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招かれざる客



GUESS WHO'S COMING TO DINNER

1967年アメリカ映画コロンビア
カラー  108分

監督 スタンリー・クレイマー
出演 スペンサー・トレイシー キャサリン・ヘプバーン
シドニー・ポワティエ キャサリン・ホートン
セシル・ケラウェイ ビア・リチャーズ ロイ・グレン


サンフランシスコで大手新聞社を経営するマット・ドレイトンと妻のクリスティーナのもとに一人娘のジョアンナが恋人を連れて帰ってくる。その男性ジョン・プレンティスは世界的にも高名な医師で非の打ちどころのない好人物。ジョアンナは彼に夢中で二人は結婚すると言う。ただ、ジョンは黒人だった・・・。ジャーナリストとして人種差別反対を新聞でも説いてきたマットだったが、愛娘のこの結婚には思いっきり困惑してしまう。そして、それはジョンの両親とて同じだった・・・。


ある日突然帰ってきた愛娘が結婚したいと見知らぬ男性を連れてきた。それだけでも普通の親なら驚くことでしょう。しかもその相手は黒人。異人種結婚も今なら全然珍しくもないものの、時は60年代。彼を紹介された両親はそれぞれ一度は固まってしまうのも無理ないかもしれません。相手の男性が人間的に問題ありなら反対のしようもあるものの、彼ジョンは高名な医師で人間的にも謙虚で誠実で言うことなしの100点満点。おまけに父親は人種差別に対して反対を表明するリベラルな新聞を経営する差別撤廃の最先端と言ってもいい男性。しかし、自分の娘が黒人と結婚するとなると彼のリベラル感は突然ぶっ飛んでしまうのです。父親のマットと妻のクリスティーナは自分たちの信条に基づいて娘のジョアンナを教育してきました。その結果、ジョアンナは人種の違いなど全く気にしない、偏見のかけらもない娘に成長しました。自分たちがそのように育てた結果なのよ、とマットに言うクリスティーナの言葉が秀逸。

一方では、ジョンも両親にジョアンナが白人だということを切り出せないでいます。しかし、ジョンの結婚を喜んだ両親は相手に会うためにわざわざサンフランシスコにやってきます。そして、ジョアンナを見た途端やはり凍り付いてしまうのでした。ドレイトン、プレンティス両家のメンバーに、ドレイトン家の長年の友人のライアン司教も加わってケンケンガクガクの論争が始まるのでした。その中で一人純粋に愛があるから結婚するのよ、と突っ走っているジョアンナは無邪気というか純情というか・・・。

リベラル派を自認する中流夫婦がいざ自分の娘の結婚話に向き合った時のオロオロ、ドタバタが笑えてでもホロリとして、そして色濃く残る偏見の現実から目を背けるわけにはいかないことを痛烈に語ってくれる社会派映画です。

スペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘプバーン。今まで数多くの映画で共演してきた名コンビの演技がとにかく秀逸です。知的で物わかりが良いようで実は頑固な役を演じるスペンサー・トレイシー。娘の幸せを応援してやりたいのに夫との間に挟まれて悩む妻役のキャサリン・ヘプバーン。両者共にアカデミー主演賞にノミネートされてキャサリンが2度目の受賞となりました。そして、これはスペンサー・トレイシーの遺作ともなりました。撮影終了後しばらくして倒れて帰らぬ人となったトレイシー。公私共に長い年月を共に過ごしたスペンサー&キャサリンの文字通り最後の映画になりました。妻への思いは今も変わらないことを訥々と語るトレイシーと涙ぐんだ目でそれを見つめるキャサリン。「死ぬまでその気持ちは変わらない」のトレイシーの言葉に二人の今までの年月とこれから迎える別れをどうしても重ね合わせてしまってつい涙が出てしまいます。

シドニー・ポワティエは、格好良い。当時絶頂期で知的な青年を好演しています。でも、最後に自分の感情をぶちまけるシーンでの迫力はこれまた感動的。娘のジョアンナを演じるキャサリン・ホートンは、キャサリン・ヘプバーンの姪にあたります。ポワティエの両親役を演じる二人も、頑固者の父親と慈愛にあふれた母親とキャラクターが生きていて感動します。特に母親がマットに「昔のときめきを年と共に忘れてしまって」と説く場面はちょっとだけ昔にときめいた人の心にもストレートに語りかけてくる言葉でしょう。

演技達者たちが持てる力の全てを出してぶつかりあう家庭劇。大変な見応えがあることは保証します。


☆ポワチエさんのお父さんが言うんだけれど、37歳のお前に23歳の女性は丁度良いって。随分年が離れている気もするんだけれど、そんなものか?もし男女の年が逆転していたら?





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