おすすめ映画













































































点子ちゃんとアントン



PUNKTCHEN UND ANTON

1999年ドイツ映画
カラー 108分

監督 カロリーヌ・リンク
出演 エレア・ガイスラー マックス・フェルダー
ユリアーネ・ケーラー アウグスト・ツィルナー
メーレト・ベッカー シルヴィー・テステュー
グードルーン・オクラス


お父さんが有名な外科医の点子ちゃんは裕福な家の子供で、恵まれた生活を送っていました。フランス人家庭教師のロランスと優しい家政婦さんのベルタとの生活も楽しいものでした。ただ、お母さんはいつも恵まれない子供のために、と言ってアフリカだどこだと出張ばかりで淋しい気持ちをこらえていたのです。点子ちゃんの親友のアントンは、優等生ですがお母さんが病気で働けないために代わりにアイスクリーム屋でバイトをしています。お母さんと二人だけのアントンは、他に頼る人がいないのです。しかし、亡くなったと思っていたお父さんが生きていたことを知ったアントンは・・・。


裕福な点子ちゃんの生活は何かと恵まれています。家も広いし、家庭教師や家政婦さんとも仲良しだし。ただ、肝心のお父さんとお母さんが忙しくて外出がちなのが不満。特にお母さんは、ボランティアで恵まれない子供たちのために世界を駆け回る生活です。たまに送られてくるビデオレターがお母さんの近況を知る手だて。やっと帰ってきたと思ったら、お母さんは次から次へとパーティ漬けの生活です。点子ちゃんの親友のアントンは、お母さんと二人だけの生活でそのお母さんも病気で働けないために生活に困ってお母さんの勤め先で内緒でバイトをする日々です。でも、お母さんに愛されて気持ちは満ち足りています。ただ、お金さえあれば・・・。もしお金があれば病気のお母さんを海辺で静養させてあげることが出来るのです。お金はあるけれど家族の愛が不足している点子ちゃんと、愛は満ち足りているけれど生活の手段たるべきお金に困るアントン。対照的な二人がお互いを助け合い、友情を育んでいく物語です。

点子ちゃんは元気いっぱいの女の子。淋しい気持ちはそっと心にしまい込んで、仕方ないやと家庭ではあきらめて生きている様子がちょっと悲しげです。救いは家庭教師のロランスや家政婦のベルタがいつも点子ちゃんの味方で、点子ちゃんが怒られてしょげていると部屋にやってきて歌って踊って点子ちゃんを慰めてくれるところでしょうか。例え親ではなくても、このように愛して見守ってくれる大人がいるから点子ちゃんは心優しい子に育っていったのでしょうね。

点子ちゃんのお父さんは、外科医でとても忙しい日々。それでも点子ちゃんのことを一生懸命気にかけてくれようとしています。それに反してお母さんは、文字通り世界を飛び回る生活。アフリカの恵まれない子供たちのためと言って、現地でボランティアをしています。たまに帰ってくると、点子ちゃんに「貴女は何でも与えられていて、学校にも行けて本当に恵まれているわ。何の文句があるの?」とお説教。物質的には確かに恵まれているものの、そんな風に比べられては点子ちゃんもあまりに辛いですよね。そして、すぐ近くにいる恵まれない少年アントンには、このお母さんは冷たくしてしまうのです。皮肉ですね。

アントンのお母さんは愛情深い人ですが、体が弱くて働けない。だからアントンは代わりに頑張るのです。でも、アントンは卑屈にならない(まあちょっとした事件はありますが)少年です。悪いことをしたら、お母さんが愛を込めて怒ってくれる。どんな状況にあっても悪いことと良いことの区別をしっかりつけて欲しいというお母さんの願いがこもっています。

原作は有名なケストナーの作品。この映画は舞台を現代に置き換えているために、とても見やすく受け入れやすくなっています。点子ちゃんも可愛くて健気で、しかし決して我慢しているだけでなくて自己主張をキチンとする子です。点子ちゃんのお父さんやお母さんの性格も丁寧に描かれています。他にも、家政婦さんのベルタや家庭教師のロランス、アントン親子やアイスクリーム屋さんの店主さんなど、登場人物に注ぐ目が優しいのがとても快いのです。

駅で歌い踊る点子ちゃんや、ロランスとベルタの楽しいコンビはとにかく楽しいのです。ミュージカルかと思うような楽しい歌と踊りのシーンも満載で、笑って笑ってホロリと出来る本当に良い映画です。子供映画と思わず、大人こそ見て欲しい、そして大人が鑑賞するに十分に足るだけの良質な出来映えでした。ベルタが映画館に行って見ようとした映画が「エミールと探偵たち」だったり思わず笑ってしまう場面も心憎く挟まれているのでした。


☆アントンが乗り入れてしまった畑の賠償をするって言ってたけれど、きっと大変な額でしょう?どうしたんだろう。






(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved