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地下室のメロディー



LA MELODIE EN SOUS-SOL

1963年フランス映画
       白黒 121分
 
監督 アンリ・ベルヌイユ
出演 ジャン・ギャバン アラン・ドロン
           ヴィヴィアーヌ・ロマンス モーリス・ビロー
   ジャン・カルメ


5年の刑を務め出所したシャルルは妻の元へ帰る。年を重ねたシャルルを前にして、妻は逮捕される前に手にしたお金を元に安定した生活をしたいと言うが、シャルルは未だ一発大きなヤマを当てたいという望みを捨てられない。刑務所で知り合った若いフランシスを誘ってシャルルは、リビエラのカジノのお金を強奪する計画を立てる。そして、二人とも紳士に変装して乗り込むが・・・。


年をとった老ギャングが出所して見る街並みはすっかり変わっていました。「まるでニューヨークだ」。シャルルはボソリとつぶやきます。家の周りも変わってしまって探し当ててやっと着いた我が家。迎えてくれた妻は最初よそよそしく見えますが、「会えて嬉しい」と長年連れ添った妻ならではの静かな愛をほとばしらせて感動を誘います。いつの間にか年を重ねた二人は、もう老後を考える年が近づいています。妻は南仏に小さなホテルを買って経営しようと言いますが、シャルルは服役中から立てていた大きな現金強奪計画を最後の賭けとばかり実行するのです。しかし、かつての相棒は病気ですっかり弱ってしまっていました。シャルルが抜擢したのは若くてハンサムで向こう見ずなフランシス。彼の義理の兄も誘って3人はリビエラのカジノにある大金を強奪しようとするのです。まずは、フランシスをお金持ちの若紳士に仕立てあげて高級ホテルへ送り込み、人脈を作り、経路をチェックし、色々な下準備をさせます。高級ホテルに長逗留で舞い上がってしまいそうなフランシスに、「荷物は自分で運ぶな」「プールを見て喜ぶな。2歳の時から乳母と一緒に行っていた気になれ」などシャルルがアドバイスをするところが面白いですね。

最初の不良青年から、すっかりドレスアップして高級ホテルの豪華な雰囲気にピッタリはまってしまうあたりはさすがのドロン。ハンサムぶりにも油がのった頃です。女性とのアバンチュールも楽しみ、カジノにお酒、プール。でも、その裏では通風口を必死にたどってカジノの下見をしたり一応努力もしてます(笑)。何と言っても大参謀のジャン・ギャバン。寡黙でどっしりした落ち着きはさすがの貫禄。ドロンとは何度も共演していますが、これは初期の頃の一本。若いドロンに物を教え、軽々しい言動を叱咤し、これぞ年長者の貫禄!と溜息が出るような渋い演技を見せています。この映画は、やっぱりジャン・ギャバンの勝ちかな。

シャルルの妻が、「30年連れ添ったうちの8年は貴男は刑務所だった」と言って、安定した幸せな生活を願う様子は胸を打たれます。刑務所に面会には行かなかった彼女だけれど、シャルルの服も元の通り保存し続け、彼の好きな食べ物や飲み物を用意して、やっぱり彼を愛し続けている様子が手に取るようにわかるだけに余計辛い。しかし、シャルルは最後の大一番の勝負に出ようとします。大金を手に入れたらキャンベラに行って、誰も知らないところで犯罪者という陰口を言われることもなく出直そうと・・・。何だかんだ言っても、一旗揚げる夢から脱せられない男性と、堅実な生活を望む女性の姿は、時代を超えて万国共通なのですね・・・。

お金、お金の世の中で、運転手として協力するフランシスの義兄が「分け前はいらない。お金はいつかなくなってしまってまた欲しくなる。そうして次の誘いに乗っているうちにいつか刑務所行きだ。(ホテルに泊まって)何もしなくて良い日々が送れただけで満足だ。このままでは今まで食べていた物では満足出来なくなる。お金が入ると、今までの暮らしでは満足出来なくなるに違いないんだ」と言い出すシーンはしみじみ考えさせられます。そう、お金ってなくては困るけれど、一度その力を知ってしまったら逃れられない魔力なんですね。

全編に流れるジャズ音楽がまた格好良い!まさしく、フレンチフィルムノワールの代表的一本です。あっというラストも何とも凄い。渋いギャバンと甘くてハンサムなドロンと、全然違うキャラクターなのに素敵なコンビです。


☆このホテルの長期逗留で一体いくらお金を使ったんだろう。






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