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恋人よ帰れ!わが胸に



THE FORTUNE COOKIE


1966年 アメリカ映画 UA 白黒  125分

監督 ビリー・ワイルダー

出演 ジャック・レモン ウォルター・マッソー
ロン・リッチ ジュディ・ウエスト クリフ・オズモンド


アメフトの中継中に人気選手ブーン・ブーン・ジャクソンの体当たりを受けて病院にかつぎ込まれたテレビカメラマンのハリー。軽い脳震とうだったが、義兄の弁護士ウィリーは、脊椎骨折を理由にチームや競技場から100万ドルの訴訟をせしめようと考える。最初は反対していたハリーも、別れた妻サンディを取り戻すために、計画に乗ることになる。ハリーの怪我を疑う保険会社側も退院したハリーのアパートに盗聴装置を仕掛け、向かいの部屋から盗撮するために私立探偵を送り込む。ハリーはボロが出ないように車椅子生活を続ける。そこへ別れた妻が帰ってきて気分絶好調になるハリー。ただ、事故の責任を感じてハリーの世話を焼きにアパートに通ってくるブーン・ブーン・ジャクソンの姿を見ると良心の呵責を禁じ得ない。一方ウィリーは保険会社相手に、示談交渉に入る。

監督ビリー・ワイルダー、出演がジャック・レモンとウォルター・マッソーの名コンビとなれば面白くないはずがないというもの。
この映画もとびきり面白く出来ています。ハリーとウィリーは要するに詐欺を働いているわけなんだけれど、思わず頑張れ!と声をかけたくなるような陽気な展開。

別れた妻への未練と良心の呵責に悩むハリーを演じるジャック・レモンも相変わらずのうまさで車椅子に座っていながらも時にはハイテンションに笑わせてくれます。
そして、受けて立つウォルター・マッソー。いわば悪徳弁護士なんですが、何故か憎めない。計算高くて抜かりがなくて、弱小弁護士が大手の保険会社を手玉に取るさまを嬉々として演じてくれます。次の相手の行動を見越してかかってくるはずの電話を待っていながらベルが数回鳴るまで待っている様や、示談交渉のテクニックは心憎いほど。この映画でウォルター・マッソーはアカデミー助演男優賞を受賞しましたが、それも当然と何度もうなずいてしまうほど、小気味良い演技を見せてくれます。

脇役も粒が揃っていて、怪我の責任を感じてハリーのアパートに通い詰めてリハビリや家事をかって出るブーン・ブーン・ジャクソン。「今日の夕食はハンガリー風のチキンのパプリカ煮」などと言って、キッチンで鶏の下ごしらえをしたり、ベッドメーキングをしたり、アメフトの花形選手というよりは良い奥さんみたい。ここまで献身的に世話してもらって、ハリーの心が痛まないはずはありません。

別れた妻のサンディ。ハリーを捨てて男と駆け落ちしたのに、それでもハリーは彼女のことが忘れられなくて帰ってくると知ってルンルンの喜びよう。ハリーの男の純情とは裏腹に、サンディの方は勿論ハリーに入る保険金が目当て。お金が入るとわかった途端に周りに群がる典型的なキャラクターを1人背負って奮闘しています。電話の向こうではダラダラの格好をしているのに、好感を持たれるようにいかにも良妻風の格好に変身してやってくるところも上手いですね。

ハリーの何かと言えば泣いてばかりいるお母さんも印象深いキャラクターでした。いきなりフロリダに保養に行かされるところが面白い。作戦遂行のために障害となりそうな人物はとりあえず排除しようというウィリーの作戦が効いています。演じる女優さんは「大草原の小さな家」の「愛の贈り物」や「竜巻」にゲスト出演していた人です。

映画を何章にも分けて、各章にサブタイトルをつけているのですが、その付け方が上手い!「中華料理」なんて何の関係もなさそうなタイトルなのに、その意味するところを知ったら爆笑してしまいます。

人情の機微が巧みに盛り込まれて嫌みのない正統派のコメディです。





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