西部開拓史
HOW THE WEST WAS WON
1962年アメリカ映画 MGM
カラー 165分
監督 ヘンリー・ハサウェイ ジョン・フォード
ジョージ・マーシャル
出演 (アルファベット順) キャロル・ベイカー
リー・J・コッブ ヘンリー・フォンダ
キャロリン・ジョーンズ カール・マルデン
グレゴリー・ペック ジョージ・ペパード
ロバート・プレストン デビー・レイノルズ
ジェームズ・スチュアート イーライ・ウォラック
ジョン・ウェイン リチャード・ウィドマーク
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1830年代、東部からプレスコット一家が遙かなる西部を目指して移住の旅に出る。プレスコット一家を軸に彼らに関わった人々の50年以上に渡る西部開拓の歴史をドラマティックに壮大に超豪華キャストで描く大作。
3人の監督により、西部開拓の歴史を5話のオムニバスで綴ります。とにかく、監督も超一流ならキャストも超一流。次々に出てくるスターたちを見ているだけで楽しくなります。
第一話では、西部に渡るプレスコット一家の旅が描かれます。エリー運河を船で渡り、川を筏で下る危険な日々。西部開拓といえば幌馬車隊が目に浮かびますが、まず東部から出るには川が原点であったということです。長女イブは、猟師のライナス・ローリングスと恋に落ちます。ライナスはビーバーの皮をネイティブインディアンと取り引きする根っからのマウンテンマン。最初の西部はこのマウンテンマンたちに代表されるように、インディアンたちと仲良く仲間意識さえ持って折り合っていたのでした。イブは困難の中でも負けない強い女性。キャロル・ベイカーが演じます。まさしく西部を切り開く原点となった開拓女性を体現しています。ライナス役はジェームズ・スチュアート。恋に不器用で自然を友にしてきた猟師です。
第二話では、イブの妹リリスが歌手となって華やかな舞台に立ちます。リリス役はデビー・レイノルズ。歌うのも踊るのも勿論お手のものです。いつもどこかで歌が流れている感がこの映画にあるのは、デビーの存在ゆえと言えるでしょうか。そのリリスは、カリフォルニアのゴールドラッシュで伯父が一山当ててそれを遺産に残したと知り、幌馬車隊に合流して西部を目指すことになります。幌馬車隊の隊長ロバート・プレストンに思いを寄せられ、夫を見つけたいと言うアギーと一緒の馬車で険しい道中を行くリリス。でもリリスにも確かに開拓者魂が流れていました。ちょっと笑いを誘うアギー役のセルマ・リッターはいつ見てもうまい女優さんです。彼女が出てくるだけで私はワクワクします。この旅に同行することになった賭博師のクリーブはおよそ幌馬車隊に縁がなさそうな人物でしたが、インディアンに襲撃された時の思わぬ彼の活躍でクリーブへの恋心を自覚したリリス。クリーブも似た者同士。有名になってお金持ちになることを夢みるリリスやクリーブにとって西部はやはり希望の土地だったのでした。クリーブ役はグレゴリー・ペック様。夢を追う、粋だけれど人生全て賭け事というような賭博師役とは、彼の出演作の中でも異色と言えましょう。彼は東部の紳士も(クリーブは紳士というわけにもいかないでしょうが)、西部の男も両方似合うことは「大いなる西部」で実証済みですので、まあ良しとしましょう(何が良いのか悪いのか)。
第三話ではイブの息子ゼブが南北戦争に出征します。ここから第五話までは事実上、ゼブ役のジョージ・ペパードのエピソード。大義に燃えて戦争に行ったものの、戦争の現実は血塗られた地獄でした。そして、ゼブもまた遙かなる西部に夢を抱いて夢を追い続ける男。戦争終結後には、東部と西部を結ぶ鉄道の敷設が一大事業となります。セントラルパシフィック鉄道はサクラメントから東へと線路を敷き、ユニオンパシフィック鉄道は西へと線路を敷く。両者の敷く線路が合流点で結合した時、大陸横断鉄道の幕が切って落とされるのです。しかし、鉄道敷設も良いことばかりではありません。インディアンは土地を奪われ、どんどん流入してくる開拓民に悩まされます。白人とインディアンとの対立が顕著になった時、ライナスの友人であったマウンテンマンのジェスローが仲介の労を取ろうとします。根っからのマウンテンマンで自然と共に生きることを是としているジェスロー役のヘンリー・フォンダが絶品。ライナス役のジェームズ・スチュアートと友人だと語るシーンなんて今見るとちょっとホロリとします。この2人は実生活でもまだ売れない時代からずっと親友でしたものね。そして、やっぱり悪役の鉄道管理側のリチャード・ウィドマークも相変わらず光っているのでした。
デビー・レイノルズが歌う「Home in the meadow」は「グリーンスリーブス」をアレンジした歌。「草原に家を作ろう、行こう素晴らしい国へ」と歌うこの歌は全編を通じて西部への憧れと我が家への郷愁を歌いあげます。西部はこうして開拓されたという見本のような映画。西部は沢山の人の血と汗により勝ち取られた。でも・・・負けた者は?という疑問が残ってしまうのも事実。マウンテンマンの時代はあんなに自然やネイティブの人たちとうまく折り合っていたのに、どんなものでも強大になって権力が絡むと変わってしまうのだ、という悲しさをも感じる歴史でもあります。
とはいえ、急流を下る筏、列を成す幌馬車隊、襲撃と撃ち合い、バッファローの群れのスタンピード、列車での悪との対決など、さすがといえる西部劇のエッセンスを見事に散りばめた映画です。もし、西部劇には興味がないという方でも、アメリカの生きた歴史をこれほど豪華に描いた映画はそんなにはありません。是非ご一見を。ナレーターはスペンサー・トレーシー。これだけでも聞き甲斐ありってものです。
☆MGMが威信を賭けて作ったこの西部劇の集大成映画に、西部劇のキングたちの一人、ランドルフ・スコットとジョエル・マクリーが呼ばれなかったそうで、この2人のために特別に製作したのが「昼下がりの決闘」だそうです。
も一つ☆列車の車掌(?)役で「大草原の小さな家」のハンソンさんが出ています。良くもまあ、こんな超豪華キャスト映画に!ジョージ・ペパードと絡んでいます。
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