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ノックは無用



DON'T BOTHER TO KNOCK

1952年アメリカ映画 20世紀フォックス
 白黒 76分
 
監督 ロイ・ウォード・ベイカー
出演 リチャード・ウィドマーク マリリン・モンロー
 アン・バンクロフト
    イライシャ・クック・ジュニア ドナ・コーコラン
 ジム・バッカス


ホテルに宿泊する男、ジェドはホテルのバーで歌う恋人の歌手リンから別れ話を切り出されて動揺していた。一方、ホテルに泊まる客からベビーシッターを依頼されたエレベーターマンの姪ネルは、子供が眠ったホテルの部屋で、依頼主の夫人の持ち物を身につけて夢見心地でいた。実は、ネルは恋人を失い失意で心を病んでいたのだ。叔父はそれを知っていて、時々部屋に様子を見に来る。着飾ったネルをホテルの向かいの部屋から見たジェドは、電話をかけてネルの部屋へやってくる。ジェドが亡くなった恋人だと思いこんだネルは、ひたすらジェドとの時間を大切にしようとする。しかし、預かっている女の子バーニーが何かと邪魔をし・・・。


恋人を亡くした若い女性の狂気を描くスリラーです。最初は、おどおどとホテルにベビーシッターのアルバイトにやってきたネル。田舎娘で冴えない娘だったネルは、雇い先の夫人のドレスやアクセサリーで着飾り、やがてジェドと出会います。ジェドは、ホテルのバーで歌っている恋人のリンから別れ話を切り出されていて、むしゃくしゃしている最中。若く美しくどこか頼りなげなネルについついちょっかいを出したくなるのですが、彼の事を亡くなった恋人と思いこんだネルの狂気にやがて気付いていきます。マリリン・モンローと狂気、全然似合わないようで似合っているんですね。男性にしなだれかかるはかなさと危うさは、モンローの持ち味だし、それが一線を越えれば狂気と成りうる。男性を愛して愛して、常に共に居られる人を求める彼女の淋しさが良く現れている作品と言えるでしょう。

主演のリチャード・ウィドマークは、言うまでもなくアメリカ映画が誇る悪役スターの最高峰の一人。でも、勿論悪役ばかりではなくて結構正義感に溢れる役なんぞも演じていて、とにかく演技に味がある人です。今回は、モンローに振り回されてしまう役。まあ、モンローが狂気ならウィドマークは理詰めの悪が似合っている人ですから、受けの役に回る方が合ってますね。大体、悪役対決したらウィドマークに勝てる人はそうはいないでしょう。ウィドマークの恋人リン役にはアン・バンクロフトで、この作品がデビュー作。既に貫禄たっぷりです。

男を愛し過ぎた女の悲劇。同情出来るか、と聞かれると返事に窮してしまうけれど、その哀れさだけはひどく胸に詰まります。


☆エレベーターの犬のおばさん、いつもいつも迷惑な人だ。






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