狩人の夜
THE NIGHT OF THE HUNTER
1955年アメリカ映画
白黒 93分
監督 チャールズ・ロートン
出演 ロバート・ミッチャム リリアン・ギッシュ
シェリー・ウィンタース ジェームズ・グリーソン
ピーター・グレイブス ビリー・チャピン
サリー・ジェーン・ブルース
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刑務所で同房だったある死刑囚から、彼が手に入れた1万ドルのことを聞いたハリーは、出所すると福音伝道師に化けて、死刑囚の未亡人と子どもたちに近づく。息子のジョンは、お金の在処を絶対誰にも言わないことと妹のパールを守ることを父親に誓っていた。ハリーはまんまと未亡人と結婚し、ことあるごとに子どもたちにお金の在処を聞き出そうとする。そしてある夜、ジョンは危機一髪のところをパールと逃げだし、小さなボートに乗って放浪する。やがて、身寄りのない子どもたちの面倒をみているクーパー夫人の元に引き取られつかの間の安らぎを得るが、ハリーの魔の手はそこまで迫っていた・・・。
名優チャールズ・ロートンの最初にして最後の監督作で、傑作の誉れ高い作品です。ロバート・ミッチャム演じるハリーは、いともたやすく殺人を犯してしまう男で、今までにも何度も未亡人を襲っては生活の糧にしてきた男です。そんな彼が、軽犯罪で入った刑務所で知った死刑囚の秘密。死刑囚が奪ってどこかに隠した1万ドルの話を聞きます。ハリーがそれを放っておくはずもない。出所した彼は、いかにも敬虔で人の良い伝道師に化けて言葉巧みに未亡人の元に近づくのです。夫を亡くして頼りを失った未亡人の心をつかむのはお安いご用。しかし、父にお金の在処は絶対誰にも言わないと誓った息子のジョンだけはハリーの企みを見抜き、ハリーに徹底抗戦するのでした。
ロバート・ミッチャムの悪役は珍しいものではありませんが、この映画の彼はとにかく不気味。ジョンたちの部屋に影となって浮かぶところの演出などゴシックホラーの趣です。良い人のふりをして街の人の心を巧みにつかみつつ、家ではひたすら子どもたちにお金の場所をあの手この手で聞こうとする悪辣ぶり。しかしジョンも子どもながら芯の強い子で妹を守りながら、ハリーの手をひたすら逃れようとするところは心を打たれます。やがて、ジョンたちが身を寄せたクーパー夫人の家。ここでは、身寄りのない子どもたちが一緒に暮らしていました。そこにごく自然にジョンたちは受け入れられます。しかしハリーは遂にジョンたちの居場所を突き止めるのです。クーパー夫人を演じるのはサイレントの名花リリアン・ギッシュ。銃を手にハリーに闘いを挑む気丈さがとにかく素晴らしい。子どもたちへの愛情もとても豊かで、一番上のルーシーが街で男の人と遊んでいたという告白を聞いて、怒るかわりに「そんなにも愛を求めているのね」とルーシーを抱きしめるところなどジーンと来てしまいます。
ジョンたちの父親には、後に「スパイ大作戦」でブレイクするピーター・グレイブス。この頃はまだ悪役が多かったんですね。その妻にシェリー・ウィンタース。まるで「陽のあたる場所」を彷彿とさせるような、男を頼り信じて悲劇に巻き込まれる様が何とも哀れです。
これは確かにミステリーであり、ホラーとも言えるのですが、どこかファンタジーの味わいもあり、リリアン・ギッシュが読み上げる聖書の話との関連も何とも言えません。おまけにリリアン・ギッシュの住んでいる家はおとぎ話の味わいがあって、そこに雪の降るシーンの美しさ。思いっきり悪役のロバート・ミッチャムも、やたら大げさに大声挙げたりしてちょっと笑えるところもあるのですね。是非見ておきたいサスペンスの原型の一本だと思います。
☆クリスマスのシーンはとても素敵。特にジョンが考え出したプレゼントは何とも言えませんな。
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