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スミス夫妻



MR. AND MRS. SMITH

1941年アメリカ映画 RKO
白黒  95分

監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 キャロル・ロンバード ロバート・モンゴメリー
ジーン・レイモンド ジャック・カーソン


アンとデビッドは、些細なことで喧嘩を繰り返すかなりお騒がせの夫婦だが、本来は仲が良かった。しかし、ある日自分たちが結婚式を挙げた街の手違いで結婚が法的には正式ではないことを知らされる。それを知ったアンは再びデビッドからプロポーズされるのを待つが、デビッドの方はニヤニヤとどこか煮え切らない態度。怒ったアンは開き直って独身生活を謳歌し、デビッドの仕事のパートナーのジェフと親しくなるが・・・。


あのアルフレッド・ヒッチコックの映画ですが、これはサスペンスはなく純粋なコメディという実に珍しい映画です。30年代、40年代に顕著だった男女の感情のすれ違いを描くとても洒落たコメディに仕上がっているのに驚き。それでいて、冒頭に代表されるように、「何をしているんだろう」「どんな状況なんだろう」とミステリアスに引っ張っていく描写はやっぱりヒッチコックです。

アンとデビッドは相当お騒がせな夫婦であることは確か。結婚するときに、夫婦喧嘩をしたら仲直りするまで寝室から出ないという約束をしていて、本当に仲直りするまで何日でも双方とも部屋から出ない!そのためデビッドは何日も仕事を休むことになるのです。食事はメイドさんたちが運んできてくれるし、何日も部屋にこもり続けても大して困らないところが庶民には羨ましい!ただ、周りの人は困りますね。書類にデビッドのサインを貰いに来た事務所の青年や、パートナーのジェフなどもかなり迷惑かけられ組。そんなことは意にも介せず自分たちの約束を貫く、ある意味馬鹿正直なある意味人の迷惑を省みない(苦笑)困った夫婦でありますね。そんな2人の結婚が法的には無効であることがわかってから大変な騒ぎが起こるのです。

今まで正式な夫婦として暮らしてきたのに、その結婚は無効だったと知らされたらたかが書類一枚のこととは言え、それはもうショックでしょう。それにこの時代、やっぱり弱いのは女性の方。アンの母親がこれが南部だったらどうなることか・・・と心配するように、女性には大きな汚点になってしまうことなのかもしれませんね、とても不本意ながら。だから、それも考えずに何かと焦らすデビッドはやっぱりちょっと意地悪ですよね。アンが怒って開き直るのもわかる。まあ、アンは相当の癇癪持ちとは思いますが。そこでアンはデビッドを家から追い出して、独身時代の姓に戻り男性とのお付き合いも積極的に始めてしまうわけです。それも相手はデビッドのパートーナーのジェフ。2人の仲はどんどん進展し、さすがのデビッドも嫉妬に駆られて・・・。

この映画はキャロル・ロンバードの美しさに尽きますね。ブロンドの知的で洗練された美女というまさしくヒッチコック好みのヒロインであるキャロル。でも彼女は結構コメディエンヌの素質に恵まれていて、こういうコメディで凄く力を発揮します。彼女はご存じクラーク・ゲーブル夫人。当時、最高のおしどり夫婦として有名でした。女優デビューした頃に事故で顔に傷を作ってしまい、その傷が映る側からは撮影させなかったという話を聞いたことも(左側の頬だったかなあ)。女優さんにとって顔は命ですから、それもわかりますね。今で言えばハリウッド最高のセレブカップルというところでしょうか。しかし、愛する夫と女優としての実力にも作品にも恵まれて人生の絶頂期を送っていた彼女に運命は過酷でした。1942年、政府の国債公募キャンペーンでインディアナポリスを訪れた帰りにラスベガス付近で飛行機が山に激突するという悲惨な事故のために彼女は亡くなってしまったのでした。キャロルを深く深く愛していたゲーブルがそのあとしばらく悲嘆に暮れたのは有名な話。2人のエピソードは70年代に「面影」として映画化されました。まさしく美しい花の命は哀しいくらい短いのでした。それを知って映画を見てしまうと、コメディなのに心のどこかがチクリと痛んでしまうんですよね。

雪山のロッジのエピソードなどかなりわざとらしいけれど、ここまでするなら逆に開き直って笑えそう。橇で行き来する様子とか、止まってしまった観覧車(だったかな?)とか、色々な小道具が効いているところもさすがヒッチコックです。勿論一番効いているのはスキー板だけれどね(笑)。


☆当時のデパートって独身の女性しか働けなかったのね・・・。女性も大変でしたね。






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