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クリスマス・ツリー



L' ARBRE DE NOEL


1968年フランス映画
カラー  110分

監督 テレンス・ヤング

出演 ウィリアム・ホールデン ブルック・フラー
 ヴィルナ・リージ ブールビル


事業で成功を収めているローランは、10歳の息子パスカルが夏休みに帰省した折りにコルシカ島のキャンプに出かけます。ボートで海に繰り出した時、戦闘機が爆発炎上するのを二人は目撃します。実はその戦闘機には原爆が積み込まれていたのでした。ちょうど爆発の時、海に潜っていた父ローランは事なきを得ますが、息子のパスカルは放射能を浴び、白血病にかかってしまいます。余命半年の宣告を受け、二人は田舎の別荘に移って、パスカルに思い切り幸せな半年を過ごさせることにします。望むものは全て買ってもらえるパスカル。しかし、彼にはもう一つ欲しいものがあったのでした。動物園で見て以来、夢中になった狼です。パスカルの願いを叶えるため、ローランとパスカルの仲良しのベルダンは狼を買おうとしますがうまくいかず、遂に動物園に忍び込んで狼を2頭盗み出してしまうのです。


子供の頃、クリスマスになるとよく放映されていた思い出の映画です。
不治の病ものはよくあるけれど、この映画はその病気が放射能によってもたらされたものだということを明確にしている点が新しく、反戦への訴えをこういう形で現した映画とも言えるでしょう。時は冷戦時代でしたし。

余命半年の宣告を受けた時何をしたいか?やっぱり愛する人と好きなことをして楽しく暮らすのが一番でしょう。やりたいことはすべてやって、悔いの残らないように。父は息子に、そんな半年を与えようとします。
息子はトラクターを買ってもらったり、恵まれた生活の中で、それほど物への執着もなく、自然と、愛する父や友人のベルダン(友人と言ってもかなりの年輩ですが)と楽しい日々を過ごします。この田舎の別荘、別荘といってもずばりお城で、所有者の父親曰く部屋数を数えたことがないという豪邸なんですね。こんな親だから、少なくともパスカルは物質的には恵まれた生活を送り続けます。

でも、パスカルは愛されるだけでなく、自分から愛する対象も欲しかったのでしょうか。動物園で狼を見た時から、すっかり狼好きになり、父親たちは狼を購入しようと東奔西走。でも良い狼がいなくてとうとう動物園から盗んできてしまいます。勿論、これは手が後ろに回る立派な犯罪行為なんですが、「子供を原爆で白血病にするのは犯罪ではないのか」と父親は言い放ちます。

こうして盗んできた狼をアダムとイブと名付け、パスカルは徐々に親しくなっていきます。狼は孤高の動物と聞きます。群れで狩りをすることはあるけれど、本来は孤独を愛する動物だと。パスカルは愛する人に囲まれているけれど、死は一人で迎えなければならない。こればかりは誰とも共有出来ない孤独さを狼の中に見いだしたのでしょうか。

父親の友人なのか、屋敷の使用人なのか、イマイチ仕事ははっきりしませんが、ベルダン役のブールビルが良かったです。フランス映画ではコメディなどで活躍していたベテラン。パスカルの友人というにはずいぶん年がいっていますが、まるっきり彼と同じ視点で楽しめる心を持った人なんですね。パスカルも彼の存在にはずいぶん勇気づけられていたみたいです。

少年、不治の病、そして動物との愛情。この3点が揃ったら泣くしかありません。自分たちで切り倒して、きれいに飾り付けたクリスマス・ツリーが涙をそそります。そして最後の狼の遠吠えがずっと耳に残ってなりません。


☆狼の匂いをかぎつけたために、暴れて逃げ出した馬の末路が可哀想でした・・・。






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