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白い恋人たち



13 JOURS EN FRANCE

1968年フランス映画
カラー  109分
 
監督 クロード・ルルーシュ


1968年2月に行われたグルノーブル冬季オリンピックの記録映画です。「男と女」などの名匠クロード・ルルーシュが監督し、フランシス・レイがテーマ音楽を作曲した何とも贅沢なオリンピック映画。「民族の祭典」などと並ぶオリンピック記録映画の最高峰ではないでしょうか。

オープニングでは、聖火を持って走る聖火ランナーの苦しそうな息づかいが聞こえてきそうな静寂の中であの「白い恋人たち」のメロディが流れてきます。映画に関心のない人でも、多分聞いたことがあるだろう有名なあの曲。何とも甘美なメロディと、走る人、人、人という一見アンバランスな組み合わせが妙に良いのです。

それではどこまでも美しい音楽に彩られた映像満載かというとそうではありません。雪面を滑降するコンマ0秒を争う闘いにはどんな音楽も必要ありません。ただただ、雪を削る鋭い音が響くのみ。そして結果負傷した選手の手当の間も一切音はなく、静かに全ては進んでいくのです。フィギュアスケートを映したアングルは、目が回りそうだけれど大変斬新。開会式も今みたいな派手なショーの数々がなく、ひたすら選手入場とそれを見守る観客のみにカメラが向けられているところが、今見ると逆に新鮮なのであります。ド・ゴール大統領健在のところもちょっと時代が感じられるのでした。

この大会の最大のスターは何と言ってもジャン・クロード・キリー。ハンサムなアルペンの王者は文句なしの強さを発揮して3冠に輝いたのでした。挿入歌にも歌われているように「キリーはスター」。スターと言えば、女性たちの黄色い歓声を集めていたのはジョニー・アリディでしょうか?「ジョニー!」と声をかけられていたので。他にも歌っていたのはシャルル・アズナブール?こういうあたりは、当時の世相に詳しい人が見たら、選手名も含めて懐かしモード満開になるんだろうな、とちょっと羨望も感じます。そんな華やぎの中で、新聞の一面を飾るベトナム戦争の文字が哀しさを運ぶのでした。

華やかな筈のオリンピックの舞台を、無用なドラマは省いてリアルに、でも美しい映像美の世界として描いた希有な作品です。とにかく、あの曲が素晴らしい!グルノーブルの13日間を過ごした人々は「いとしい日常へ戻っていく」けれど、オリンピックの感激と興奮は一生忘れないものです。ラストシーンの2人の男性が秀逸。






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