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ウィリアムの伝説


三原 順


これも「ムーン・ライティング」シリーズの一編です。途中に「お月様の贈り物」という短い一編があって、事故で重症を負ったDDにトマスが「是非ボクの血を彼に!」と申し出てくれたおかげで、ごくごく一部だけトマスの仲間になってしまったDDと、秘密を知ってしまった為にDDにかみつかれてまたまた仲間入りしてしまったドクターの3者による思い出会談みたいなものです。しかし、DDの天然はたきは可愛いです(爆笑)。

ウィリアムというのはDDとうーんと年の離れた従兄で、ひどい嵐の日に湖に墜落したセスナからただ1人無事に生還して生ける伝説となった男です。おまけに町の人たちから人望厚く、親切で頼りになって働き者で・・・と彼に関する噂は良いところだらけ。「ウィリアムはおれ達のような普通の人間とは違うんだ」という言葉を聞いて育った幼いDDは、ウィリアムを化け物と信じてしまうのでした。そして、ウィリアムの化け物度を測る実験まで行うのですが・・・。

一言で言えば、DDの子供時代の化け物列伝です(笑)。「Sons」における強烈なキャラクター、ウィリアムが町の人々の素晴らしい噂と、顔を見せないで体の一部とセリフだけで登場します。ついでに彼の家族模様もちらりと紹介されています。DDが大好きなウィリアムの奥さんマギーは、生気を失ったような生活をしているし、ウィリアムは当然死ぬはずの大事故にあっても死なない不死身の生き物。DDが出した結論は「ウィリアムは化け物で、人の命を吸い取っている!」。それから、もう1人の化け物、人の生き血を吸って生きているとDDが信じている100歳近いフォルナーの婆さん。確かに年輪をあまりに深く刻んだ顔は幼いDDにはアップで見ると怖いかも(笑)。

でも、DDが幼い時に見た化け物は全く違う物で、そこには悲しい話が秘められているのです。DDは生きていくために、世間と折り合いをつけて生きていくために、化け物を必要としていたのでした。そしてそれを知っているフォルナーの婆さんは、進んでDDの化け物と化してくれたのでした。
15歳までには・・・いや20歳までには・・・せめて25歳までには・・・化け物と縁を切り、化け物なんか必要としない大人になりたいと切望するDDを襲った運命の皮肉・・・にはちょっと同情しますが、やっぱりどこか微笑ましい(笑)。

「Sons」の前哨版のこの話、先に読むとちょっと「Sons」に入りやすくなるかも。何分あの話も入り組んでいますから。
しかし、ウィリアムは実際化け物の資格は大ありですよね。


☆DDの天然はたき、上手くお洋服で隠れるのでしょうか(笑)。


白泉社文庫「ムーン・ライティング」に収録





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