おすすめ映画














































































白い恐怖



SPELLBOUND

1945年アメリカ映画 セルズニックプロ
白黒 111分

監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 イングリッド・バーグマン グレゴリー・ペック
レオ・G・キャロル マイケル・チェコフ
ウォーレス・フォード ロンダ・フレミング


精神病患者の施設グリーン荘に勤める女医のコンスタンス・ピーターソン博士は、美人だが冷徹ともいえるくらいクールで同僚の男性医師の誘いにも全く応じない仕事一筋の女性だった。ある日、グリーン荘に新しい院長としてエドワーズ博士がやって来ることになった。院長というにはまだ若くハンサムなエドワーズ博士と目が合った瞬間コンスタンスは自分が恋に落ちたことを知る。ハンサムで愛想の良いエドワーズ博士だったが何故か食事中に白いテーブルクロスを見てパニックに陥る。コンスタンスの精神分析医としての目は、彼が何かトラウマにとらわれていることを見抜くのだった。そんな時に、エドワーズ博士の秘書から電話がかかり、事件の幕が切って落とされる・・・。


当時旬を迎えつつあったイングリッド・バーグマンと、新進俳優だったグレゴリー・ペック。文字通り美男美女が共演したヒッチコックお得意の心理サスペンスです。心に潜む闇と精神分析という分野を扱ったその筋では先駆け的作品とも言えるのではないでしょうか。

とにかくバーグマンが美しいです。最初の、眼鏡をかけて一瞬の隙も見せないキリッとしたドクター姿もとても素敵。同僚医師に「恋を知らない人は精神分析医としても失格」とまで言われても動じない。そりゃあ余計なお世話ですよね。そんな彼女が、新しく赴任した若くてハンサムな院長を見た途端に電気ショックを感じたように一瞬固まってしまいます。そんなバーグマンの心をとろけさせてしまったグレゴリー・ペック氏。この頃は売り出し中の若手俳優という立場で、とにかく若くお顔はつやつやしているし、バーグマンでなくてもそのハンサムさにはとろけそうなのでした。

一目会ったその日から恋に落ちたコンスタンスとエドワーズ博士。夜にエドワーズ博士の部屋のドアの下から灯りが洩れているのを見て(これはラストへの伏線にもなっていますね)ときめくコンスタンスの女心など、些細なようでしっかり恋する者の心をつかんだ繊細な描写は憎いほど。やっぱりヒッチコックですね。でも、二人の幸福はその後大きな壁にぶつかります。思わぬ(というか当然と言えるのですが)事件に巻き込まれていく二人。逃避行。それでもエドワーズ博士をひたすら信じて一緒に行動するコンスタンスは、もう完全に恩師曰く「恋する女学生」状態でした。その一方で彼女は医師としての力も発揮します。エドワーズ博士の心に潜むトラウマを解明しようと必死になるのです。ホテルで、駅で、何かとパニックに陥ってしまうエドワーズ博士をいつも支え続けるコンスタンス。しっかり者で、でも「これからはもっと女性らしい服を着るわ。あなたのために」なんてことも言ってしまう可愛い人です。もうこれは一言で言って、イングリッドお姉さまが、年下のグレゴリーちゃんを支えて支えてその懐の深さを遺憾なく発揮する映画と言えるでしょう。

ヒッチコックビューティーズの代表的存在のバーグマン。眼鏡を外したら美人という例のテクニックもいつもの通り。美人は眼鏡をかけていても十分に美人だと思うんですけれどね。対するグレゴリー氏。イングリッド嬢に喰われるのはまあ仕方がないでしょう。でもハンサム(笑)。背の高いバーグマンと並んでしっかり絵になるのはやっぱり長身の彼ならではなのです。愛を告げるイングリッド嬢に「わかっている」なんて気障なセリフを言ってしまうところも似合わないけれど可愛い。

この映画では夢の分析も大きなテーマになっています。大きな目に代表される夢シーンの美術効果を担当しているのは、何とサルバドール・ダリ。なるほどダリならではのシュールな世界が展開されるところは見逃せません。それから、キスシーンで次から次へとドアが開いていくところも面白い。これも精神分析ならではの一種の伏線と言えるのではないでしょうか。音楽も凄く綺麗で、作曲はミクロス・ローザ。スタッフも一流揃いなのです。

脇役のグリーン荘の院長レオ・G・キャロルや、コンスタンスの恩師役のマイケル・チェコフのとぼけた演技も味わい深いですね。それに、若き日のロンダ・フレミングの神経を病んでそれでも尚男性を求める姿も凄い・・・。

目の保養になる美男美女の共演。当時としては斬新そのものの美術効果など見逃せないエッセンスが詰まった映画です。ヒッチコックのその後の作品への布石になったものも感じられます。


☆どうやって撮影したかまるわかりのスキーシーン。危ない表情のグレゴリーさんの真剣演技にちょっと苦笑する面もありますが、それでも許してしまう。何だかんだ言っても結構彼はヒッチコックに気に入られたんではないでしょうか?またまた「パラダイン夫人の恋」でも起用されていますから。






(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved