ワールドカップ特集
























2002/6/18
アルゼンチンよ泣かないで


死のF組と言われた中で圧倒的な強さをもって一番に勝ち抜くと思われたのがアルゼンチンだった。
初戦のナイジェリア戦の圧倒的な強さ、迫力。このチームに勝てるチームが果たしてあるだろうか、と真剣に悩んでしまった。まさかそのチームが予選で敗退することになるとは・・・。

南米予選を圧倒的な強さで勝ち抜いてきたアルゼンチン。タレントの豊富さは羨ましいほど。魔術師ベロンに操られた攻撃的なサッカーは見ていて本当に楽しい。そして、バティストゥータやクレスポなどの絶対的な力を持つフォワード。これだけのタレントを揃えて、決勝進出は約束されたようなものだった。誰もが、決勝はフランス対アルゼンチンと予想したものだ。組み分け上、両チームは途中でつぶし合いをすることになる予定だったが、結局その対戦は実現することなく終わった。

アルゼンチンもまた正攻法の戦いをしすぎたのだろう。ナイジェリアだけは真正面からぶつかってきた。その結果、すさまじいまでの迫力のある試合を見ることが出来た。しかし、他のチームはゴールを固める戦法に出た。狙うのはカウンターかセットプレー。因縁の戦いと言われたイングランド戦でイングランドが決めたPKの1点がその後のアルゼンチンの運命を決めてしまったのかもしれない。おまけにイングランドは第3戦をナイジェリアとの無理しない試合で引き分けに持ち込んで上位進出を決めた。アルゼンチンは結局自慢の攻撃的な楽しいサッカーをたった一度見せただけで終わってしまった。鍵のかかったゴールを何度も何度もこじ開けようと焦る彼らの姿は見ていて辛かった。しかし、鍵は開かなかった・・・。

全てが終わって泣き崩れるバティを見た時、私ももらい泣きせずにはいられなかった。バティはいつもワールドカップのスターで、得点王候補だった。33歳の彼にとって恐らく最後のワールドカップだったろうに。そして今度こそ彼のための大会になったかもしれないのに・・・。

アルゼンチンは今、大変な経済危機に陥り国民はあえいでいる。代表チームの活躍は、国民に夢と希望を与える筈だった。そのためにも彼らには勝たせてあげたかった・・・。しかし、サッカーの女神はあまりに無情だった。

バティとクレスポ。世界最高のストライカーであるこの2人は遂に一緒にピッチに立つことはなかった。もし2人が一緒にプレーしていたら結果は変わったであろうか。仲が悪いとさえ聞いたこの2人だが、最後にバティが泣き崩れるクレスポを抱きしめている光景を見て、またまた涙があふれてしまった。

アルゼンチンよ、泣かないで。あなた達は間違いなく王者の実力を持った類い希なるスターたちだった。サッカーの王道を行く正攻法のファンタジスティックなサッカーの持ち主だった。何がどう間違ってしまったのだろう。あなた達は勝つ為のサッカーをした。他のチームは負けないサッカーをした。それが運命を分けてしまった。

国民に優勝の喜びを与えられなかったけれど、例え束の間でも国民は夢を見ることが出来たはずだ。そして、その夢はまた続く。



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