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アンネの日記



The Diary of Anne Frank


1959年アメリカ映画 20世紀フォックス
白黒  150分


監督 ジョージ・スティーヴンス
出演 ミリー・パーキンス ジョセフ・シルドクラウト
シェリー・ウィンタース エド・ウィン
リチャード・ベイマー ダイアン・ベイカー


ストーリーについてはほとんど説明の必要はないのではないでしょうか。第2次世界大戦中のアムステルダムで、ユダヤ人であるが故に隠れ家で身を潜めて暮らしたアンネと知り合いの一家の、緊迫感あふれる生活を、アンネが思春期ならではのユーモアと繊細さで綴ったベストセラーの映画化です。アンネと両親、姉のマルゴットは、知り合いのファン・ダーン一家と共に、クラーラ氏とミープの助けを経て、2人が働くオフィスの屋根裏部屋で生活し始めます。やがて、そこに歯医者のデュッセルも加わります。狭いところで、息を潜める暮らし。ナチスの足音に脅える日々。乏しくなる食料。同居人たちの間にもささいなことで諍いが生まれるようになります。


この映画は、アムステルダム市の協力を経て、アンネの隠れ家で撮影されたとありました。すべての撮影がそうだったのかどうかはわかりませんが、それだけでも見る価値あり。本棚の後ろの部屋。ここでアンネたちの数年は幕を開けます。

子供と大人の中間で、最も難しい年頃にいたアンネは、思春期ならではの鋭さでこの新しい生活を描写していきます。アンネにとって尊敬し敬愛する父。美人の姉のマルゴットにはどうしても引け目を感じずにはいられない。そして、母親とはどうしても心を開いて話すことが出来ない・・・。ファン・ダーン家の息子ペーターに寄せるほのかな思い。隠れ家で過ごした数年は、アンネに鋭い洞察力を与える機会となりますが、そのためにアンネの心は汚れたりはしないのです。「いつかここを出られたら・・・」という希望をいつも捨てないアンネに人々も時には救われる思いをすることもあります。

昼間は事務所の人々がいるために、水も流せず満足に動くことも出来ず、ただひたすらジッとしている毎日が続きます。夕方になって下の人が帰るとやっと自分たちの時間。しかし、それも束の間、階下に泥棒が入って、また全員が息を呑んで微動だにしないで成り行きを見守る(というより聞いているだけですが)ことになるのです。このシーンのサスペンス感は抜群。中途半端なサスペンス映画よりずっとずっとスリルがあって、一緒に息を呑んで見守ってしまいます。

原作を読んだ時にも、本当に感動したのですが、一家を助けるクラーラ氏とミープには頭が下がります。いくら知り合いだからといって、出来ることではないです。もし、ナチスにばれたら彼らも一貫の終わりで収容所行きは免れないことでしょう。でも、それを「これが正しいことだから」と言い切って、彼らを匿い食べ物を運んだ2人には本当に感激しました。

ミリー・パーキンス演じるアンネは、多分ちょっとアンネ役には年が上だったでしょうが、大きな瞳が印象的な細面の少女です。原作のアンネのイメージとは違うけれど、アンネの繊細さとお茶目さをうまく出していました。
お父さん役のジョセフ・シルドクラウトが押さえた演技で良かったですね。隠れ家の中で一番分別を持って対応出来るオットー・フランク。それに対して何かと騒ぎを起こすファン・ダーン夫妻役のルー・ジャコビとシェリー・ウィンタースはとても人間的。ちょっと困った人たちですが。
姉のマルゴット役のダイアン・ベイカーもその美しさが眼を惹きます。その後、今に至るまで映画出演を続けて長いキャリアを誇りますね。

「アンネの日記」を読んだ人なら、その後彼らがどうなったかはよくご存じでしょう。ここでは語りません。連合軍のパリ上陸、ヨーロッパ進軍・・・戦争はもうすぐ終結に向かわんとしていたのに・・・。

しばらく前の報道では、実は密告者がいたらしいと読みました。どれが真実なのでしょう。どれが真実だとしても、今更取り返しのつかないことだし、ユダヤ人だというだけでそんな辛酸をなめなければならなかった彼らの苦労を思うと胸が痛いです。それでも、彼らは自分たちはまだ幸せなのだ・・・と言って暮らしているところが反対に痛々しい。

アンネの「戦争を始めたのは大人の責任なのに!私たち若者には関係ないことなのに」という台詞も胸を突きます。確かにそう。私も若い頃はそう思っていました。でも・・・ユダヤ人の彼らが戦争を始めたわけではありません。ナチスの台頭を見過ごしてしまった罪は大人たちにあるでしょうが、それを危惧した人も多かったはず。でも、少数の危惧は強大な権力の前には通りません。アンネの言葉を聞きながら、それに同意するよりも「そんなことを言われても・・・」と感じてしまった自分に、原作を読んだ頃からの長い時の流れを感じてしまいました。


☆ペーターの飼っていた猫。可愛がっていた猫を置いてこられなかった気持ちはわかる・・・。でも、やっぱり可哀想だけれど、猫の存在は危険が大きすぎたよね。それでも、猫の存在によって癒された部分もどんなにか大きかっただろうから、納得の上かもしれないけれど。そうであってくれれば良いと思います。






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