おすすめ本









































































三銃士
LA VIE AVENTUREUSE DE D'ARTAGNAN
ダルタニャン物語より

アレクサンドル・デュマ
Alexandre Dumas

ブッキング その他


あまりに有名な、ダルタニアンと三銃士の物語です。ブッキングの訳ではダルタニャンとしてありますが、私はダルタニアンと呼び慣れて来たので今回この呼称を使わせて頂きます。

時はルイ13世統治下のフランス。国王に対して絶対的な権力を持つ、リシュリュー枢機官の様々な画策が交錯するパリに、ガスコンの田舎から腕に覚えのある若き青年剣士ダルタニアンがやってきます。彼は銃士隊長トレヴィル殿の率いる銃士隊への入隊を切望していました。銃士隊と言えば、国王に忠誠を誓う当時の花形隊。ところがダルタニアンは到着早々トラブルを起こし、3人の人間と時間を違えて決闘をすることになってしまいます。決闘場所に現れたアトス、ポルトス、アラミスは勇壮果敢な銃士隊の中でもひときわ目を引く人物たち。決闘のはずが、そこに現れたリシュリューの隊と戦ううちに、いつしかダルタニアンは3人と親しくなってしまいます。それからは、三銃士とダルタニアンはどこに行くのも、何をするのも一緒。一番年長のアトスは、何事にも動じない貫禄たっぷりだけれど女嫌い。大男のポルトスは、おしゃれで女性にもてる色男。アラミスは聖職者を志していながら、さる高貴な夫人との密かな恋に身をやつしている。そして、一番若いダルタニアンはとにかくけんかっ早くてちょっと思慮が浅いのではと思うほど勇猛果敢。
それぞれ個性は違っても、強い絆で結ばれた三銃士とダルタニアンは、国王と王妃のためにさまざまな陰謀を暴き、リシュリューと対峙しながらパリの町を闊歩します。


何度も何度も映画化された名作ですから、全編読破していなくてもご存じの方は多いと思います。
とにかくこのダルタニアンと三銃士、その荒っぽいこと。ちょっとした侮辱でも、すぐに決闘を申し込んでチャンチャンバラバラのオンパレード。銃士たるもの、お勤めを忘れて決闘にばかり打ち込んでいて良いんだろうか?と思いますが、これで良いらしいです。それから、彼らはそもそも貴族で、国王のために使えている銃士だというのに、いつもお金がなくて苦労しているんですね。誰も彼もお金がない。今日の食事にも事欠くありさま。それでどうするかというと、誰かご馳走してくれる人を見つけてそこに四人揃って押し掛けていく(笑)。銃士という立場は尊敬されているから、おごってくれる人には事欠かないのが幸いでしょうか。そして、何かの拍子にお金が入ってもすぐ使ってしまう。くだらない賭けで一遍にすってしまう!宵越しの金は持たないのがモットーなんでしょうか。こんな風ですから、いざ戦闘が始まる前に出陣準備をする段になると(この頃は自分で出陣準備をしていたようです)、お金を求めて右往左往。そんな風なのに、それぞれに従者がいて、主人だと威張っているのですから何ともはや・・・。

と、まあ、映画で描かれる三銃士に比べると、原作の方は経済的観念皆無の困った人たちであります。好きになるのは人妻ばかりだし、時にはその人妻が重要なパトロンだったりして、一体この頃の風紀はどうなっていたのか教えてもらいたいものです。
しかし、それでも彼らは何とも憎めない愛すべき人たちです。若さのせいかやたら血気盛んで、すぐ誰かに恋をするダルタニアン。若い者たちとは違って、まだしも落ち着きと貫禄を見せているリーダーとも言うべきアトスは、一番まともそうですが賭には弱い。ポルトスは人妻をうまく操ってはお金をもらっている始末だし、アラミスは聖職者になるのだと言いながら不倫から手が切れない。
でも彼らの険の腕は滅法強くて、一人の危機はみんなの危機とばかりに力を合わせる強烈な仲間意識はなかなかのものです。

そして、物語のかき回し役である、金髪の絶世の美女ミレディ。いつも陰謀の匂いのする彼女には、隠された大変な過去があります。捕まって幽閉されても、彼女には大きな武器がありました。勿論力でも剣でもなく、それは彼女に与えられた美貌そのもの。力自慢の三銃士と、美貌を武器にのし上がるミレディの対比が面白いです。
それに比べて、ダルタニアンが恋するコンスタンスは天使のような人として描かれます。人を疑うことを知らなかったのが、致命傷だったのかなあ。どちらにしても、コンスタンスも人妻なんですが、ダルタニアンさん・・・。

「ダルタニアン物語」は日本では全11巻で出版されている壮大な歴史絵巻です。その1、2巻を占めるのがこの有名な「三銃士」。かなり長い話なのですが、全く飽きさせないのはさすがにフランス3代文豪のアレクサンドル・デュマの手腕でしょう。
彼らの道徳心にはかなり疑問符がつくし、行動も時にハチャメチャでも、確かに彼らの個性は突出しています。
続きはいきなり20年後に飛んでしまうのですが、その後の彼らの活躍が楽しみです。


☆三銃士&ダルタニアンの従者の4人。ご主人と一緒に各地をさまよってかなり危ない目に遭ったり、危ない仕事を仰せつかったり、これは従者の受難物語とも言えそうです(笑)。それなのに、彼らはご主人様から離れないのね。でも、いつもお金がないこのご主人様たち、きちんとお給料を払ってくれているようには思えないのですが・・・。






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