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8月のメモワール



THE WAR

1994年アメリカ映画 ユニバーサル
カラー 125分

監督 ジョン・アヴネット
出演 イライジャ・ウッド ケヴィン・コスナー
メア・ウィニンガム レキシー・ランドール


1970年6月、ミシシッピ州ジュリエット。スティーブン・シモンズは久しぶりにこの街に帰ってきた。ベトナム戦争で受けた心の傷を癒すためにリハビリ施設に入っていたのだ。迎えたのは愛する妻と子供達、リディアとステューだった。男の子のステューは父親を英雄のように見ていた。しかし、スティーブンはステューに話せない戦場での体験を抱えていた。リディアとステューは、仲間達と一緒にツリーハウス造りに懸命になっていた。弱い者いじめが大好きなリプニッキ兄弟達はそのツリーハウスを見つけ、自分たちのものにしようとする・・・。


天才子役と言われたイライジャ・ウッドが、ケヴィン・コスナーを押さえて最初にクレジットされる映画であります。脇に回ったケヴィン・コスナーは押さえた演技で逆にそれが良いムードを醸し出しています。

ベトナム戦争で心に傷を負ったスティーブンは、リプニッキ兄弟と対立する息子のステューに、「仲良くするように」説きます。争いは何も良いことはない、と。自ら戦場で血を流したスティーブンの言葉だけに大変な重みがあるのですが、ステューにはそれはまだわかりません。いじめられてばかりのリプニッキ兄弟たちと決定的な対立をしたときに、初めて争いはどんどんエスカレートして平常心を失っていく様を追体験するのです。

ここに出てくる子供達は、はっきり言って綺麗な格好には縁がなさそう。リプニッキ兄弟たちときたらそれは悲惨なものです。そんな彼らのすさんだ心に、スティーブンは微かな手を差し伸べ、「彼らは何ももらったことがないんだよ」と諭します。また、リディアの親友は黒人。恐らくはまだまだ人種差別が残るであろう南部で、先生さえにも差別される親友をかばうリディアは、物事の外面ではなく内面を見ることの出来る目を持った大人びた子供でもあります。

心は優しいけれど、国の戦争で戦ったスティーブンはそのために負った傷のために就職もままならない生活です。そんな夫を静かに支える妻役のメア・ウィニンガムの静かな演技がまた心に滲みます。なかなか、こんな出来た妻にはなれないものでしょう。そんな妻のために、家を手に入れたいと望むスティーブン。深くを語らないけれど、心が通じ合ったこの夫婦の姿には共に長い時を過ごした夫婦ならではの静かな愛が感じられます。

娘のリディアがメモワールを綴ります。「果たして戦うだけの価値があるものがあるのか?戦争とは人間が使い方を知らない巨大な機械です。扱い方を誤ると、戦っている目的をも破壊して、今持っている大切な物も失うのです」。何とも心に染みいる言葉ではありませんか。派手なことが起きるわけでもなく、淡々と日々の生活を綴る映画なのですが、見終わったあとにジーンと来る映画であることは間違いないでしょう。


☆ツリーハウスって確かにちょっと憧れがありますね。木の上の秘密基地。虫嫌いの私にはダメか。






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