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マイ・フェア・レディ



MY FAIR LADY


1964年アメリカ映画 ワーナーブラザーズ カラー  173分

監督 ジョージ・キューカー

出演 オードリー・ヘプバーン レックス・ハリソン
スタンリー・ハロウェイ ウィルフリッド・ハイド=ホワイト
グラディス・クーパー ジェレミー・ブレット


ロンドンの下町で花売り娘をしているイライザはコクニーなまり(ロンドンの下町で使われる英語)のひどい英語を話すおよそ洗練からはほど遠い娘だった。言語学者のヒギンズ教授は、彼女の英語を直し一人前のレディにしてみせると、友人のピッカリング大佐に宣言。イライザを家に引き取り、早速淑女教育を始める。彼女の発音を一から直し、彼女の服装をセンスあふれるものにし、そして勿論礼儀作法を教える毎日。でも成果はなかなか上がらず、ヒギンズもイライザもストレスがたまる一方。しかし長い努力の結果、イライザはやっと正しい発音をマスター出来るようになる。喜び踊るイライザとヒギンズとピッカリング。ヒギンズは早速お披露目にイライザをアスコット競馬場に連れて行き、レディとして紹介するが、レースに興奮したイライザがとんでもないことを口走って努力も水の泡。しかし、それでも訓練は続きやがてイライザはどこに出しても恥ずかしくないレディに成長する。一方、アスコット競馬場で、イライザに会った青年フレディは
すっかり彼女に一目惚れ。何とか彼女の気を惹こうとする。レディにはなったものの、今の自分はヒギンズの操り人形でしかないと感じたイライザは悩んで家を出る・・・。


ミュージカル映画の三大傑作と言われるうちの一本です。ちなみに後の二本は「サウンド・オブ・ミュージック」と「ウエスト・サイド物語」。
原作はバーナード・ショーの風刺戯曲「ピグマリオン」。ブロードウェイで大ヒットをとった作品の絢爛豪華な映画化です。何が豪華って、とにかくオープニングからきれいなこと。咲き乱れ回る花花。こんなきれいなオープニングってそうあるものではありません。

一転してのロンドン下町の風景は、豪華さとは縁がないけれど、活気に満ちた生きた人間を感じさせるところです。コクニーなまり丸出しでイライザが歌う「素敵じゃない?」は大好きな歌の一つです。「lovery」をラヴリーと発音しないでラヴァリーと発音してしまうのが、コクニーなまりなんですね。他にもヘンリー・ヒギンズ教授をこき下ろす歌では「ヘンリー・ヒギンズ」と言えないで、「エンリー・イギンズ」になってしまう。まあだから、ヒギンズ教授がクイーンズイングリッシュを教えようと躍起になるわけですが。

とうとう発音が出来たその日に喜びのあまり歌い踊る「スペインでは雨に主に広野に降る」は壮観です。この言葉は、練習として何度もイライザが唱えさせられた言葉。それがある時すっときれいな英語で出てきた。本人も見ていた人も大喜び。その喜びを引きずって、イライザは「寝てなんかいられないわ」とばかりにかの名曲「踊り明かそう」を歌うわけです。いつ聞いてもとてもきれいな曲です。

アスコット競馬場に行くときのイライザのドレスは、写真にもあるとおりの白黒のぴったりしていて裾だけマーメイドのように広がっているドレスと幅広の帽子なんですが、この衣装が何とも言えずゴージャスです。気が遠くなるほど存在する数々の映画の中で、これぐらいインパクトの強いドレスもそんなにはないのではないかと思います。これがまたオードリーのスリムな体にぴったりなんですね。オードリーだから着こなせるドレスとも言えるでしょう。
せっかくおしゃれして凱旋したアスコット競馬場で、「今日のお天気」の話を貴婦人に聞かれた時のイライザの返事が「スペインでは雨は主に広野に降ります」。挨拶に答えては、とてもゆっくり「How do you do?」。コメディ映画かと思うほどの爆笑シーンの連続に笑いが止まらないところです。

イライザは確実にレディの道を歩みますが、それはヒギンズ教授の引いたレールの上を歩いているだけ。新たな自我に目覚めたイライザは悩みます。またそこに押し掛けてくるのがイライザに一目惚れした純情な青年フレディ。毎日、ヒギンズ教授の家の側に立ちながらロマンティックな名曲「君住む街」を歌い続けます。とっても素敵なシーンとも言えますが、ただのストーカーか?という気も・・・。この純情青年フレディを演じるのはジェレミー・ブレットです。NHKドラマにお強い方にはおなじみの名前でしょう。ずっと放送していたドラマ「名探偵ホームズ」シリーズのホームズ君です。もうあの頃はちょっとお年を召していましたが、若い頃はこんなに純情に女性に歌を捧げていたんですね。

「運が良けりゃ」を歌い踊るイライザのお父さん役のスタンリー・ハロウェイも、ちっとも頼りにならないお父さんだけれど、存在感はばっちり。

レックス・ハリスンは、もうヒギンズ教授そのもので、彼以外のキャストというと誰も思いつきませんね。

街の人たちがいきなり静止してそれからおもむろに動き出すシーンなど演出も相当凝っています。

オードリーは最初自分で歌うことを希望したそうです。DVDには彼女の歌が2曲入っていて、確かに悪くはない出来です。でも大作ミュージカルのヒロインの歌声ということになるとやはり役不足か?という心配と、ドラマチックに歌い上げる「踊り明かそう」まで歌えるかとなるとこれは大疑問。結局彼女の歌は吹き替えられることになりました。吹き替えたのはマーニー・ニクソン。「王様と私」「ウエスト・サイド物語」と大作ミュージカルのヒロインの声を軒並み吹き替えてきたいわば陰のミュージカルの女王とも言える人です。ちなみに彼女が初めて姿を現したのは、「サウンド・オブ・ミュージック」の尼僧役、シスター・ソフィアでした。


前にも書いた通り、これはブロードウェイの大ヒットミュージカルです。そのとき主役を演じたのはレックス・ハリスンと新人だったジュリー・アンドリュース。映画化にあたって、レックス・ハリスンはすんなり役に決まったのですが、映画界では無名だったジュリーを主演に使うことにはかなりの否定的意見があり、結局大スターだったオードリー・ヘプバーンに主演を奪われる格好になってしまいました。同じ年、ジュリーはディズニーの「メリー・ポピンズ」に主演。その年のアカデミー賞で「歌わなかったヘプバーン」を抜いていきなり最優秀主演女優賞を取ってしまいました。そして翌年の「サウンド・オブ・ミュージック」で文句なくマネーメーキングスターNO1にのし上がったのですから、人生はわかりません。ジュリーファンとしては、イライザも素敵だろうけれど、やっぱり彼女はメリー・ポピンズやマリアのイメージでスクリーンに君臨してくれたのが結局は良かったのではないかと思っています。

と、まあ、何かといわくありの映画でありますが、傑作の名を欲しいままにする名画です。ミュージカルが好きな方は勿論、言語学に興味ある方、またただファッションを楽しみたい方、すべての方に楽しんで頂けることを保証します。


☆この歌を覚えてしまうと「ラヴリー」が「ラヴァリー」としか言えなくなるからご用心。






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