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11人いる!


萩尾 望都


宇宙大学の入学試験の最終テストが行われることになった。1次、2次試験をパスしてきた者たちが10人ずつのグループに別れ、宇宙船に乗り込む。53日間この宇宙船にとどまることが彼らに課せられた課題で、1人でも落伍者が出た場合は全員が不合格になるのだった。宇宙船に集まって顔を合わせた受験生達。しかし、10人のメンバーのはずなのにそこには11人いた!誰が11人目なのか。みんなが互いを疑う中、彼らの合格に向けた宇宙航海が始まる・・・。

言わずと知れた萩尾望都の代表作です。宇宙大学の最終テスト。後のない状況の中で、予測できない事態に直面した受験生達の焦りがジワジワと広がる文句なく面白いSFです。

乗り込んだメンバーは、直感を持つ真面目なタダ。美形だけど喧嘩っ早いフロル。プライドの高いアリストカのマヤ王バセスカ。その隣の星から来たハンサムな4世(フォース)。落ち着きのあるガンガ。年齢から来る貫禄が見える石頭ことグレンなど。鼻持ちならない人物から、お騒がせ人間に大人の貫禄を見せる人までそれぞれ揃った魅力的なキャストです。

主人公のタダは真面目で繊細な男性。自分でも気づかない自分自身の過去に操られるように宇宙船の中をさまよい続けます。年は若いけれど、的確な判断と冷静さでリーダー的存在になります。しかし、宇宙船の中を熟知していることが逆にタダこそ、11人目なのではないかという疑惑を呼ぶことになります。

フロルはネタバレになりますが、実は両性体。女性になるのが嫌さに宇宙大学の入試に合格したら男性になれるという条件で、テストにやってきました。顔はきれいなのに、口が悪くて、何かとお騒がせな愛すべき人物です。

鼻持ちならない筆頭はマヤ王バセスカでしょう。が、私は彼が結構好き。やたらプライドばかり高くて、人にも命令口調で思いこみがやや激しいのは王様だから仕方がないか。でも彼も、このテストでもまれて人間的にも出来てきます。

それから4世(フォース)も王様と似たような立場で、気も合うので、王様と共に反タダ勢力になってしまいますが、やっぱり私は好き。ハンサムですから(笑)。

あとガンガ。何だかんだ言っても、若い者たちの争いをいつも冷静に見つめ、常に公平な立場で判断を下しているところに大人の貫禄と余裕を感じます。タダがリーダー格なら、ガンガはその懐刀。

11人目は誰か、スパイなのか、という疑惑だけでも気疲れする中、宇宙船は軌道を外れ太陽に近づいていきます。おまけに致死性の高い病気のウィルスが繁殖して、命の危険にさらさせ、彼らはスクランブルボタンを押して、テストをリタイアするかどうかの最後の選択を迫られます。

宇宙船という逃れようのない閉鎖空間の中で、見ず知らずの者たちが寄り集まって一つの目標を目指す難しさを、息も尽かせぬ展開の中で見せてくれます。この緊迫感で、結構SFも好きになりました。

小学館コミックス、文庫などで刊行


☆フロルの星は一夫多妻制。現在の男女の人口比1:5ぐらいが平和維持にはちょうど良いんですって。それだけ男は戦争好きってことですよね。

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