|
|
2002/6/18 |
レ・ブルーは再び輝く
|
優勝候補No.1と言われたフランスの早すぎた敗退は大変なショックだった。
ジダンが怪我でいなかったから、と言われるが、あれだけのタレントが揃っていてジダンがいないからといって、あんな風に負けた姿はやはり信じられない。ジダンを中心に作ってきたチームだから、他の選択が出来なかったのだろうか。
そんな中で、最終戦に怪我を押して出場したジダンの姿は痛々しくて涙が出た。本来ならとても出場出来るような状態ではなかったはずだ。いつものジダンの20%のプレーも出来ていなかった。ジダンはもっと神業かと思えるようなプレーを連発する選手なのに。それでも、彼は出場することを選択した。勿論チームのために。そして、彼の姿をワールドカップで見ることを楽しみにしていた世界中のファンのためでもあったと思う。彼の足の価値を考えるなら、レアル・マドリッドの関係者なら「絶対出るな!」と止めたことだろうに。ピッチに倒れ込んだジダンの姿がメディアでクローズアップされ続けたことがまた悲しかった。彼があんな風に倒れるところなど、ほとんど見たことがない。彼は滅多に倒れたりしない選手なのに!もし、怪我がなかったら・・・。もし・・・たら、は禁句だとわかってはいるものの、ジダンのあの姿を見ると言わずにはいられなくなる。
レ・ブルーは98年のワールドカップ、2000年の欧州選手権、そして昨年のコンフェデレーション杯と王者の名を欲しいままにしてきた。しかし、その中心メンバーであったレギュラー陣の年齢から来る衰えを今度ほど感じたことはなかった。強かったセンターバックのデサイー。圧倒的な体力と当たりで自陣を守り抜いた彼も衰えが目だった。ブランの後を継いだルブフも34歳。やはり衰えは隠せない。初戦でジダンの代わりを務めたジョルカエフもやはり衰えが目だって痛々しいほどだった。もともと、彼はジダンとは違うタイプだが彼なりに精一杯のプレーだっただろう。ジョルカエフは数年前まで凄い選手だった。ジダンの代わりを出来なかった選手として記憶されるとしたら、あまりに気の毒でならない。
私の大好きなプティでさえ、やはり4年前程の動きはなかった。韓国の暑さもあっただろうが。
それにどうしてここまで・・・と思うほど、ツキがなかった。ゴールポストやバーに当たったシュートの数はいかほどだったのだろう。あのうち、半分でも入っていたら何点にもなっていたのに・・・。勝利の女神はあくまでフランスに冷淡だった。
王者故の悩みもあった。どこのチームもフランス相手に真正面からぶつかってこない。引いて守って、カウンターを狙う戦法でしか戦ってもらえなかった。どこか1つでも、それも出来るなら初戦で、真正面からぶつかって来てくれるチームがあったなら・・・。フランスは引いて守るチームを相手に正攻法で戦いすぎた。あくまで美しいサッカーを目指しすぎた。美しくて華麗なサッカーは、勝つためのサッカーとは今や別物になってしまったのだ。だが、王者であるフランスが美しさをかなぐり捨ててただ「負けないサッカー」を展開したとしたら、やはり王者が地に落ちたと言われるのだろう。どちらに転んでも、不評は免れない。これは一度王者となった者の定めだ。
ブランやデシャンがいたなら・・・の思いも強い。初戦で負けたショックを結局引きずった形になってしまった彼らを精神的に支えることが出来たのはやはりこの2人だったのだ、と改めて2人のベテランの存在の大きさを感じることにもなってしまった。彼らあってのフランスだった。デシャンのキャプテンシー。ブランの圧倒的な存在感。チームが苦況に陥った時に攻め上がる思い切りの良さとPKの5人目を見事に務め続けた強い精神力。ブランがいたなら、不敗伝説を誇ったディフェンスラインもいつもの自信を持って試合に臨むことが出来て崩れることもなかっただろうか。
フランスは負けた。でも、彼らは決して弱かったわけではない。勝てなかったのは確かだが、それは彼らの衰退へつながっていくわけではない。残念ながら何人かのベテランは代表から退くことになるだろう。そして、新しい選手が入ってくる。フランスの育成システムで育った才能豊かな選手たち。しばらく、世代交代で難しい時を過ごすことになるかもしれない。でも、それがうまく行った時、レ・ブルーは再び輝きと共に戻ってくる。
そして、苦しみを超えて王者になって、また転落を味わったベテラン選手たち。あなた達があってこそのフランスだった。長い間の夢の数々をありがとう。あなた達が王者であったことは変えようがない。どうか下を向かないで。あなた達は圧倒的な強さで世界に君臨して世界にその華麗なサッカーを見せてくれた。その栄光は絶対に忘れない。
|
(C) 2012 Paonyan?. All rights reserved |
|