ワールドカップ特集




















































2002/4/7
ローラン・ブラン

Laurent Blanc
1965年11月19日生まれ フランス
192cm


98年のワールドカップと2000年の欧州選手権を制覇したフランス代表の文字通り精神的支柱として君臨したのがこの人であったことに異議を唱える人はまずいないでしょう。
ディフェンスラインの真ん中にこの人がいるだけで、メンバーはどれほどの安心感に抱かれたことでしょうか。
試合の始まる前にロロ(ブランの愛称)がゴールキーパーのバルテズのスキンヘッドにキスすることが恒例の儀式となりました。サッカーファンにはあまりにおなじみの光景です。そして、この儀式が行われたにも関わらず負けた試合ってあったかな?少なくとも、W杯とユーロ2000(欧州選手権)に於いてはなかったはずです。そして、ロロ率いるディフェンスライン、即ちロロとデサイー、テュラム、リザラズの不動の4人で組んだディフェンスラインは、4年近い年月を一つの負けもなく過ごしました。この不敗伝説はもう破られることはないでしょう。何故なら、ロロがユーロの後に代表を引退してしまいましたから・・・。


思えばロロの大ファンになったのは98年W杯の時のベスト16の対パラグアイ戦でした。とにかく守りの堅いパラグアイはがちがちにゴールを固めてPK戦狙いの試合運び。対するフランスは司令塔ジダンを欠くこともあり、予想外の苦戦を強いられました。シュートを打っても打っても鉄のキーパーのチラベルトに跳ね返される・・・。フランスのプティは「レンガの壁に向かってシュートを打っているようだ」と形容していました。イライラが頂点に達した延長戦、PK戦突入は免れないかと誰もが思っていたその時にディフェンスラインからスルスルと上がったブランがシュートを決めて試合終了。W杯で今のところ最初で最後のゴールデンゴールでした。この瞬間、私は彼に魅せられました。胃が痛くなる様な試合でした。それは選手も同じだったでしょう。そこに、一番遠いディフェンスラインから上がっての渾身のシュート。彼の「このままでは駄目だ」の思いがすべて伝わるシュートでした。


この試合を契機に、フランスは息を吹き返したのです。次の準々決勝のイタリア戦。やはり鉄壁の守りのイタリアを相手に苦戦しながらも素晴らしい試合内容で突入したPK戦。ロロはフランスの5人目のキッカーとして登場しました。5人目と言えば、やはり大黒柱の打つポジジョン。NHKのアナウンサー曰く「最も重い物を背負う人」です。ピーンと張りつめた空気の中で、彼はゴールの真ん中に鋭いシュートを決めて度肝を抜かせると共に安堵を与えてくれました。あの場面で、あのシュートが打てる精神的強さを見て、彼の前の試合のゴールデンゴールが決して紛れではないことを実感したのでした。
それ以来、ロロは私のヒーローです。


王者フランスと言えども、94年のW杯の予選で「パリの悲劇」と呼ばれるまさかの逆転負けを喫してW杯出場を逃したことがありました。ロロはその頃のメンバーでした。その後、代表引退を考えた彼を思いとどまらせたのが監督のエメ・ジャケでした。引退を思いとどまってくれて良かった。彼なしでは、フランスはW杯とユーロを勝ち抜けなかったでしょう。
ユーロ2000でも、W杯王者がユーロを制したことはないという伝説もあって、緒戦で固くなっていたフランスチームの中で最初にシュートを決めて一気にチームを波に乗らせたのが彼でした。
彼はディフェンスというポジションにも関わらず、代表のゴール数でも歴代ベスト10に入るほどゴール数が多いのでも有名です。的確な判断に基づくキック力があって、また192cmという長身を活かしたヘディングの強さも大きな武器でした。

ロロと相棒のデサイーがセンターバック(ディフェンスラインの中央)にいたら負ける気のしなかったフランス。
でも、今度のW杯・・・ロロの引退の穴が心配です。未だに王者フランスの弱点と言われるのがこのロロの穴なのです。


ロロはサッカー選手としてはおよそ若いとは言えない年ではありますが、請われてセリエAのインテルに移籍し、会長に最大の収穫と言わしめ、今はプレミアリーグの王者マンチェスターユナイテッドに所属しています。それもバリバリのレギュラー。10いくつも違う選手たちと肉体戦を繰り広げるのはさすがにキツイこととは思いますが、そこは彼の長年の経験と技で物を言わせます。

ロロのフランスでのもう一つのあだ名は「大統領」。その知的な風貌と、何とも言えない貫禄からついたことと思います。
彼が現役を退くのももう遠くはないでしょう。でも、きっと彼はその知性を活かして監督として帰ってきてくれることでしょう。

ローラン・ブラン・・・決して派手ではないプレーヤーですが、文字通りフランス代表を屋台骨として支え、フランスの優勝の立役者として長く人々の心に残ることは間違いないでしょう。
ゴールデンゴールを決めた後に、相手キーパーのチラベルト(あの強面のチラベルトを!)を優しく抱きしめていた彼の姿が彼の人柄を語っているようで私は大好きです。その人柄と知性と勿論技術、全てに於いて彼はチームメイトからも深く深く愛されました。


彼の黄金時代を見ることが出来て良かった・・・。でも、心の奥底で最後の最後に代表復帰を果たしてW杯でもう一度勇姿をみせてくれないだろうか、とあきらめきれずに思っている私です。



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