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荒野の決闘



MY DARLING CLEMENTINE


1946年アメリカ 20世紀フォックス 白黒 97分

監督 ジョン・フォード

出演 ヘンリー・フォンダ ビクター・マチュア リンダ・ダーネル
キャシー・ダウンズ ウォルター・ブレナン ウォード・ボンド


牛を運んでいた途中に足を止めたアリゾナのトゥームストーンで末弟が殺されてしまったために、その犯人を捜すべく、兄弟たちと共に町に乗り込んだワイアット・アープ。クラントン一家に疑いを抱いたワイアットは保安官となり町にとどまる。飲んだくれのドク・ホリディと知り合い意気投合するが、ドクを追って町にやってきた美しいクレメンタインにほのかな憧れをも抱くワイアット。一方アープ兄弟に敵対心を燃やすクラントン一家との争いは日に日に激しさを増し、遂にOK牧場での決闘を迎える・・・。

あまりに有名なアープ兄弟&ドク・ホリディとクラントン一家とのOK牧場での決闘を、西部劇の巨匠ジョン・フォードが描いた西部劇の傑作中の傑作です。

メインはラストの決闘シーンなのですが、この映画はただ決闘を描いたアクション西部劇とは全く違うんですね。この映画を語る時に必ず「詩情豊かな西部劇」という言葉が付きますが、実際それに勝る言葉を私も思いつきません。ひなびた西部の小さな町の情景が美しく、ちょっと暗い画面も白黒ならではの味わいでため息が出るような懐かしさ(何故?)さえ感じるのです。

ヘンリー・フォンダのワイアット・アープがまた格好良い!ワイアットを演じた役者は数々いますが、私はやっぱり彼が最高だと思います。
椅子にもたれながら長い足で柱をツンツン蹴っているシーンや(全く彼の長身と長い足が羨ましい!)、ダンスパーティで不器用に、でも礼儀正しくクレメンタインと踊るシーンなど、思わずジーンとくるような見所が満載。ちょっとはにかみやで無口な男を演じさせるとヘンリー・フォンダは最高です。

そして何といっても圧巻なのが、ラストシーン。「私はクレメンタインという名前が好きです」と最後にクレメンタインに言うワイアット。「貴女が好きです」とはっきり言えないシャイな面と、滅法強い銃の腕のアンバランスさが、何とも言えず男のロマンと可愛らしささえ感じます。

クレメンタイン役、キャシー・ダウンズは他の映画ではあまり見ませんが、可愛い人でさりとて派手ではなく、その引き加減が逆に映画に良い結果をもたらしているように思います。大女優や凄い美人では、クレメンタインがひどく目立ってしまうでしょうから。でも決してお人形さんみたいな女性ではなくて、看護婦さんでしっかり者でワイアットの好意を、大きい心で包んでいるような温かさが良いですね。

ジョン・フォード一家の名脇役、ウォード・ボンドも相変わらず良い味を出しています。ワイアットの弟役ですが、朴訥な兄がクレメンタインとダンスを踊っているところを見た驚きの顔などで、映画に笑いをもたらしてくれています。

ビクター・マチュアはドク・ホリディ役。人生をほとんど投げた賭博師役を熱演しています。ただ一つ難点は、あの屈強な体では肺病を病んでいるようには見えないということでしょうか。ただ、決闘シーンでは涙を誘います。

史実に忠実という意味では、最近映画化されているアープ物の方がずっと確かでしょう。OK牧場の決闘も実はほんの一瞬で終わったものと聞きます。クレメンタインのエピソードも架空の物。それでもやはりあまたあるOK牧場物の中でこの映画が最高峰だと思います。
やたら長い映画が多い中、この映画は面白さのエッセンスを短い時間に凝縮しています。
そして見終わった後に感じるのはアクション映画の爽快感ではなく、郷愁と詩情あふれる西部の香り。こんな美しい西部劇はこれ以前にもこれ以後にもありませんでした。


☆クレメンタインをクレメン大尉だと思いこんでいたのは誰でしょう?






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