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失はれた地平線



LOST HORIZON

1937年アメリカ映画
      白黒 132分(復元版)
 
監督 フランク・キャプラ
出演 ロナルド・コールマン ジェーン・ワイアット
 ジョン・ハワード トーマス・ミッチェル
   エドワード・エベレット・ホートン H.B.ワーナー
 マーゴ


1935年、大戦前夜の中国バスクルで英国の外交官ロバート・コンウェイは欧米人を飛行機に乗せ混乱の中から逃がしていた。最後の飛行機に乗ったのはロバートと弟のジョージ、古生物学者など5人だった。しかし、知らぬ間に入れ替わっていたパイロットによって彼らはどこともわからないところへ飛行を続けるところになる。着いた先はヒマラヤ山中の辺境だった。しかし思いに反してそこに広がるのは物質的にも自然にも恵まれた理想郷シャングリラだったのだ・・・。

ジェームズ・ヒルトンのベストセラーをアメリカの心を描くことで有名なフランク・キャプラが映画化しました。キャプラにしては珍しい秘境もの。場所は山に囲まれた豊かな土地。水も食料も豊富で、広い建物がそびえ瀟洒な家具が揃えられている素敵な場所。おまけにリーダーのチャンを筆頭に住民は温かく接してくれます。通信手段もない土地で、故国への思いを抱き続けつつも、彼らは美しい理想郷シャングリラでの生活にいつしか浸っていきます。このシャングリラは何と250歳になるという老僧のもとに築かれた土地。争いもなくお金もなく、満ち足りた土地です。警察もないというチャンの言葉に、ロバートは「犯罪者はどうするのですか」と聞きますが、チャンは「犯罪は足りないものがあるから起こるのです。ここでは全てが満ち足りていて、人の物を奪う必要も欲しがる必要もないのです」と答えます。なるほど・・・。

時が経つにつれて、不時着したメンバーはそれぞれの楽しみを見つけていきます。ロバートはソンドラという娘と知り合い、今までの忙しい外交生活から解放された安らぎの時を過ごします。古生物学者は自分の持てる知識を子供たちに学校で教えたいと申し出、配管工はシャングリラに水道を引く壮大な計画を立てます。新しい目的を見いだして、意気盛んに燃えるこの人たちはとても微笑ましいです。しかし、ただ一人若いジョージは、美しい娘マリアと知り合ったものの、帰郷への強い思いを捨て切れません。不老長寿の満ち足りたシャングリラの世界は、ある程度人生を知り疲れを感じている者にはある意味理想郷であり、心を休める土地でもあっても、血気盛んな若者にとっては相容れない土地であるのかもしれません。

老僧から後を託されたロバートは、弟ジョージが無理矢理にシャングリラから脱出しようとするのを何とか阻止しようとしますが・・・。

犯罪もない。何故なら物質的にも精神的にも満ち足りていて、何よりも物質の価値を決める尺度となるお金がないから。人々の心は皆穏やかで裏切りもなく礼節を知る社会です。まさに理想郷。アメリカの良心を追求し続けたフランク・キャプラが、別世界に見つけた理想郷というところでしょうか。
有名なお髭のコールマンをはじめ、トーマス・ミッチェルやエドワード・エベレット・ホートンなどが生き生きと楽しそうにシャングリラで暮らすさまは微笑ましく感じます。時が戦争直前で決死の脱出をしてきたという現実もまたこの逃避をバラ色に見せるのかもしれません。迫り来る戦火というこの時代背景は外せないキーポイントだと思います。

さて彼らの運命はどうなるのか・・・。シャングリラや吹雪など当時としては最新の特撮技術を使った作品でもあります。作品のところどころが紛失してしまっているために、後年スチール写真や音声を使って復元した部分も含まれています。古典作品を後生に残そうと奮闘したスタッフたちの奮闘には頭が下がります。


☆美しく満ち足りたシャングリラ、見ているうちに私も疲れた心を癒しに行きたくなりました。でも・・・やっぱりずっとそこで暮らすのは幸せなのかどうかちょっと考えてしまうのも事実。






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