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戦場にかける橋



THE BRIDGE ON THE RIVER KWAI


1957年 アメリカ コロムビア映画 カラー 155分

監督 デヴィッド・リーン

出演 ウィリアム・ホールデン アレック・ギネス
早川雪洲 ジャック・ホーキンス
ジェームズ・ドナルド


太平洋戦争下、ビルマ国境に近いタイにある連合軍捕虜収容所の所長斉藤大佐のもとに新しい命令が下される。タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道貫通のためにクワイ河に橋を架けよ、というものだった。しかも期限は短い。所長は捕虜全員を労役に課すことにしたが、将校に労役を課すのはジュネーブ協定違反とするニコルソン大佐の反発に遭う。営巣にぶちこまれても自説を曲げないニコルソン大佐の態度に、所長も対応に苦慮する。そんなやりとりを冷めた目で見つめるアメリカ人少佐のシアーズは、クワイ河に飛び込み1人脱走に成功する。所長とニコルソンの話し合いのもと妥協した両者は、橋の建設に向けて協力することになる。一方無事逃げおおせたシアーズだったが、クワイ河の橋の爆破を要請され、命からがら逃げ出した彼の地に再び戻ることになる。橋を造り上げようとする日本軍、爆破をもくろむ連合軍、両者の行き詰まる駆け引きが展開される。


この映画を初めて見たのは小学生の時でした。クワイ河、泰緬鉄道という言葉を覚え、他にひたすら記憶に残ったのはあのテーマ曲「クワイ河マーチ」でした。長い年月を経て見直してみると、こんなに面白い映画だったことにびっくりしました。もう面白すぎて、笑えて笑えてコメディのよう(笑)。でも、この名作のことをこんな風に言ったらお叱りを受けるかもしれませんね。

描かれているのは戦争の愚かさです。それから、どんな目に遭っても自説を曲げない人間の尊厳。

あくまで将校を働かせることに反対していたニコルソン大佐(アレック・ギネス)が、協議の末に協力することになってからの豹変ぶりが面白いのです。最初は、捕虜達に何かすることを与えようという考えも働いていたのですが、やがて橋そのものに熱中し出します。連合軍の技術者たちと会議を持ち、技術を持たない日本軍に橋の設計の悪さ、果ては建設地の土台の悪さまで指摘して、土台のしっかりしたところに移すことまで提案します。

連合軍の技術と意地を見せてやろうという気持ちはどんどんエスカレートして、橋の建設がニコルソン大佐の生き甲斐、そして意地にまでなっていくのです。ジュネーブ条約などどこかに行ってしまったかのように、期限に間に合わないからと連合軍の傷病兵にまで働かせる始末。ニコルソン大佐が必死になればなるほど、見ているこちらは笑えてしまうのです。

だって敵が兵や物資を輸送する為の橋でしょう?土台や設計が悪ければ、結局あっという間に崩壊することになって連合軍には有利なはずではありませんか。それに期限に間に合わない方が良いに決まっている。
連合軍の捕虜の任務は脱走に力を尽くして、相手の手を少しでも煩わせることと聞いたことがあります。間違っても相手の橋の建設に協力して、頑健で立派な橋を早く造ることではないはず(笑)。

おまけに出来上がった橋を感無量の思いで見て、愛しい物のようになで回しているニコルソン大佐・・・もう尋常じゃない(笑)。例えば彼が元々建築技師だったというならわかるのですが、部下にはそういう人がいるけれど、彼自身は違ったはずです。それでも自己陶酔の世界に入り込んでしまっているのですね。まあ、何もすることのない収容所で、生き甲斐を持ってしまった対象がそういう物だったという悲哀も感じるのですが。

一方余程現実的でアメリカ人らしいウィリアム・ホールデン扮するシアーズ少佐は、その橋の爆破を言いつかる。国は違えど、同じ連合軍同士で必死に橋を建設する者と爆破しようとする者の対比が大変面白いです。

原作はピエール・ブール。フランス人で実際に第2次大戦に参戦して捕虜経験があると聞きました。その地がこの捕虜収容所であるという噂も聞くのですが、事実はどうなのでしょう。この映画では脚本も担当して、オスカーも貰いました。ちなみにこのピエール・ブールは「猿の惑星」の作者でもあります。なるほど、この映画に散りばめられた強烈なスパイスも納得出来るというものです。

実際の日本軍による「死の行軍」「死の鉄路建設」はもっと悲惨で残虐であったと聞きます。この映画で描かれている日本人は、早川雪洲をはじめそんなに憎めない描き方ですものね。

こんな時代があったこと、いかに戦争が愚かか、それに翻弄される人間もどこまでも愚かになれるのだということをしみじみ感じさせてくれる名作です。


☆登場人物で一番まともな人は軍医さんのジェームズ・ドナルドだった。アレック・ギネスに比べればホールデンも余程まともかな。アレック・ギネスとデビッド・ニーブン、どちらがどちらか混同しないようにね!





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