懐かしのテレビ館

















































































































スター・トレック(宇宙大作戦)


STAR TREK


1966年〜1969年 アメリカテレビドラマシリーズ カラー60分


「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違い無い。これは人類最初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った宇宙船USSエンタープライズ号の驚異に満ちた物語である」のオープニングの台詞で幕を開けるSFドラマの金字塔です。30年以上の歴史を経た今でも、「トレッキー」と呼ばれる熱狂的なファンを世界各地に持ち、世代を次々と移した続編シリーズを何本も持ち、映画化もされて今でも作り続けられているというSF界では知らない人はいないであろう横綱です。


カーク艦長をトップに据えたエンタープライズの行く先は未知の惑星ばかり。そこで遭遇した異星人との、闘いあり、ロマンスあり、友情あり。娯楽のエキスを詰め込んでいるけれど、SF考証もしっかりしていて、名だたるSF作家が脚本に参加しているという贅沢なシリーズです。


艦長のジェームズ・カークを演じたのはウィリアム・シャトナー。まだ若かった(笑)。熱血漢で肉体派という艦長らしくない艦長。どこかの惑星に上陸する時は、自ら先頭に立つ勇気ある、ある意味では命知らずの男。女性には滅法優しく、異星人であることなどおかまいなくアバンチュールを楽しむ人種ならぬ星差別が全くない宇宙愛に満ちた人です(笑)。異星の怪獣相手に1人で闘うことは日常茶飯事。何かあるとすぐスポックやドクター・マッコイに助言を求め、マッコイに「ジム、私は医者だ」といつも釘を刺されるどこか頼りないけれど憎めない愛すべき艦長です。その後もテレビを中心に活躍を続けています。


主役を喰った一番の人気者だったバルカン星人の副長ミスター・スポックを演じたのはレナード・ニモイ。とんがった耳がトレードマークで、バルカン星人の特質で感情に左右されない人。とにかく笑わない。眉毛を少しつり上げて「遺憾の意」を示すだけ。徹底した理論派で、地球人の心で感じる感覚が理解出来ずに、地球人とのギャップでいつも笑わせてくれますが勿論本人は大真面目です。あまりに印象的なキャラクター故にスポックの印象を吹っ切れなくて苦しんだ時期もあるようです。でも、それを逆手にとって「スタートレック」映画版の監督に乗り出したり、「私はスポック」という本を書いたり。


エンタープライズの医療主任であるドクター・マッコイを演じたのはディフォレスト・ケリー。スポックとは対照的にヒューマニストで心で反応する人で、それ故のスポックとの丁々発止はいつも見所でした。皮肉の塊のような人でもありますが、心根は優しい優秀なお医者さんです。年下の艦長カークの良き相談相手でもありますが、時々専門外の相談をさらりと交わす様がまた楽しい。ディフォレスト・ケリーは「OK牧場の決闘」「ワーロック」などの西部劇に数多く出演してきたベテランで、テレビドラマでもゲスト出演多数という多分レギュラーメンバーの中では一番のキャリアを誇っていた人でしょう。でも、脇役悪役中心で地道に来た人ですが、「スタートレック」のブレイクは予想外の出来事だったと思います。私がこのドラマ中で何と言っても一番好きなキャラクターは彼でした。惜しくも1999年に21世紀を見ることなく逝ってしまったのが悔やまれます。


その他、機関士のスコッティー、通信士のウフーラ、航海士のスールーにチェコフ、看護婦のクリスティン・チャペルなどがレギュラー。オープニングでも名前が出てこないし(名前が出るのは先に挙げたカークら3人だけ)、あとのメンバーはどうしてもまとめて取り扱われてしまうのがちょっと可哀想です。でも、彼らも相当に個性豊かな面々。60年代という時代に、アフリカ系、アジア系、女性というマイノリティが堂々とクルーとして乗り込んでいたエンタープライズは、まさしく時代の先駆けだったと思います。おまけに、チェコフは冷戦真っ只中の相手国ロシア人。ロシア訛の英語が可愛い(笑)。とかく、SF要素ばかりが話題にされますがこのクルーの顔ぶれに見られる社会性の意味はもっともっと正当に評価されていい点だと思います。

ドラマの中のお約束事も慣れれば楽しいものでした。惑星に降りる時は、大抵の場合カーク、スポック、マッコイを含んだ人選が為される点。艦長と副長、両方とも降りてしまって何かあった場合に誰が指揮を取るんだ〜と思うのですが、そこがメインレギュラーたる所以なのですね。ドクター・マッコイにしても、艦内で唯一艦長を罷免出来る(健康面に問題有りとなった場合)権限を持った医療部門のトップたる人がいつも一緒に行かなくても・・・と思うのですが。だから、危険にさらされながら活躍するのもこの3人だし、ロマンスに巡り会うのもこの3人(笑)。お留守番が圧倒的に多い他のメンバーは可哀想です。でも、もっと可哀想なのは必ず一緒に降りていく保安部員。カークたちのガードマンとして一緒に行動するのですが、一番に殺しの標的にされるのは彼らです。いやはや、実に可哀想。こんなことを続けているとそのうち保安部員がいなくなってしまうのではと思うのですが・・・。

番組の本放映時には人気が出なくて、再放送で人気爆発したという逸話もあります。このあたりも「宇宙戦艦ヤマト」を彷彿とさせてしまいます。勿論、「スター・トレック」の方が先ですが。「ヤマト」が好きだった子どもの頃、ヤマトの冒険に胸を躍らせたものですが、この「スター・トレック」の技術や社会性、SF的センスからは今思うと遠く及ばなかったですね。

番組終了から10年を経て、「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズがメガホンを取って「スタトレ」はスクリーンに蘇りました。レギュラーキャスト総出演。体格はふくよかさを増し、髪に白い物が混じる彼らの姿に胸を熱くしながらトレッキーはこの映画を迎えたのでしょうね。それから、オリジナルキャストでシリーズ6作。作れば必ずトレッキーが押し寄せ、興行収入No1に躍り出るという歴史的映画になりました。今は「ネクストジェネレーション」のキャストたちに受け継がれシリーズ化されています。

99年、ドクター・マッコイを演じたディフォレスト・ケリーが亡くなった時、アメリカでは大騒ぎでした。インターネットではYahoo!などで専用追悼掲示板が出来るし、新聞でも一面に扱う所もあったほど。そのタイトルが「Jim, He's dead」。一緒に知らない星に降りた保安部員が殺されてドクターが生死を確認したあとに必ず言う台詞でありました。いかにこのドラマが世界で愛されていたかを物語るのにふさわしい話です。もう2度とオリジナルメンバーの結集した映画が見られないのがもの凄く寂しいです。


☆その昔、アメリカでこのドラマが放映されない日はないという逸話を聞いたことがありました。その時は「ふーん」と思っただけでしたが、実際にアメリカに行った時ホテルでテレビをつけて驚きました。いきなり映ったのは「スター・トレック」。本当だったのですね。


も一つ☆製作者のジーン・ロッデンベリーは亡くなった時、宇宙葬を選んで誰よりも早く宇宙に飛び立ったんですよね。宇宙に対して壮大なロマンを抱いていた人なんでしょうね。クリスティン・チャペルを演じたメイジェル・バレットは私生活での夫人でした。


(ババちゃんのコメント)ボクはバリバリのSFファンです。このドラマも中学のころに再放送で熱心に観ていました。全部ビデオに録ってあります。

今から思うと、SFというには所々お粗末なところもあるのですが、愛すべきシリーズであることは確かですね。出てくる宇宙人は地球人型ばかりなのはおかしいと思うのですが、ちゃんと理由付けがされています。

エンタープライズ号はSF史上最も美しいフォルムの宇宙船といわれています。デザインの面でもこのドラマに影響を受けたものは多いはず。一流のSF作家がシナリオを提供したり、ノベライズやオリジナル小説を書いているのもすごいです。

時代を先取りしていたという点では、本当に驚異的なドラマです。というよりも、時代に影響を与えたといっても過言ではないでしょう。幼いころにこのドラマを観て宇宙にあこがれ、大人になってからNASAの職員になった人もいるくらいです。

有名なシリーズだからこそ、しっかり作っていってほしいと思うのも確か。時々SF的設定がおかしかったり、ドラマとして破綻していることもあるので、少し悲しくなります。まあ、ファンとしてはそういったところもほほえましく見えてしまうのでしょうが。

ボクのお薦めはやはり映画版の第一作です。いちばんSFとしてしっかりしていました。でも一般にはあまり受け入れられなかったようだし、トレッキーたちからもスタトレらしさが薄れているということで不評だったらしいです。「2001年宇宙の旅」を意識して高尚になりすぎているのですね。しかし、映画としてもSFとしてもよくできていました。



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