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わたしが死んだ夜


曽祢 まさこ


ハミルトン家の双子の姉妹エバとクレアは一卵性で姿形がそっくり。小さい頃からいつも張り合って育ってきました。いつも間違われるのに嫌気がさして髪を切ったら、もう一方も同じことをしていた・・・というようにすることまで同じ。一人になりたいというもやもやを抱えながら、高校生になった二人は金髪が自慢のハミルトン姉妹として人気者になります。あるとき、クレアは公園でレインという他高校の生徒に会って恋に落ちます。しかし、エバも彼に会ったときから好意を持ち、レインを巡って二人は激しい火花を散らします。何とかライバルのエバを蹴落としたいと願うクレアは、亡くなったおじいさんの遺品の拳銃を持ち出し、エバにロシアンルーレットを迫ります。条件は負けた方がレインをあきらめること・・・。


姿形のそっくりな鏡のような自分がいつも一緒にいる。これはどんな気分なのでしょう。双子だから気持ちがツーカーというのは良く聞く話ですが、だからこそ張り合うというのもまたうなずけます。
いつも一緒はいや。いつもひとまとめはいや。○○姉妹ではなくて、自分一人だけを認めて欲しいという願いの切なさは痛いほど伝わってきます。でももしその願いが叶ったとき、しばらくは良いとしても長い時間の経過と共に感じるのは寂しさなのではないかという気がします。このハミルトン姉妹は別にして。

小学生の時から双子の友だちには縁がありました。中学生になってからは、複数の双子の友だちが出来るなど、何かと双子には縁が深い子供時代でした。一卵性双生児は本当に良く似ているんですよね。子供の頃は同じ服を着ていることが多いし、中学に至っては制服ですから全く見分けがつかない。付き合いが長くなっていくうちにわかるようになってくるのですが、それまでは何かとこちらも困ります。一人と友だちになるともう一人とも自然と友だちになることが多くて、そうなると間違えるのは失礼だなとこちらも気を使う。でもあちらは二人とも私を知っているから声をかけてくれる。ある朝、登校途中に一人だけの彼女と会い、どちらだかわからず、かといって聞くのも失礼と思って、当たり障りのない話題で押し通したことがありました(笑)。

そんなこともあって、このマンガに出てくる双子の姉妹には大変心を惹かれました。私が友だちになった双子の姉妹さんたちはみんなとても仲が良かったのですが、このハミルトン姉妹は違う。とにかく毎日が張り合いの連続なのです。容姿、成績、親の誉め言葉、そして何といってもボーイフレンド。これでは疲れてしまうのも当たり前。だからといって、ロシアンルーレットでケリをつけようなんていうのは、高校生としてはあまりにぶっとんでいるのですが、まあそれぐらい精神を張りつめてきたということでしょうか。

曽祢まさこの作品は可愛い絵とは裏腹に結構ホラーやサスペンスが多くて、当時としては結構異色なマンガ家さんの1人でした。彼女の妹の志摩ようこも同じ漫画家で、よく一緒に「なかよし」に描いていました。彼女たちは双子ではないと思うけれど、やっぱり同じ道を選んだ者同士、張り合う気持ちがあったのでしょうか。

みんなどうしているのかなあ・・・なんてノスタルジックな気持ちになる懐かしのマンガです。


☆目の前でロシアンルーレットなんて考えるだけで怖い・・・。当時はその言葉も知りませんでしたが、やっぱり鮮烈にロシアンルーレットだぞ〜!って頭にたたき込んでくれたのは映画「ディア・ハンター」ですね。