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はいからさんが通る



大和 和紀


子供の頃の私は、マーガレット派、のちには花とゆめ派で、少女フレンドにはあまり縁がなかったのですが、良くしたものでちゃんと友だちの中にはフレンド派の子がおりました。そんな彼女から貸してもらってはまったのが「はいからさんが通る」でした。

 マンガといえば、いくつかを除けば外国を舞台にしたものが当時は主流だったと思うし、私もマンガ=外国もののイメージが強かったのでした。そんな中で登場したこの「はいからさん」は日本、それも大正時代が舞台ということでかなり異色でございました。大正時代という設定が結局良かったのでしょうね。モボ、モガの時代、洋風の風が吹いてきてちょっと粋で洒落た時代。

 時は大正、ロマンの時勢、女学生の花村紅緒はある日突然親の決めた許婚と結婚するように申し渡されびっくり仰天。その相手、伊集院少尉はロシア人と日本人の混血で、おまけに紅緒の親友北小路環の好きな人。あれやこれやの大騒ぎを経て、紅緒が少尉への愛を自覚したところで少尉は任務で厳寒の地シベリアへ。さてさて二人の運命やいかに・・・といった内容です。

 当時の女の子たちは少尉派と後に出てくる紅緒が勤める出版社の編集長冬星さん派に別れていたものです。で、私はと言えば少尉の部下の黒い狼さん派でした。それから女性では紅緒ではなくて、親友の環。美人で才女でしっかり者の、華族のお嬢さんながら最先端を行く女性です。いちいち、主流からはずれないと気が済まない私でした(笑)。

 満州に渡った狼さんと環のその後が心配で、太平洋戦争前に帰ったのだろうか、残ったとしたら無事に引き揚げ出来たのだろうか、と大変気になったものです。少尉にしても根っからの軍人さん、それからまた戦争の嵐に巻き込まれていっただろうと考えると、このマンガはとりあえずハッピーエンドのように終了しても、その後の彼らの人生を考えるとちょっと気分が暗くなる異色の存在でした。

 ま、でもなんだかんだ言っても中身はギャグ満載の明るい話で、江戸川端散歩先生、怪傑ライオン丸など文壇の奇才も彩り豊かで「豆腐のような根性」だの、「おさきマッフラー」だのという流行語(ただ単に私の回りでの流行に過ぎないのですが)も生んでくれました。

 この時代、紅緒や環のように自立したキャリアウーマンとして生きた女性は実際はどれほどもいなかったのでしょうが、平塚らいてふ先生や青鞜などの運動が起こり、女性解放に目を向け始めた時代なのだということはしっかり認識できました。

 確か「ラブ・パック」が先で、その次はこれ。大和和紀のその後の時代物の出発点だったと言えるでしょう。アニメにもなりましたが(「ご機嫌いかが〜紅緒です」「はい、はい、はい、はいからさんが通る」ってテーマソングもありました)、こちらは話半ばで突然終わってしまったんですよね。ちょっと残念でした。

☆これを読んで百人一首の句を一つ覚えその後私の得意札に。「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の、割れても末にあわむとぞおもふ」

            講談社コミックス、文庫で刊行






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