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雨の朝巴里に死す



THE LAST TIME I SAW PARIS


1954年アメリカ映画 MGM
カラー  116分


監督 リチャード・ブルックス
出演 エリザベス・テイラー ヴァン・ジョンソン
ドナ・リード ウォルター・ピジョン
エヴァ・ガボール ジョージ・ドレンツ


第2次大戦中のパリ、連合軍の進軍によって解放され喜びに浮き立つパリの街頭で、アメリカの従軍記者チャールズ・ウィルスは、1人の美人にキスされる。彼女が忘れられないチャールズは程なく、彼女ヘレンとその家族と知り合うようになる。美人で奔放なヘレンをチャールズは愛するようになるが、堅実な性格のヘレンの姉マリオンもまたチャールズに心を寄せていた。しかし、ヘレンとチャールズが結婚。心を振り切るようにマリオンも他の男性との結婚に踏み切る。結婚後のヘレンは、遊び歩いてばかりでその奔放な性格は変わることがなかった。そんなヘレンと、チャールズの間に次第にほころびが出てくるのだった・・・。


「失われた世代」の代表F.スコット・フィッツジェラルドの「バビロン再訪」を映画化した作品です。初めて見たのは小学生の時で、「巴里」という漢字を覚えたのと同時に、「なんて素敵なタイトルなんだろう!」と感激したものです。あと、覚えていたのはしのつく雨の中に佇むリズの姿。あれから長い時を経て、再見の機会を得ました。

リズはこの頃が美しさの絶頂期。確かに美しくて、大抵の男性なら惹かれずにはいられないでしょうね。そのリズが遊び好きで、奔放で、計画性がない、でも憎めない美女というのはうってつけの役です。リズ扮するヘレンのモットーは「毎日が最後の日のように楽しみたいの」。それが出来れば苦労はないんですが・・・。まあ、そういう女性だから結婚したからといっておとなしく家で家事をするなんてとんでもなくて、遊び歩いて深夜帰りの連続となるわけです。で、普通なら旦那さんが切れる。それでも、そんな彼女への愛を断ち切れないヴァン・ジョンソンの男心の切なさ。ヘレンとて、チャールズを愛しているのは間違いないのだけれど、遊びはやめられない・・・。

ヘレンの姉マリオンは全く違った性格で、誠実な良妻型。ドナ・リードが演じていますが、リズとドナの正反対のキャラクターは誠に見るだけで性格が一目瞭然でわかりやすいです。マリオンを嫌いではないけれど、現に最初はマリオンとつき合おうとしたのに、ヘレンの策略ですっかり彼女にはまったチャールズ。全く男というのは・・・。

そもそも「失われた世代」は第1次大戦後に活躍した世代です。戦後のデカダンの中で、目的を今ひとつ見定められずに面白くおかしく浮遊していた人々。ヘレンも元々はその時代の産物だったのですが、それを第2次世界大戦に置き換えたところに、ちょっと無理があったかと思います。それゆえにメロドラマ度が高くなってしまった感があって・・・。

冒頭のパリ解放。何故だかいつ見ても胸が熱くなるシーンです。灯がともる凱旋門。人々が声高らかに歌う「ラ・マルセイエーズ」。ナチス占領下から解放されたその時の人々の気持ちはいかほどだったかと思います。

それこそ「今日を楽しく生きよう」派のマリオンとヘレンの父親をウォルター・ピジョンが演じています。40年代の誠実派2枚目。グリア・ガースンとコンビを組んでいくつも映画を撮ってましたね。さすがに年を取ってきたかな、と思わずにはいられません。

かと思えば若かりし頃のロジャー・ムーアが、ヘレンと遊び歩くテニス選手役で出演したり・・・新旧のスターの共演も楽しいです。

「雨の朝巴里に死す」・・・やっぱり今聞いても素敵な題名。素晴らしい邦題ベスト10に入れても良いかな、と思う私です。


☆ヘレンってあまり体が丈夫じゃないなら、そんなに遊び歩かなければ良いのに・・・と思ってしまう。






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