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スター・トレック



STAR TREK


1979年アメリカ映画
カラー  132分


監督 ロバート・ワイズ
出演 ウィリアム・シャトナー レナード・ニモイ
ディフォレスト・ケリー スティーブン・コリンズ
パーシス・カンバータ


ぱおー。J.J.エイブラムズの最新作ではありません。1979年の、劇場第一作です。さすがに今のCGバリバリの映画のような派手さはないけど、よくできたSF映画であることには間違いありません。

2年半の改装工事を終えて、エンタープライズ号は新しく生まれ変わっていた。おりしも正体不明の巨大雲状エイリアンが地球に迫りつつあった。エイリアンはクリンゴン艦隊を全滅させ、さらに地球所有の基地エプシロン9も破壊し、どんどん迫ってくる。位置的にみてそれを阻止できるのはエンタープライズしかない。

地上勤務になって提督に昇進していたカークは自ら乗り込むことを決意、だがそのために新任のデッカー艦長と軋轢が生じてしまう。紆余曲折を経ながら出発するエンタープライズ。強引に加速しようとしてカークはワームホールを生じさせてしまうが、デッカーが事態を収拾する。そこにバルカンで成長の儀式コリナールに失敗したスポックが乗り込んでくる。しかしみんなの歓迎にもまったく反応せず、スポックは直ちに科学主任としての仕事に取りかかる。

エンタープライズはついにエイリアンに接触し、攻撃されそうになったところをカークの機転で救われる。相手を刺激せずに雲の中に進入するエンタープライズ。そこで彼らは想像を絶するものを目撃するのであった・・・

アメリカのみならず全世界でトレッキーと呼ばれる熱狂的なファンを持つテレビドラマ「スター・トレック」が10年ぶりに映画化、これはその記念すべき第一作です。巨額の制作費を投じ、監督には名匠ロバート・ワイズ、特殊撮影担当にはダグラス・トランブル(「2001年宇宙の旅」)、ジョン・ダイクストラ(「スター・ウォーズ」、トランブルの弟子)を迎え、オリジナルシリーズのキャストをそのまま採用して、ファン待望の超大作ができあがったわけです。全世界のファンが熱狂しないはずはありません。

さて、蓋を開けてみるとどうだったか・・・絶賛する声もあるにはありましたが、ファンの間にも戸惑いの声が聞こえました。確かに超大作にはなっているのですが、「2001年宇宙の旅」を意識したと思われる高尚さ・難解さと、SFXの化け物になりすぎてオリジナルシリーズの精神を忘れているのではないかというところが批判されたのです。

その後この映画はシリーズ化され、第二作の「カーンの逆襲」はオリジナルシリーズの精神に立ち返ったとして歓迎されました。

この第一作への批判はいくつかあったのですが、もう一度簡単にまとめると次のようになるでしょう。

1.SFXに頼りすぎてオリジナルの精神を忘れている。

2.「2001年宇宙の旅」を意識しすぎて高尚・難解になりすぎている。

3.SFXそのものもどこに大金を投じたのかわからないほどのお粗末な出来である。

しかし、キャラクターの特徴、特にスポックとドクター・マッコイの迷コンビぶりは健在ですし、カークの沈着冷静さと機転をきかせて危機を回避するところもオリジナルの雰囲気がよく出ています。

SFXの出来については、技術の問題というよりも美術の問題のように思われます。雲状エイリアンの内部を延々と映し出しているのですが、どうも巨大さが伝わってこない。また、エンタープライズ内部の配色にも問題があって、平板さが目立つところがあります。もちろん、美術陣がアカデミー賞にノミネートされているところから見ても、全体的には素晴らしい仕上がりになっています。特にエンタープライズやスペースステーションなど、今見てもまったく古びていない出来です。それもそのはず、「ブレード・ランナー」のシド・ミードが参加しているのです。

難解さ・高尚さについては、趣味の問題としかいいようがありません。もともとオリジナルシリーズそのものが論理でストーリーを進めていくところがあって、この映画もそのスタイルを踏襲していることは間違いありません。ですから、もう好き嫌いでしか判断できないのです。

公開当時は批判もありましたが、ボク自身はこの映画が大好きです。シリーズ中最高傑作であるといっても過言ではありません。それはボクがトレッキーであると同時に、それ以上に作品そのものがSFになっているかどうかを問題にするからです。はっきり言って、第二作以降はSFの名を借りた活劇でしかなかったり、その時々の社会問題を反映したものでしかありません。

もちろん、キャラクターの特徴や、エンタープライズ号を数分にわたってあらゆる角度から延々と映し出す冒頭など、ファンでなければつまらない部分はあると思います。それでも、ストーリーとしてはよく練り上げられており(担当は「エイリアン」も担当したアラン・ディーン・フォスターです)、SFとしても観るべき所はとても多い作品です。もちろん、トレッキーでもSFファンでもないという人にはもうお勧めできませんが。それでも、この作品が提示している哲学的な問いかけには耳を傾けてみる価値はあると思います。

「サウンド・オブ・ミュージック」や「ウエスト・サイド物語」のロバート・ワイズがなぜこの作品を・・・という声も聞こえてきそうですが、実は彼、この作品が初めてのSFではありません。「地球の静止する日」、「アンドロメダ・・・」に続いて3作目なのであります。しかし、今資料を見ていてビックリしました。ロバート・ワイズは「市民ケーン」の編集も担当しているのですね。

スキン・ヘッドで頑張ったインド出身の美人女優パーシス・カンバータもきれいでした。残念ながら、彼女は1980年代後半から映画に出なくなり、1998年には亡くなっています。美人薄命。

そういえば、ドクター・マッコイ役のディフォレスト・ケリーも今は亡き人。この第一作ではあまり活躍しませんでしたが、第三作ではストーリーの根幹に関わる重要な役割を演じています。

ボクにとっては思い入れの多いこの作品、できるだけ多くの人に観てほしいと思っています。特に「ネクスト・ジェネレーション」以降のキャラクターしか知らない若い人には、オリジナルシリーズの魅力に触れてほしいと願ってやみません。



私にも一言言わせて下さいな。私も「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズがSF、それも「スター・トレック」!とびっくりした一人です。でも、彼にはそれなりの経歴があったのですね。「地球が静止した日」なんて見たら、なるほどとうなずいてしまいます。

ドクター・マッコイファンの私は、何と言っても髭ぼうぼうで嫌みタラタラでどこかの辺境からカークの陰謀(?)によって連れて来られたドクター・マッコイが登場するシーンが大好きです。そして相変わらずのスポックとの丁々発止。これがなくてはスタトレは始まりません。

若かりし頃のスティーブン・コリンズも結構好きなのでした。オリジナルメンバーに囲まれては何とも頼りないけれど。






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