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ショウ・ボート



SHOW BOAT


1951年アメリカ映画  MGM
カラー  113分  

監督 ジョージ・シドニー

出演 キャスリン・グレイソン ハワード・キール
エヴァ・ガードナー
ジョー・E・ブラウン アグネス・ムーアヘッド
マージ&ガワー・チャンピオン


ミシシッピー川に浮かぶショウ・ボートでは今日も派手やかなショウが繰り広げられていた。ショウ・ボートが寄港する地には人々が夢を求めて殺到する。一座の花形女優はジュリーだった。夫のスティーブンと共に主役を張り、その輝くばかりの美貌で観衆を魅了していた。ショウ・ボートの座長夫妻の娘マグノリアはジュリーと仲が良く彼女に憧れていた。そんな時、ショウ・ボートの一座に仲間入りしたのがギャンブラーのゲイロード。マグノリアとゲイロードは恋に落ち、親の反対を押し切って船を下りる。華やかな楽しい暮らしも束の間、経済的に困窮したゲイロードは、妻マグノリアを置いて去ってしまう。困ったマグノリアは持ち前の美しい歌声で歌手の仕事を得ようとオーディションを受ける。その声を舞台裏で聞いていたのはジュリー。黒人の血を血を引くことがわかり無理矢理ショウ・ボートから降ろされてうらぶれた姿になったジュリーだった・・・。


高校生の時に「ザッツ・エンタテインメント」で紹介されたこの映画のワンシーンを見てすっかりノックダウンされました。華やかなショウ・ボートと華やかな踊り。ウィリアム・ウォーフィールドが歌う「オールマンリバー」の重厚で感動的なメロディ。そして、エヴァさんの投げキッス・・・。「見たい!この映画をいつか見るまでは絶対に死なない!」と誓ったものです(笑)。でも、そのチャンスは案外早く訪れて、その2、3年後にはCM入りで1時間半の映画放送枠という相当な短縮版ではあったけれど(昔はこれでも見られるだけで幸せだったんですよね。今ではこれでは我慢出来ないけれど)、テレビで放映されて、更にそのしばらく後には劇場でのリバイバル公開を見る機会を得ました。普及してきたセルビデオも買ってしまいました。願いを達成して、また「これを見るまでは死ねない!」と思える映画を作らなくてはなあ、と思ったものでした。

さてさて、それぐらいたったワンシーンだけで私を魅了したこの映画。勿論本編も素晴らしかったです。とにかく、オープニングからして華やかそのものです。色とりどりの綺麗なドレスを着たお姉さんたちが、ボンボン(?)を持って「コットン・ブラッサム」を歌い踊ります。そして、花形として満場の拍手と共に登場するのがエヴァ・ガードナー。何ともゴージャスな美しさでした。元々、エヴァさんは好きな女優さんでしたが、この映画でさらに好きになりました。

一番忘れられないのはミュージカル史上に燦然と輝く名曲「オールマンリバー」です。ミシシッピー川の悠然とした流れを人生とオーバーラップさせて歌うこの歌。ウィリアム・ウォーフィールドの低音の魅力が光って、またこの歌が流れるシーンもエヴァ・ガードナーが船を降りなければならないシーンで、思いっきりジーンと来るのです。ジェローム・カーンとオスカー・ハマースタイン2世が組んだこのミュージカルは30年代からブロードウェイで大ヒットした作品で、これが3度目の映画化。他にも素敵な曲が山盛りですが、やはり「オールマンリバー」がピカイチであることは確かでしょう。この曲の素晴らしさはとにかく聞いてもらうしかありません。

座長夫妻の娘マグノリアはジュリーを姉のように慕っています。そこに舞い込んだギャンブラーのゲイロードと恋に落ち、周りが止めるのも聞かず2人だけの愛の世界へ。でも、運に左右されるギャンブラーの仕事はついている間はゴージャスな生活が堪能できますがツキが落ちたらそこまで。お金の切れ目が縁の切れ目とばかりに、ゲイロードは失踪してしまうのです。全く責任感のない困った男です。でも、演じているのがハワード・キールだから憎めないんだな、困ったことに(笑)。マグノリア役のキャスリン・グレイスンはMGMミュージカルの看板女優の1人で、それはそれは綺麗なソプラノで美しい歌を聴かせてくれます。ハワード・キールとの「メイク・ビリーブ」のデュエットなんて絶品。

エヴァ・ガードナーの演じるジュリー。この映画の中では実際のところ主役2人を完全に喰っています。さすがにその後の大スターの片鱗でしょうか。その美貌、華麗さは誰もかなうべくもないのですが、きれいなだけではなく女性の可愛さ、悲哀も良く現しています。ジュリーは黒人の血がほんの少し混じっていることがわかって、ショウ・ボートを追われることになります。当時の規則で黒人の血が混じる者はこういった職業に従事出来なかったのです。その時とった夫のスティーブンの行動が泣かせます。ジュリーの指と自分の指を少し切って、両者の血を混じり合わせ「これで僕にも黒人の血が流れている」と言うのです。そもそもは何故に黒人の血が流れているからといって差別されなければならないのか?という問題に行き着くのですが、それはこの2人の責任ではないので、ただただ妻と一緒の道を歩もうとした夫の姿には泣かされました。でも、こんなにジュリーを愛していた夫はその後どうなったのかはっきりわからないところが難点なんですけれどね。その後、船を降りてやがて酒場の歌手に身を落としていくジュリーのやつれた表情。物憂げに、でも愛する人への思いを込めて歌う「ビル」という歌。後半のうらぶれて美しさとは縁が遠くなっていくエヴァさんが全体から醸し出す哀愁が何とも言えなく味があります。そして、ラストの投げキッス・・・。思い出すだけで涙が・・・。

マグノリアの両親である座長夫婦も良い味出してます。座長のジョー・E・ブラウン。もう見るからに良い人。マグノリアに「笑顔だ、笑顔」っていつも言っていただけあって自ら笑顔を絶やさない本当に人の良い人。「お熱いのがお好き」でジャック・レモンに迫っていたお金持ちのラストで名言を言うおじさんと言えばご記憶にある方もいるでしょうか。
座長夫人のアグネス・ムーアヘッドは、お人好しの夫を叱咤激励するしっかり者で、ちょっと皮肉屋。この妻あってこその、のんびり屋の夫であることがとても納得出来ます。でも「A Happy New Year!(あの言い方を字では表現出来ないのが残念)」では笑ったな。

この映画を見て白い船体の外輪船に大変な憧れを抱いたものです。今でもミシシッピーでは外輪船が走っているらしいですが、さすがにミシシッピーまでは行けず、琵琶湖でも外輪船があるらしいと聞いていつか・・・と思いつつ実現出来ず、東京ディズニーランドのマーク・トウェイン号に遭遇した時は、狂気乱舞でしたね。あのお船に乗りながら、1人「オールマンリバー」を小さな声で歌ってデッキで風に吹かれていたものです。

美しい歌と踊りでミュージカルファンを堪能させてくれること間違いなし。但しラストに向けてハンカチのご用意も。





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