、ホーマーのことをドイツ風にホメール・シュミットなどと呼ぶ。そして、ホーマーに課せられた仕事は何と荒野のど真ん中に教会を建てること!渋々仕事をし出したホーマーだったが・・・。


何故かアメリカの荒野のど真ん中に暮らしている修道女5人というのもびっくりする設定です。そこに流れてきた青年ホーマーは、手間賃が欲しくて仕事をすることに同意したのに、お給料は貰えず、食事も粗末そのもの。リーダーのマザー・マリアは厳しくてかなり図々しい(笑)。お給料を貰わなくては食べて行けないというホーマーを、聖書の引用を使ってやりこめてしまうやり手でもあります。気がついたらホーマーは、ミサへと向かう彼女たちを送る運転手の役目までさせられていたのでした。ホーマーが英語のわからない修道女たちに英語を教える場面もとてもユーモラス。全編、悪意のないユーモアが貫かれた素敵な物語なのです。

修道女たちが聖歌を歌っているところに居合わせたホーマーが、「何か歌って」と言われ歌い出すのが「エーメン」。修道女たちも「♪エーメン、エーメン〜」とハモりだして、最初は仏頂面をしていたマザー・マリアも思わず口ずさみ始めます。この映画を初めて見たのは中学生の時だったと思うのですが、この「エーメン」は忘れられなくて、その後もしばしば口ずさんだものです。黒人霊歌だという「エーメン」は思わず手を打ち鳴らし、身体を弾ませて唄いたくなるような楽しい歌なのです。

主演のシドニー・ポワティエはいつもの優等生的イメージとは違って、ユーモラスな役を楽しそうに演じています。この作品で、アカデミー主演男優賞を始め、ゴールデングローブ賞、ベルリン国際映画祭の男優賞などを総なめにしました。彼のオスカーは、黒人としては初めての主演賞でした。

何だかんだと文句を言っていたのに、他のところで働き収入を得ながら、結局は教会建設を始めてしまうホーマーのお人好しさ。それでも感謝のかけらも示さない厳しいマザー・マリアと対決して、とうとうホーマーは出ていってしまいます。果たして教会建設の夢は叶うのでしょうか?

祈れば何でも与えられると信じているやや浮世離れした修道女たちと、現代青年ホーマーの駆け引きは痛快で、ホロッとくる感動もあって、とても素敵な作品です。見終わった後には、絶対貴方も唄い出すに違いありません。「♪エ〜メン、エ〜メン、エ〜メンエ〜メンエ〜メン」。


☆祈るのが仕事の修道女たちと違い、ホーマーの祈りは至極シンプルです。「どうぞ肉を食べさせてください」・・・。確かに肉体労働を支える食事としてはあまりに質素だったのでした。






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