おすすめ映画






















































































ティファニーで朝食を



BREAKFAST AT TIFFANY'S


1961年アメリカ映画 パラマウント
カラー  114分

監督 ブレイク・エドワーズ
出演 オードリー・ヘプバーン ジョージ・ペパード
パトリシア・ニール ミッキー・ルーニー
バディ・イブセン マーティン・バルサム


ニューヨークの片隅のアパートに住むホリー・ゴライトリーは、籠に入れられるのを嫌う鳥のように自由と人生を愉しむ奔放だけれどチャーミングな女性。同じアパートに越してきた売れない作家のポールと意気投合し、彼の中に弟の面影を見いだそうとする。ポールはお金持ちのマダムにパトロンになってもらって暮らす身。一方のホリーもまたお金持ちの紳士から化粧室に行くたびにお金をもらっているという不可思議な生活。そんな2人がやがて惹かれあい、反発しあい・・・。


語るまでもない有名なラブストーリーですね。オードリー・ヘプバーンのあの髪をアップにしてティアラを飾った黒いドレスのスティールが有名すぎるくらい有名。この映画はヘプバーンの魅力なしでは語れないでしょう。ホリー・ゴライトリーという女性は水面に浮かぶ浮き草のような生活。一歩間違えばふしだらと言われかねない女性ではあるのですが、それがオードリーの魅力で中和されてかえってミステリアスになっています。それにとにかくいつものことですが、ドレスが素敵ですね。有名な黒いドレス。トレンチコートの使い方。大きなアイマスクに至るまで、彼女がすればとにかくおしゃれ。ながーいパイプを吹かすさまも、特にパーティでの隣のご婦人の帽子に被害を及ぼしている様が「危ない」とわかりつつ笑えてしまう。

一方のポールは売れない作家。何年も前に将来有望と言われたのにそのままで終わってしまっている哀しさよ。この時のジョージ・ペパードは最高です。ハンサムそのもの。遙か昔、この映画を見て彼にノックダウンされました。作家ってところが良いし、作家ゆえのちょっと斜に構えた見方もわかるし、そのくせお金持ちのマダムに可愛がられて生活を成り立たせている、つまりは・・・。まあ、そんなちょっと情けない立場もあってか何故かホリーと意気投合してしまうのです。水面に浮かぶ浮き草のように見えるホリーの中に自分の姿を重ね合わせてしまうのかもね。でも、ホリーの過去を知り、弟とのことを知り、段々ホリーの内面が見えてくるうちに彼の中で何かが変わってくるのです。

オードリーが窓辺にもたれて歌う「ムーン・リバー」。映画に名曲ありきとは申しますが、この映画にこの曲はもうあまりにピッタリすぎて涙さえ出てきてしまうのです。ヘンリー・マンシーニとブレイク・エドワーズはコンビとして語られますが、私の中ではこのコンビの中でNo.1にランクされる曲であります。

良く語られる勘違いかもしれませんが(本当?)、「ティファニー」のことを子供の頃レストランだと思っておりました。朝食を食べるわけですから。ところがこの映画を見て大違いだと知ったものでした。勿論「ティファニー」は有名な宝石店。勢を尽くした宝石が並ぶショーウィンドーを眺めながらパンをかじるホリーはその瞬間を至福の時と思っているわけです。しかしながら、ホリーとポールが「初めてのことばかりをする日」に足を踏み入れたティファニーでの店員の粋な応対はとっても素敵。ニコリともしないお澄まし表情の中で特例のサービスをしてくれるその懐の深さが上流の店の証拠?でも、この映画のあとにきっと同じことを頼むお客さんが殺到したのではなかったでしょうか。

ポールのパトロンのマダム役のパトリシア・ニール。まあ何とも大した姉御ぶりです。若い坊やをあしらう貫録と存在感。若い女の登場にも顔色一つ変えないその冷静さに有閑マダムの底力(?)を見る思いです。そして、アパートの住人の変な日本人役ミッキー・ルーニー。これは日本人から見るとちょっと不快にさえ思ってしまう欧米人から見たステレオタイプの日本人ですよね。まあ、私はもう慣れたけれど。寝ている上に提灯をつっていたり、何故か部屋に障子いや襖だっけ?があったり、とまあかなり変わった部屋で暮らしている口やかましい日本人。でも、ホリーのように騒々しい住人がいたら文句ばかり言いたくなるのはわかるわかる。

この映画のラストシーンは昔見ては泣きました。雨の中の名シーンの一つですよね。猫の名前はキャット。降り続く雨。そこにかぶさる「ムーン・リバー」。そして、オードリーとペパードさんの2人が着るトレンチコートがとてもとても素敵なのです。今思い出してもちょっと泣けてしまう。

原作はご存じトルーマン・カポーティで、かなり原作とは違いますし、カポーティ自身もそれが気に入らなかったみたいですね。彼はヒロインにモンローを望んでいたという噂も聞きます。でも私はこの映画がヘプバーンで良かったと思うし、この映画は映画としてとっても好き。こんなにおしゃれでちょっと哲学的で泣ける映画ってそんなにはありますまい。


☆ホリーとポールはしょっちゅう互いの部屋を窓から行き来しているんだけれど、大都会ニューヨークで施錠をしない窓なんて防犯上危なくない?この頃はまだそんなに治安が悪くなかったのかしら。

も一つ☆化粧室に行くたびに50ドル貰う謎がどうしてもとけなかった子供の頃。今も不思議に思う人のためにちょっと解説。あちらの化粧室にはタオルを渡してくれたりする専属の女性が化粧室に待機していることがあるようで勿論そういう方にはチップが必要。実際のところ、化粧室もただでは使えないわけです。一回50ドルは勿論ホリー自身へのチップが大半を占めるってことですけれど。






(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved