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バベットの晩餐会



BABETTES GAESTEBUD


1987年デンマーク映画
カラー  102分

監督 ガブリエル・アクセル
出演 ステファーヌ・オードラン
ビルギッテ・フェダースピール
ボディル・キュア
ビビ・アンデショーン


19世紀後半、ユトランドの片田舎で厳格なプロテスタントの牧師である父に育てられた二人の姉妹マーチーネとフィリッパ。美人姉妹で通っていた二人は、若い頃ほのかなロマンスもあったが結局父と共に信仰の道に生きることを決意し年を重ねてきた。そこへ、パリコミューンで夫と息子を亡くしたフランス女性バベットが二人を頼って訪れる。バベットは2人の元に住み込み、家政婦として働き始める。静かに月日は流れ、バベットの元にある知らせが訪れる・・・。


静かな静かな海辺の田舎町。純朴で信仰深い住民たちと、彼らに慕われる牧師の娘である老姉妹。そこへ訪れたバベットは、2人の元で住み込みの家政婦として働き2人の生活に微かな潤いをもたらすようになります。全編がとても静かな物語です。特に大事件が起きるわけでもありません。若い頃の姉妹のほのかな恋にしても、本当にほのかでほのかで風にそよぐ小枝のようなささやかなものです。年月のうつろいさえもこの村では静かに起こるようです。それでも、この物語は素晴らしいのです。

原作は「愛と悲しみの果て」で知られるアイザック・ディネーセンです。デンマークの片田舎の様子がとても美しく表されています。そこに住む、ちょっと浮世離れした人々もまた微笑ましく愛情を持って描かれています。

でも、やはり最高の魅力を発するのはバベットでしょう。突然現れて老姉妹の生活に入り込んだ料理自慢の家政婦。少しずつ、ほんの少しずつですが、彼女が姉妹や村の人々、特に姉妹が食事を配っている病人や貧しい人々に幸せを与えていくようになるさまが淡々とした語り口の中にも、きらめきを持って描かれます。淡泊な感じさせ与えずにいられない村の人々の中で、やはりひときわ彼女の存在は眼をひかずにいられません。どこで何をしていた人なのか、過去は一切わからないままあくまでミステリアスに彼女は日常の生活を続けます。

何と言っても、クライマックスの晩餐会シーンの話をしないわけにはいきません。わけあって開くことになったこの晩餐会をバベットは自分に仕切らせてくれ、と頼みます。そして、パリから実に沢山の食材を買い込みます。それを見た姉妹は恐怖さえ感じ、当日招かれている村の人々に「何を食べさせられるかわからない」と涙ながらの謝罪までします。村の人々は覚悟を決めて、食べ物の味を味わったり食べ物の話をすることは一切やめて黙々と食事をすることを誓い合います。その約束の通り、晩餐の席に向かう彼らはまるで死地に赴くかのような表情。しかし、出てきた料理の数々は贅沢きわまりないメニューで、1人だけグルメに長けた将軍だけがその味に喜ぶのです・・・。

楽しい筈の晩餐を苦行の場に見立てている村の人々が実に面白いです。コメディではないのですが、彼らの姿に笑いが止まりません。
一方、料理を供するバベットは汗だくになりながら芸術品の数々を仕上げて行きます。

この料理の数々にはただただ溜息・・・。スープ、うずらのパイ、サラダさえも何と美しいのでしょう。デザートのケーキとケーキの周りを彩るフルーツコンポートらしきもの。新鮮なフルーツの数々。実のところ、原型をとどめているものが苦手な私には、多分実際眼にしたら食べられないものもあるのでは・・・と思いますが、それでも見ていて溜息が出ます。そして、味の決め手のソース。将軍がスプーンですくって食べているのを見て、みんなが真似し始めるのがいとおかし。一体どんな味がするのでしょうね。

普段質素なものしか食べ慣れない村の人々に、この料理がもたらした結果は見てのお楽しみ。
とにかくとても幸せを感じる映画であることは間違いありません。

料理を堂々と芸術と言い切るフランス人魂に乾杯したくなる映画です。そして自分に与えられた天性の芸術の才能を再び披露する機会を与えられたバベットにも乾杯!


☆ウミガメ・・・一体どこに置いておいたんでしょうか。あれも、見てしまうとスープが飲めそうもない・・・。






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