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さよなら子供たち



AU REVOIR LES ENFANTS


1987年フランス、西ドイツ合作
カラー  103分

監督 ルイ・マル
出演 ガスパール・マネス ラファエル・フェジト
フランシーヌ・ラセット
スタニスタス・カレ・ド・マルベール
フィリップ=モリエ・ジェヌー
フランソワ・ベルレアン


第2次大戦中、ナチスドイツ占領下のフランス。郊外にあるカトリックの寄宿学校では一見平和な毎日が流れていた。ジュリアン・カンタンは兄と共に、休み明けの学校に戻ってきた。しかし、町を闊歩するドイツ兵、授業中に鳴り響く空襲警報、食料難など確実に戦争の惨禍はここにも訪れていた。休み明けのある日、ジャン・ボネという転入生がやってくる。成績優秀であるがどこかうち解けない彼にジュリアンはライバル心を燃やす。そしてある日、ジャン・ボネがユダヤ人であることを偶然に知ってしまう。が、いつしか2人の間には穏やかな友情が芽生え始めていた。学校長の神父を始め、先生たちは彼がユダヤ人だと知った上でかくまっていたのだった・・・。


ルイ・マル監督の自伝的な作品です。話は淡々と進み、自然も含めてとても詩情豊かな映像です。戦争の最中ですが、一見悲惨さはあまり感じさせず、栄養不足による貧血も闇取引さえもどこかユーモアを交えて描いています。極めつけは空襲警報で防空壕に避難してまで続けられる授業でしょう。少年たちは、間違いなく戦争の中で暮らしているのに、あまりその実感をもって描かれていません。理由の一つとして、この寄宿学校は裕福な家の子が多く、家から送ってもらう食料や高級レストランでの食事など戦下の生活としてはまだまだ恵まれていることが挙げられるでしょう。

そこに転入してきたジャン・ボネは家族のことをあまり話そうとせず、どこかミステリアスな雰囲気があります。それでいて、勉強は良く出来る。同室のジュリアンは、ライバル意識を持ちジャン・ボネのことに探りを入れて彼がユダヤ人であることを知ってしまうのです。学校長は、ユダヤ人の彼をかくまっていたのです。他の神父たちも皆でナチの目から彼をかくまうことに必死になっていました。異教徒であるユダヤ人でありながら、神父さんたちがみんな揃って必死に彼をかくまう様には感動を隠せません。信じる神が何であろうと人間は平等であり、一部の者を迫害する行為は許せないという彼らの糾弾が聞こえてきそうです。

さて、話は私の好きな(笑)寄宿舎物ですが、話はあっさりしすぎるくらい淡々としていて、少年たちの強い友情の絆もそれほどは感じさせません。それでも、少しずつ少しずつジュリアンとジャン・ボネの間に心の交流が生まれる様子がよくわかっていきます。すべてが「流れる時」の中の一つのシーンとして展開していくのです。

このあっさりさは最後まで続きます。ゲシュタポが学校にやってきてユダヤ人捜しを始めるのですが、その様も大げさな描写もなくむしろ静かに描かれていきます。その静かさが、逆にラストシーンの感動を盛り上げています。ネタバレになるので、喉まで出かかっていても言えないのですが、ラストの子供たちの言葉、それに呼応する神父さんの言葉。ここでは、じわっとあふれる涙を抑え切れません。

抵抗することもなく迫害される側となってしまっているユダヤ人であることを淡々と受け入れているジャン・ボネの姿は、健気で辛いのですが、ジュリアンの方は彼がユダヤ人であることを知っても、かばうという意識などは全然ないようで彼が気に入ったから受け入れていくんだという姿に好感が持てました。

占領下のフランス。権威になびく人々もいる一方で、何も変わらないんだという姿勢を貫こうという人々もいる。ジュリアンと兄と面会に来た母親がレストランで食事をするシーンで、一人のユダヤの老紳士が親独派に「出ていけ!」と言われた時の周りの人々のそれぞれの反応がそれを端的に表していました。他国に占領されることの大変さ、複雑さをしみじみ感じさせる映画でもありました。

地味だけれど、とても心に残る映画です。自伝的映画というだけに、その後の彼らの運命も記されていて・・・。


☆ジュリアンのお兄さんのフランソワ、結構好みのタイプでした。学校長の神父さん、尊敬せずにはいられない人物です。






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